感情を揺さぶり尊敬されるコンサルティング営業の方法


コンサルティング提案が売りにくい理由は、無形だからではなく感情に配慮しないから

コンサルタントなら誰でも、コンサルティングの提案は売りにくい、その理由はコンサルティングの成果が得体の知れない無形のものだからだ、と思っていますよね?でも、嘆いているだけで、どうすればその状態から脱却できるかを本気になって考えているでしょうか?

無形であろうと有形であろうと、クライアントがものを買うのはそれが「欲しい」からだ、つまり「感情」で買うのだ、ということを忘れていませんか?

コンサルタントには、理詰めでサービス提供は得意だが、セールスは苦手という人が多いようです。そのことが意味するのは、無形のもの売るのが難しいのではなくて、感情に配慮することの必要性がわかっていない、ということではないでしょうか?

クライアントの側に立ってみれば、このことは明らかです。無形で成果がよくわからないものを買うのは、次の二つの条件が満たされたときです。

  1. 本当に困っている(その問題を解かないと先に進めない、あるいは状況が悪くなる)
  2. 相手のコンサルタントを尊敬できる(問題を解決してくれそうだと信頼できる)

この二つの条件を見れば、クライアントが意思決定するのは「助かった!」と思えるときで、感情に基づいて判断するのだということがわるはずです。

今日は、この感情の動きにどう対処すべきかについて考えてみましょう。

コンサルティング営業に有効な感情のトリガー

現代は、様々な情報が満ち溢れ、人々が忙しく立ち働いている時代です。その中でモノやサービスが売れるためには、まず買い手に注目されなければなりません。

アテンション 「注目」で人を動かす7つの新戦略 では、忙しい現代では、この「注目」が希少資源になっていることに気づくべきだと言っています。有形であろうと無形であろうと何かを売ろうとするときは、クライアントの注目の獲得戦略から考えるべきだというのです。

この本の著者は、注目を獲得する方法を何ら考えることなく、「いいものさえ作れば客は来る」と無邪気に信じている人が多すぎるが、これは全く困った考え方だとしています。

そうではなく、人々に注目させ感情を動かすための心理的スイッチ(トリガー)を作動させる方法を学ぶべきだと主張しているのです。

この本から学ぶべきコンサルティング営業に有用なトリガーは、次の三つです。

  • フレーミング・トリガー:共通の関心事を確認し、自分の主張がしやすいように状況設定する(話題に対し、自然に興味を持たせる
  • 破壊トリガー: 相手の想定と異なる見解を示して驚きを与え、変革の必要性を感じさせる(相手を驚かせ、問題を解決するためには自分の考えを変える必要があるかもしれないと、当惑・心配させる
  • 報酬トリガー: 変革後の世界がより良いものであり、かつそれが実現可能であることを理解させる(今まで思いつかなかった解決策により、問題が解決することを理解させ、安心させる

それぞれ下線部のような効果を発揮させることで、クライアントの感情を揺さぶります。そうすることで、コンサルタントの提案から目を離せなくするのです。提案を受け入れ安心することころまで、脱落させずに誘導することが目的です。

これらのトリガーの詳細とその使い方を、調達改革を提案する事例で解説しましょう。

フレーミング・トリガー

フレーミングの目的は、コンサルタントが送りたいメッセージをクライアントが受け入れやすくするように、場の設定をすることです。クライアントの悩みを理解し共感していることを伝え、さらに問題を解決しようとするなら、今までと違う見方(リフレーム)に立った方が良いことを伝えます。

例えば、調達改革であれば、以下のような内容を伝えます。誰もが感じていることなので、自然にクライアントの同意が得られ問題意識の醸成ができます。

  • どの製造業でも、モジュール化の進展により、製品原価に占める部品原価の割合が高くなってきている。その割合は、時には70-80%にまでなり、利益を上げることが厳しくなっている。その意味で、調達部門の機能アップを図る改革は急務である
  • この改革のためには、設計と調達の協働が必須である。従来の設計の指示通り動く調達部門ではなく、設計に意見をしながら能動的に動く調達部門への変革が必須である

