なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか


なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか

読むべき本です。

現在世界で一番評価が高いオックスフォードの歴史学部に所属し、権威あるアメリカ経済史学会の会長にも就任しているロバート・アレン教授による、タイトルにあるテーマの入門書です。

それほど厚くもないし、字も大きいので、読むのに時間はかかりません。(ただし、内容を咀嚼するにはそれなりの時間がかかりますが(笑))

解説されているのは、イギリスの産業革命に西ヨーロッパ諸国が追いつけたのは何故か、そして一部の国(日本を含む東アジア諸国)を除いた世界のほとんどの国が工業化された先進国に追いつけないのは何故か、ということです。

西ヨーロッパ諸国がイギリスに追いつけたのは、「工業化の標準モデル」と定義される次の4つの条件を満たせたからです。

  1. 国内の関税を撤廃し、輸送の改善により大きな国内市場を創出する
  2. 対外関税を設定し、国内の「幼稚な産業」を保護する
  3. 通貨を安定させ事業に資金を供給する銀行を創設する
  4. 技術の開発と受け入れを加速させるために大衆教育を確立する

これらの条件が満たされ、経済が少しずつ成長してくると、平均賃金が上昇し始めます。そうすると労働力を削減して生産性を高める動機が生まれ、資本を投資した工業化が進むというわけです。

西ヨーロッパでは、これらの条件を満たすことができましたが、他の国では、これがうまくいきませんでした。

大衆教育が普及していない多くの国で工業化が進まないことはすぐ理解できます。 さらに、大衆教育が普及していても、植民地国家では、宗主国の関税政策で国内の産業インフラが破壊され、独立後も立ち直れない、などのことが起こります。

また、これらの条件がクリアされても、蓄積され始めた富が搾取され国民に還付されなければ、平均賃金が上がらず、機械化よりも労働集約の方が経済的に合理的になり、いつまで経っても工業化が進まないなどのことが起こります。

第2次大戦前に辛うじてこの状態から脱却し始めたのが、日本です。

日本では、明治維新後の廃藩置県や鉄道の整備などで、①はクリアされました。また、④も江戸時代の寺子屋教育の伝統もあり、明治の初等教育がすぐに広がりました。 ③については、明治維新前後の不平等条約の改正に手間取り、大正時代に入ってようやく実現できました。また、銀行はすぐにドイツに倣った制度を取り入れたのですが、その定着に50年かかりました。

ということで、第一次大戦後にようやく歯車が回り始めたわけですが、この時に外国から輸入した機械類は日本の身の丈に合わず(高額すぎて)、投資効率が合いませんでした。 せっかく経済が離陸しかけても、多くの国はここで挫折するのですが、日本のユニークな点は、ここで数多くの工夫(鉄製ではなく木製の織機を開発するなど)がされたことです。

このようにして発展し始めた日本ですが、戦後の高度成長は、このような自然発生的的なものではなく、政府による計画的なもので、この本ではこれを「ビッグプッシュ型工業化」と呼んでいます。ただし、このモデル化は十分ではないので、「工業化の標準モデル」のような理路整然とした説明は成されていません。

このような経済発展を理解する枠組みを知れば、これからの発展途上国が成功しそうかどうかを、自分なりに判断できるようになります。 それらの国に投資しようかどうか、その国の将来に託してそこで働こうかどうかなど、自分自身のキャリア設計にも生かせそうですので、読んでおいて損はないと思います。