パートナー型コンサルタントがリーダーシップ論を理解すべき理由


多くのコンサルティング・プロジェクトが失敗するのは?

今日は、クライアントに寄り添うことをコミットするパートナー型コンサルタントに向けた話です。

ここで、パートナー型コンサルタントとは、改革のテーマを指摘するだけでなく、その成功を見届けること、さらにはクライアントの長期的成長に貢献することまでを自らの守備範囲と心がける人のことを指します。

その昔、とある大企業の構造改革が進まないときに、社長が「社員がバカだからついてこない」と発言して物議を醸したことがありました。でも、コンサルタントにとっては他人事ではありません。

当初プロジェクト・メンバーが意気軒昂で喧々諤々と改革構想を議論していたのに、いつの間にか、総論賛成各論反対でプロジェクトがしりすぼみになる。合意したはずの改革策をクライアントがいつになっても実行しない。

コンサルタントなら、このような経験を持ち、内心社長と同じ感想を抱いたことがあるでしょう。なぜ、そうなるのでしょうか?

物事は他責では解けません。パートナー型コンサルタントの立場に立ち、このような問題が発生するのはコンサルタントの自責であるとして、その原因を考えてみましょう。

コンサルタントのクライアントとなるのは、(こう言っては失礼ですが)大抵は周回遅れの企業です。業界トップでイノベーションを推進しているような企業がクライアントとなることは、滅多にありません。

このことが何を意味するでしょうか?

今更ながらの定義ですが、コンサルタントはクライアントの問題を解決する商売です。そして、問題とは「あるべき姿」と「現状」の「ギャップ」です。「ギャップ」がなければクライアントはハッピーなはずで、コンサルタントに支援を頼んでくるはずがないからです。

ここで、周回遅れ特有の事情が発生します。それは、「あるべき姿」は難しくないということです。先進企業が当たり前のようにやっていることができないので、それに追いつくことを「あるべき姿」とすれば良いからです。

このあるべき姿の実現がコンサルタントの得意分野であれば、楽勝ですよね?

営業コンサルタントが「ソリューション営業の体制構築」を引き受けたときなどが、これに当たります。「ソリューション営業」の仕組みの「あるべき姿」を明示し、その導入を指揮すれば良いからです。

でも、ここで成功するコンサルタントと失敗するコンサルタントの差が出てきます。仕組みの導入とその忠実な運営にのみ注力すると、「社員がバカだから」の社長と同じ憂き目にあいます。

これまで属人営業やご用聞き営業でやってきたベテラン勢が、反発したり知らぬ顔をしたりするからです。この問題に、どう対処すれば良いでしょうか?

改革におけるリーダーシップの必要性

この種のコンサルティングの成功と失敗を分けるのは、コンサルタント自身がリーダーとマネージャーの発想の違いを理解しているかどうかです。

ベテラン営業が住み慣れた環境から新しい環境に引っ越すのは、た易いことではありません。これまでの成功体験を捨ててでも新しい環境に移行した方がメリットがあることを納得させなければ、改革に協力してはもらえません。

そのことを考えずに仕組みの導入と運営だけに注力するのは、マネージャーの発想です。物事を正しく実行するのが仕事であるマネージャーにとっては、それで何の問題もありません。正しいことに協力しない相手が悪いのです。

しかしそれでは改革が進まないと、変革におけるベテラン営業の気持ちにまで配慮するのがリーダーの発想です。

トヨタ式工場改善のように、コンサルタントがどんどん現場の無駄を指摘し、それらを取り除いて管理の仕組みを強化していくだけで、うまくいくコンサルティングもあります。

作業員に「現場のあるべき姿」が暗黙のうちに共有されているため、無駄を指摘しても反発されないからです。そのような「改善」の場合は、マネージャー的発想でも事足ります。

しかし、「あるべき姿」が共有されるかどうかが「改革」の成否を分ける場合には、そうはいきません。参画メンバーの意欲を掻き立てるリーダーシップが必須です。その場合に、コンサルタントがマネージャー・タイプだと、失敗の確率が高まるのです。

では、リーダーとマネージャーはどう違うのでしょうか?