破壊トリガー

変革とは現状を変えること、つまり何かを破壊することです。

人が変革できない最大の理由は、人は自分が獲得した判断基準をなかなか変えようとしないことにあります。ですから、その考え方を変える(破壊する)ための工夫が必要です。

その目的に利用できるのが、期待違反理論です。

アリゾナ大学のジュディ・バーグーンによれば、人は、ある特定の状況では何が起こるかを無意識に予想しているそうです。その期待に反することが起こると、関心を向けざるを得なくなり、しかもその違反行為に即座にポジティブかネガティブな意味をあてがわなくてはならなくなるそうです。

ですから、期待を裏切りこちらの思う方向に誘導できれば、クライアントはその話題から離れられなくなるというわけです。

調達改革では、次のようなメッセージを伝えるべきです。

  • 調達改革後の設計と調達の協働では、(例外的に重要な部品を除いては)設計が指示した部品を調達がサプライヤーと交渉するのではなく、調達が「事前に」選択した部品を設計が使用する

これは、従来の製造業では天と地がひっくり返るような提案ですが、本当に調達改革の成果を上げようとすれば、それしか選択肢がないことは明らかなのです。変革に本気のクライアントは認めざるを得なくなり、「ではどうするの?」と問いかけてきます。

逆に、ここでネガティブな反応をするクライアントは、変革に本気にはなっていないので、提案を打ち切った方が良いことがわかります。

報酬トリガー

破壊トリガーで注目するものを変えさせた後は、それを追求するモチベーションを向上させる必要があります。それをするのが報酬トリガーです。

ここでも、人間の生物的性質を利用します。

人間は、目的を達成して報酬を得るために発達してきた生き物だそうです。それを裏付けるのが、報酬を見せられそれを「欲する」とドーパミンが分泌され、報酬が与えられ、それが「好きになる」とオピオイドが分泌されるという事実です。

提案段階で必要なのは、クライアントにドーパミンを分泌して提案を「欲して」もらうことです。

そのために有効な方法は「相手が欲しているものを可視化」することです。すなわち、問題が解決している状態を工夫して見せれば良いのです。

ですから、調達改革では、以下のようなことを示します。

  • 調達が事前に部品を選定できるためには、部品カテゴリ単位の調達チームを編成する必要があるが、このようなチームを作ると今まで見過ごしてきた部品コスト削減機会がザクザク見つかる(部品中心時代の調達部門の戦略性の図参照)
  • 部品カテゴリ・チームがコスト削減効果を上げるために使えるフレームワークがいくつか存在する(調達戦略を理解するためのフレームワーク 図①、②、③参照)

クライアントが問題が解決した状態を「欲しい」と思うようになって初めて、ソリューションを売ることが可能になるのです。

コンサルティングの提案では、問題を解決する方法、すなわち現状からあるべき姿へと移行させる方法を中心に説明します。しかし、あるべき姿はやってみないをわからないとして、そのイメージの提示は怠りがちです。

クライアントの感情を配慮した場合には、そのような言い訳は逆効果だということに気づく必要があります。むしろ、解決後のイメージを惜しみなく提供するように心がけるべきなのです。

ここまでは、それぞれのトリガーがどういうものか、それがクライアントの感情にどのようなインパクトを与えるものであるかを説明しました。ここからは、これらのトリガーの組み合わせがなぜ必要で、どう有効かを検討していきましょう。

方法論型コンサルタントが営業で尊敬されるために必要なこと

コンサルティング・ビジネスの類型から考えるキャリア形成で、コンサルタントはまず方法論型コンサルタントとしてキャリア形成を始めるべきだと説きました。(方法論型コンサルタントとは、図①の4象限の左上に位置する人たちのことです。)

