「1対1から多対多」へという大きな変革に対応する営業改革


背景が描かれていない本を読むだけでは、ビジネス知識は頭に入らない

今日から新しいテーマでブログを再開いたします。予告編でもお伝えしたように、B2Bコンサルタントが新しい分野のビジネス知識を身につける方法について書いていきます。

新しい分野の知識を身につけようとしたら、皆さんはどうされますか?多くの人は、まず関連書を読み始めますよね?でも、その結果何が起こるでしょうか?

何冊か本は読んで個別知識は仕入れたが、どうも全体像がわからない、ということはないでしょうか?

例えば、巷にはトヨタ方式の改善コンサルタントが書いた本が満ち溢れています。しかし、それを読んで「カンバン」、「アンドン」などの言葉を仕入れたからといって、トヨタ式の生産改革のコツが理解できるでしょうか?なんか頭がモヤモヤとするだけではありませんか?

それに対して、難解ではあるけれど大野耐一さんの「トヨタ生産方式」を読むと、「ああ、そういうことか!」と腹落ちしませんか?その本には、利用できる資源が乏しかったトヨタが、資源が豊かなGMなどに対抗してどうやって顧客に付加価値を提供していくかについての考え方が書いてあります。

つまり、大野さんの本には、なぜトヨタがトヨタ生産方式を考案せざるをえなかったか(Why)、トヨタ生産方式の本質は無駄を省いて付加価値を生産するものであること(What)が書いてあるのです。このような本質を書いた本が少ない状況で、巷の改善本はHowだけが書いてあるから分からないのです。

コンサルタントは、クライアントの問題を解決する商売です。だとしたら、まずクライアントの問題がなぜ発生し(Why)、何をすればその問題が解決するか(What)をクライアントと合意する必要があります。その上で具体的な解決策(How)を検討するという手順を踏むのです。

ですから、新しい分野のビジネス知識を仕入れようとしたら、その分野で典型的に起こっている問題が何で、それがなぜ起こるのかの理解から始める必要があるのです。個別解決策の理解をするだけでは不十分なのです。

なぜ、そしてどういう営業改革が求められるのか?

では、営業に不案内なコンサルタントがクライアントと営業改革について会話する必要が生じたとしましょう。そこで議論すべきWhyとWhatは何でしょうか?

それを考えるために、営業改革の本で扱われているテーマを抜き出してみると、例えば以下のようなものがあります。

  • ソリューション営業
  • 顧客関係マネジメント
  • 組織営業、チーム営業
  • 案件管理
  • CRM、SFAによる仕組み営業
  • 営業の標準化、生産性向上

これらの個別テーマに関しては、多くの参考書が書かれていますので、それらで学習することはできます。単に営業に興味があるだけなら、それで十分でしょう。

しかし、コンサルタントの場合、それだけではすみません。クライアントと向き合って改革を進める際に、それらのテーマを実現することがなぜ必要かをクライアントに説明できなければならないからです。

例えば、中小企業の経営者に案件管理の導入を勧めたところで、「うちにはそんな余裕はない」と反発されるかもしれません。そのようなときに、その会社に本当に高度な案件管理が必要なのか、あるいは別の簡便法で済ませられるのか、等を判断できる必要があります。

つまり、それらの改革テーマがでてきた背景を理解しておく必要があるのです。そしてこの時にトヨタ生産方式の場合の大野さんの本に相当するものが存在していないことが、問題の理解を難しくしているのです。

そこで、上述の改革テーマがでてきた背景を分析してみると、以下のようになります。

  • ソリューション営業: 顧客のビジネスが複雑化し、同時に顧客の商品知識レベルが向上してきている。そのような状況の下では、商品・サービスを売るだけでは差別化にならず、顧客の問題解決を支援し、その問題解決に自社の商品・サービスが有効であることを示す必要が出てきた
  • 顧客関係マネジメント: 顧客側の問題が複雑化し、問題解決支援の依頼に関わる意思決定者が複数存在するようになってきた、したがって、顧客側の登場人物を事前に把握する必要が出てきた
  • 組織営業、チーム営業: 商談の単位(案件)が複雑化し、一人の営業だけでは処理できなくなり、複数の社内専門家を効果的に組み合わせる必要が出てきた
  • 案件管理: 商談の単位(案件)の数が増えかつ複雑化する中、その進行を組織的に管理し社内リソースを有効活用する必要が出てきた
  • CRM、SFAによる仕組み営業: 案件管理、組織営業を支える仕組みが必要になってきた
  • 営業の標準化: 営業が組織化するにつれ標準的な作業の進め方が必要となってきた

大きな流れは1対1の営業から多対多の営業への変革

これらの分析をまとめてみると、営業改革が必要とされる背景が次のようなものであることが理解できます。(図参照)

  1. 顧客が購入したい内容が単なる商品・サービスから問題解決支援に変わってきている
    • これを支えるためのソリューション営業プロセスが必要となる
  1. 問題が複雑化するにつれ、顧客側の発注に関わる関係者が複数化している
    • このための顧客関係マネジメントが必要になる
  1. 同様に、問題が複雑化するにつれ、営業以外の専門家も加わった組織的な解決体制が必要となっている
    • このために属人営業から組織営業への変革が必要になる
  1. 組織的な営業を効率的に支えるための業務の標準化や仕組み化が必要となっている
    • このための案件管理や様々なプロセス化が必要となる

このような背景を理解した上で、クライアントがそれらのうちの「どの」改革を「なぜ」必要としているかの状況分析をする必要があるのです。それをせずに個々の改革テーマを機械的に適用とする愚は避けるべきです。

多対多の営業

次回は、個別テーマについてもう少し詳しく見ていきます。