ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち


 

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

すでに読まれた方も多いと思いますが、いい本です。

この本のことは、原著が出たころから、そしてひょっとしたらトランプが勝つ可能性もあると思い始めた頃から知っていましたが、読むのは避けていました。重苦しくて途中で放り出すかもしれないと、勝手に決め込んでいたからです。

でも、一つのテーマをきちんと理解するには、物事を複数の視点から複合的に見る必要があります。「ホワイト・ワーキング・クラス」を読んだからには、エリートの視点だけではなく、労働者階級自身の苦しみも知る必要があるでしょう。

それに加えて、今朝は健康診断の日だったので、うんざりするような待ち時間があリます。という事情で、ちょうど良いと昨晩から読み始めました。おかげさまで、待ち時間は全く苦にならず、あっという間にお昼がきました。

読んでみての感想は、ジョーン・ウィリアムズの本はエリートらしく歯切れがよく、この本はもがき苦しんでいますが、結論は非常に似ているということです。

労働者階級が伝統的な価値観を持つ安定した社会での暮らしを愛していること自体は、本来は何の問題もありません。ところが、時代の歯車が狂い始め階級全体が没落し始めると、愛着が足かせとなります。そこから抜け出し新たな経済的充足を得ることがいかに困難なのかを、この2つの本は異なった角度から説明してくれます。

読後感は複雑です。

一つは、この本は没落しつつある労働者階級で祖母に育てられて成長した若者の自伝でノンフィクションなのですが、青春小説のような趣があるということです。映画化されるというのも頷けます。リチャード・ギア主演の「愛と青春の旅立ち」と同様、きっとヒットするでしょう。

もう一つは、予想通り重苦しく、なんとも解決策が見つからないというものです。

後日談ですが、著者をオハイオ州共和党上院議員に推薦するという動きがあったようです。まだ子供が小さく家庭を優先したいと断ったそうですが、いずれ政界に進出するかもしれませんね。