この方法論型コンサルタントがクライアントの尊敬を勝ち取るためにやるべきことを検討していきましょう。

方法型コンサルタントとは何か

まず、方法論型コンサルタントが何であるかを理解するために、上述の記事で論じた内容の復習をしておきます。

コンサルティング・ビジネスは図①に示すように、次の四つの類型に分類することができます。

  1. パッケージ型コンサルタント
    • クライアントが自分の問題(業務の効率向上、等)を理解していて、かつ解決策も世の中に知られている分野を担当する。この場合、コンサルタントに求められるのは、分析の速さとその品質だけなので、あまり高い単価は取れない。業務フロー分析やABC(Activity Based Costing)分析などが、その例
  2. 方法論型コンサルタント
    • クライアントは自分の問題は分かっているが、その解決策がわからないので、コンサルタントが持つ問題解決方法論に頼るケース。経験が浅いコンサルタントでも、クラアントにとって方法論が未知であれば、それなりの価値を提供できる
  3. 先進事例型コンサルタント
    • クライアントは自分の問題がよく分かっていないが、コンサルタントが持つ先進事例経験(トヨタ式カイゼン、等)に頼れば自分の会社が良くなると信じるケース。豊富な経験を持つ実務者がコンサルタントに転じた場合に有効
  4. イシュー解決型コンサルタント
    • 上記のいずれにも属さず、クライアントの心配事(イシュー)を解き明かして問題を定式化し、その解決策を見つけていくタイプ。高度で単価が高い、本格的なコンサルティング
インサイトの提示

方法論型コンサルタントが尊敬されるためにはインサイトの提供が必要

方法論型コンサルタントがクライアントにコンサルティング提案をするときには、何をどうするでしょうか?

クライアントは自分の問題を分かっています。ですから、コンサルタントは、その問題をヒアリングを通して理解することから始めます。その上で、自分の方法論がその解決に適していることを示します。いわゆるソリューション営業をするわけです。

ところが、ソリューション営業の終わり?インサイト営業の始まり?でも述べたように、クライアントがソリューション営業に価値を感じなくなってきています。この現象を放っておくと、コンサルティング単価の低下を招くことになります。

単価の低下を避けるためには、コンサルティング営業は「お客さま要望の理解」ではなく「インサイトの提供」から始める で述べたインサイトを提供し付加価値を高めることが必要です。

ここで、インサイトとは問題に関する独自の視点です。アインシュタインが言ったように「我々の直面する重要な問題は、その問題をつくったときと同じ思考のレベルでは解決できない」のですから、別の思考レベルを提示し感心させるのです。

(インサイトの作り方については、コンサルティング営業は「お客さま要望の理解」ではなく「インサイトの提供」から始めるを参照ください。)

インサイト提供の手順

方法論型コンサルタントがすべきことは、図①の1)から4)の手順を踏むことです。

まず、クライアントが自分の問題をうまく認識できていない状態を見逃さず、そこに立ち会うことです。そこで、問題の見方を変えれば解決できることを示すのです。

すなわち、問題をリフレームすることにより、図①右上のイシュー解決型コンサルタントの領域にいるクライアントが左上の方法論型コンサルタントの領域に移れるようにするのです。

そうすれば、クライアントは自分の問題が見え、コンサルタントと問題解決方法を議論できるようになります。目からウロコが落ちるので、そのことに感謝してくれます。

コンサルタントにとっても、自分の得意領域に土俵を移せるので、一石二鳥というわけです。

さらに、問題の深刻さを認識させ(破壊)、それが解決できそうなことを示す(報酬)ことで、クライアントの感情を動かして提案ができるのです。

もちろん、すべての問題に関しこの方法が使えるわけではありません。方法論型コンサルタントは、自分のインサイトを磨いておき、それが当てはまりそうなクライアントを見つける努力を怠ってはなりません。

インサイトを提供するコンサルティング営業方法論とその適用事例

感情トリガーを使ったコンサルティング提案の概念がわかっただけでは十分ではありません。それをもう少し手続き的にしないと利用できませんよね?