コンサルタントが理解すべきリーダーとマネージャーの違い

リーダーシップ論の権威のウォーレン・ベニスが「本物のリーダーとは何か」で述べた有名な言葉に、「マネージャーはものごとを正しく行い、リーダーは正しいことをする」というのがあります。

もう少し詳しく述べると、「マネージする」とは「何かを引き起こし、成し遂げ、義務や責任を引き受け、実行すること」だとされています。これに対し「リードする」とは、「人を感化し、方向や進路、行動、意見などをみちびくこと」 です。

両者の違いは、ビジョンと判断に基づき結果を求める行動をすることことと、実務能力に基づく効率を求める行動との差になります。

ここで理解すべきは、リーダーシップとマネジメントは相反する概念ではなく、双方が補完的な役割をするものだということです。(ジョン・コッター、「リーダーシップ論」)

マネジメントの目的は、既存のシステムを動かし続けることであり、リーダーシップの目的は、効果のある変革、特に大きな変革を生み出すことにあります。

強力なリーダーシップがあっても、マネジメントに欠ければ組織を大混乱に陥れる危険性があります。逆に強力なマネジメントがあっても、リーダーシップにかければ、組織は致命的な官僚主義に陥るでしょう

現状の中でものごとが正しく行われていない状態を正すのが「改善」、変化した新しい環境の中での正しいことを求めて、それを実現する活動が「改革」というわけです。(図①)

単純にソリューション営業の仕組みを導入しそれを運用しようとするのは、マネージャーの発想で、抵抗勢力の反発を招きます。そうではなく、本来の営業の姿がどうあるべきかのビジョンを描き、そのためになすべきこと(ご用聞きや属人営業からソリューション営業への変革の内容)の明確化と動機づけをするリーダーシップが必要なのです。

パートナー型コンサルタントを目指すのであれば、マネージャーとリーダーの差を意識し、大きな改革を必要とする場合には、自身がこのようなリーダーシップ発想を身につけている必要があります。その上で、クライアントの改革オーナーのリーダーシップ発揮支援を行っていかなければならいのです。

リーダーシップとマネジメント

「リーダーシップ」を実用的に理解するためには

では、リーダーシップとは具体的にどのようなものでしょうか?どうすればコンサルタント自身が身につけられる、あるいはクライアントの社長に身につけさせられるのでしょうか?

このような観点からリーダーシップを理解しようとすると、困難にぶち当たります。以下のようなリーダーシップ論の本に書かれている内容は素晴らしいのですが、リーダーシップの定義が微妙に一致しない、それらを実用的なガイドとして読み解くのが難しい、などの問題に遭遇します。

その困難を乗り越えて、自分たちが使えるようになんとか咀嚼すると、リーダーシップとは概ね次のような要素から成るものであることがわかります。(この理解のために、上記の本のなかで一番実用的な示唆があるのは、リーダーシップ・チャレンジです。)

  • ビジョン: 進むべき方向を示す(例:ジョン・F・ケネディの「1970年までに人類を月に送る」)
  • 変革への挑戦: ビジョン実現のための取り組みを始める(例:現場への権限委譲)
  • 信頼: リーダーの言行が一致していることを信じさせる(例:平等主義を唱えるなら管理職専用駐車場をなくす、リーダーが率先して顧客の苦情を聞いて回る)
  • エンパワーメント: 社員の自発的行動を奨励する(例:生産実績など評価基準が明確な報奨制度の導入、タウン・ミーティングの実施)

なんとなくリーダーシップのイメージが湧き上がってきたものの、コンサルタントが何をすべきかの実用的ガイドはまだ手に入ってきませんよね。

ここから先に進むためには、コンサルタントが何をなすべきかについて、自分自身に的確な質問を投げかけられる必要があります。そこで、次の2つの質問を投げかけてみましょう。(それ以外の質問もあると思いますので、各自考えてみてください。)

  • クライアントに、当面の改革に必要なリーダーシップをどのように身につけさせるか
  • 長期的に、クライアントの社長をどのようなリーダーに成長させるべきか、そのために何をすれば良いか

以下、これらの質問に答えていくことにします。

クライアントに変革を遂行させるために必要なこと

実は、この問いに答えるための知見はかなり蓄積されています。1990年代に一世を風靡した企業のリエンジニアリング・プロジェクトの多くが失敗したことで、その理由を探る研究がなされてきたからです。

そのなかで、失敗を避けるためには、「人間は変革を恐れる」という基本的なことを認識したうえで、その状況にあったリーダーシップを確立することが必要だ、というあたりまえのことが再確認されたのです。

その結果、チェンジ・マネジメントという手法が確立されました。たとえば、コッターの「企業変革力」では、次の8つのステップをその順に適用すべきだと述べられています。(文言は、よりわかりやすい「企業変革ノート」の方からとりました。)