実は、その手順がチャレンジャー・セールス・モデルという本に示されています。その手順を多少手直しした上で感情トリガーを当てはめてみると、図②のようになります。

インサイト営業方法論

この手順での動きを、ブランド店の接客の本質はソリューション営業 で紹介した流通コンサルタントAさんのインサイトの仮想提案シナリオで説明しましょう。

Aさんのインサイトは、次のようなものです。

  • うまくいっていない専門店の経営者ほど、「品揃えには自信がある。そのことは店に入って貰えばわかる」と言う。しかし、Aさん自身の経験では、高級ブランド品を買う上顧客は「店に入る前にその店で買うことを決めてくる」。したがって、経営者は、店の中の品揃えに加えて、店のブランド・イメージとそれを反映した買い物ストーリーの構築に注力すべきだ

このインサイトに基づいた提案シナリオとしては、たとえば以下のようなものが考えられます。

  1. 地ならし
    • 私がこれまで担当した専門店チェーンの経営者の方々は、みなさん自分のお店の品揃えには自信を持っていらっしゃって、異口同音に「お店に入ってもらえば店の良さはわかってもらえる」と仰っています。ただ、その割には売り上げが伸びていません。例えば、〇〇社も△△社も、経営状態はこんな具合です。。。
  2. リフレーム
    • 私自身が専門店チェーンの販売をしていた経験では、最近のお客様は品揃えだけではお店には来られないようです。モノからコトへと言いますが、お店に品揃え以上の買い物ストーリー(コト)を求められていて、それをもとに、「店に入る前にその店で買うことを決めている」のです
  3. 裏付け
    • 実際、お客様が専門店チェーンに来られる動機は口コミによるものが多いですよね。口コミの内容は、手づくりの良さ、とことんこちらの関心事に付き合ってくれる接客、と言ったもので、品揃えが入ることは少ないです。実際、統計を取ってみると口コミで評判の店の売り上げはこれくらい上がっています。。。
  4. 感情点火
    • このような話をすると、「じゃあうちも接客で評判を取ろう」などとおっしゃるのですが、店舗を見てみると品物で混み合っていて、じっくり腰を落ち着けて座って話すところがない、という問題が見られます。手づくりの良さにこだわろうと考えても、お客様が商品の由来を聞こうと思っても、それに応えられるのは店長しかおらず、店長が忙しい時はお客様が帰ってしまうなど、一貫性がありません。訴求したいブランド・イメージから考え直して、売り場設計や接客プロセスを見直す必要が出てくるのです。
  5. 新しい価値の提示
    • 実は、ブランド・イメージに合わせたお店の作り方というのは、そこまで難しいことではありません。基本的なやり方があるのです。コーディネート提案を売りにするのであれば、あらかじめお客様の利用シーンを想定しておき、それに合わせた提案シナリオを用意しておくなどのことをすれば良いのです。それを実現した接客プロセスは、たとえばこのようなものになります。(サンプルの図を見せる。)要は、自分のお店のブランド・コンセプトを確立し、それに合わせた準備をすれば良いのです
  6. ソリューションの提案
    • 具体的なソリューション提案に入る

どうでしょうか?クライアントの感情を揺す振りながら、自分の主張を上手に展開していることがわかりますよね?

このようにして、クライアントが話題から離れられなくして、自然に解決策に誘導していくのです。そうやって初めて、成果の見えないコンサルティング提案が売れるのです。

何を学んだか

  • コンサルティング提案は、成果が見えない無形のものを売るので難しいと言われるが、難しさの原因は顧客の感情に配慮しないことにあることが多い
  • 顧客の感情に火をつけるための方法として、フレーミング、破壊、報酬などのトリガーが有効であることが知られている
  • 比較的経験の浅い方法論型コンサルタントでも、顧客の世界観を変えるインサイトを用意してリフレーミングや破壊をすれば、尊敬を獲得しつつ案件を獲得することができる
  • その手順を整理した提案手順があるので、コンサルタントはこれを覚えておくべきである