  1. 危機意識を高める(従業員の現状満足を容認すると変革は失敗する)
  2. 変革推進チームを作る(トップの支持を得た強力な連帯感のあるチームなしに変革は行えない)
  3. 適切なビジョンを作る(変革には、人々に行動の方向を示し、整列させ、鼓舞するビジョンが不可欠である)
  4. 変革のビジョンを周知徹底する(大規模な変革は、企業内のほとんどの従業員が協力を惜しまないレベルに達しなければ成功しない)
  5. 従業員の自発的行動を促す(従業員の行動の障害を取り除く、必要な訓練をする、などのことをする)
  6. 短期的な成果を生む(短期的な区切りごとの目標を設定し、目標達成を確認しその成果を祝う、という工夫をしないと長続きしない)
  7. さらに変革を進める(早急に勝利を宣言すると失敗する)
  8. 変革を根づかせる(変革を企業文化に定着させることを怠らない)

チェンジ・マネジメントの教科書を読んでこれら点の詳細を理解すれば、変革の遂行に対するガイドが得られます。

クライアントをどのようなリーダーとして成長させるか

真のパートナー型コンサルタントを目指すなら、短期的なプロジェクト成果の獲得方法を心得るだけでは十分ではありません。

コンサルタントの理想は、クライアントとの長期的な関係を確立し、クライアントの長期的成功に貢献する「信頼されるアドバイザー」となることです。このためには、クライアントのリーダーとしての成長を支援する方法を学んでおく必要もあります。

ただし上述のように、この目的でリーダーシップ論を読んでも、各論があるだけで参考になりません。他方、世の中のリーダーの成功体験を読んでも、当然のことですが我流の成功体験の羅列があるだけで、共通の成功要因を抜き出すことは困難です。

唯一の手がかりとして浮かんでくるのは、リーダーの成功体験を読んでいると、なんとなく共通パターンがありそうだということです。たとえば、次のようなパターンが存在します。

  • 企業の方向を定め、遠大な目的に向かって社員を率いていく創業者的なパターン(ユニクロの柳井社長、セブンイレブンの鈴木社長、ヤマト運輸の小倉社長、など)
  • 旧態依然としていて退潮傾向にあった会社の文化を再構築し、業績をV字回復させたパターン(日立の川村社長、コマツの坂根社長、同和鉱業の吉川社長、など)
  • 従業員を鼓舞し権限委譲して自由闊達な社風を築くことで業績をあげるパターン(ニューコアのアイバーソン社長、キリンビールの田村高知支店長、ネッツトヨタ南国の横田社長、など)

そういう眼で見ていると、「ビジョン・リーダー」という本に、以下に示す似たようなリーダーの分類が示されていることに気づきます。(図②)

  1. ディレクション・セッター: リーダーとして、組織が力を合わせて目指す目標を、未来と外部環境の領域に見出し、そのことを明言する(例:何十年も前から取り組みながら失敗を重ねてきたソビエトの経済を全く新しい方向へと導こうとしたゴルバチョフ大統領)
  2. チェンジ・エージェント: ビジョンの実現を可能にするために内部環境(人材、資産、設備など)の変化を円滑に進めていく(独占企業であったAT&Tを競争できる状態に変革したチャールズ・ブラウンCEO)
  3. スポークスマン: 組織とそのビジョンについて、外部関係者に対して先頭に立って提唱し、啓蒙する(経営危機時のクライスラーのアイアコッカ)
  4. コーチ: 組織に属する個人に権限を与え、自ら情熱的にビジョンを体現していく人々の集団を編成し、自らの行動でその模範となる(公民権運動のマルチン・ルーサー・キング牧師)

この分類を見ると、上記の経営者の事例が1、2、4のいずれかに該当していることがわかりますのでパターン分けは有意味のようです。ということで、次回以降のブログで、1、2、4のリーダーシップのパターンについて、そこから何が学べるかを分析していくことにします。

リーダーシップの役割

まとめ

  • コンサルティングで改革が失敗に終わるケーズが多々ある。この失敗を避けるために、パートナー型コンサルタントはリーダーシップとマネジメントの違いを認識し、大きな改革で必要とされるリーダーシップの本質を理解しておくべきである
  • リーダーシップは、「ビジョン」、「変革への挑戦」、「信頼」、「エンパワーメント」などから構成される。しかし、それを知るだけでは改革はできない。リーダーシップを活用するためには、その使い方に関する適切な質問ができる必要である
  • 一つ目の有用な質問は「クライアントにどのように変革をリードさせるか」であり、これに答えるためはチェンジ・マネジメントの分野での蓄積に学ぶべきである
  • 二つ目の質問は、「クライアントをどのようなリーダーとして成長させるか」である。この質問への解答の手がかりは、リーダーシップのタイプの分類を知り、求められるタイプごとの育成方法を知ることにより得られる。リーダーのタイプには以下があり、次回以降のブログでこのうち1、2、4について分析していく
    1. ディレクション・セッター
    2. チェンジ・エージェント
    3. スポークスマン
    4. コーチ