業務改革の目的実現(分業の弊害をWin-Winで解決)のコツは先行対処:調達改革の事例をもとに


Last Updated on 2020年11月18日 by 時代遅れコンサルタント

分業方式を変化させる業務改革の成功にはWin-Winが必要

業務が設計されたそもそもの目的は、会社の仕事を効率的に回すことです。そして、効率化の主要手段は分業です。

その分業がうまく働かなくなったときに、業務改革のためにコンサルタントが呼ばれます。そこでは、分業の方法そのものにメスを入れることが求められます。

しかし分業のやり方を不注意に変えると、全体の効率は上がるものの、一方が得をし他方が損をするということが起こりかねません。そのような事態になれば、損をする側が改革案に賛成せず、改革が失敗に終わる可能性が大きくなります。

ですから業務改革に当たっては、関係部門がWin-Winになるように特段の配慮をする必要があります。

たとえば、現在多くのところで進められている調達改革では、部品の選択権を全体最適の観点で設計から部品カテゴリ単位の調達チームに移そうとしています。

しかし、いかに全体最適であっても設計にとってメリットがなければ、この改革は成功しません。設計にとって、新しいやり方のほうがQCDが向上する、自分たちが不得意な調達先業界の知識を習得しなくても済む、などのメリットがありWin-Winになっていることが不可欠なのです。

でも、理屈を理解することそれを実行することは別物です。本当にそのことを肝に命じて行動しているでしょうか?

調達改革の基本は、調達先を競合させ調達価格を低減させることですが、その時に調達先ともWin-Winの関係が必要なことを意識しているでしょうか?ただ競合させれば、それで充分だと考えてはいないでしょうか?

実は、継続的なコスト低減を可能とするためには、競合のやり方そのものが調達先にメリットがあるものになっている必要があるのです。

理屈に合わない無理な価格低減は、将来必ず別のコスト上昇としてはね返ってきます。また実力のある調達先ほど、メリットのないメーカーとの付き合いを避けるをことを心得ておかねばならないのです。

以下、Win-Winの考え方に基づいた長続きする競合方法について説明することにします。

Win-Winのためには相手の不満を知る

Win-Winになる第一歩は、相手側の不満に耳を傾けることです。特に、調達に関しては、発注側の一方的な意向で交渉が行われているケースが多いので、大きな改善余地が潜んでいます。

たとえば、ちょっと聞くだけでも、次のような調達先の不満が聞こえてきます。

  • 当て馬の相見積もりに付き合わされ、時間を浪費させられる
  • そもそもボリュームが小さくて、ビジネスとして旨みがない
  • 見積もりの結果どれくらいのボリュームのビジネスが見込めるかがわからないので、思い切った価格提案や投資ができない
  • 急に対応させられるので、中長期の投資と対応付けられない
  • 他社より実力があるのに、後発にはチャンスがない

これらは単に調達先の不満では済まず、発注先のコストにも跳ね返ってきます。

当て馬にされた調達先はそのコストを回収するために他の見積もりに含ませるでしょう。そうしなければ業績が落ち、調達先の競争力を失わせることになりかねません。結局は自社に跳ね返ってきます。

積もり積もって、これらは長期的なコスト低減策を難しくする方向に向かいます。発注先は、遅かれ早かれこれらの問題を自責であるとして解決する必要に迫られるのです。

 不満の原因は後追い対処

自責として対処するためには、これらの問題を引き起こしている自社内の原因を見つけることが必要です。その原因は、設計が部品を決めてから初めて行動を起こす後追いの体制にあります。

このことを「当て馬見積もり」の例で確認してみましょう。

スループット経営における調達部門の戦略性で述べた、従来の製品開発プロジェクト単位の調達では、調達すべき部品の使用を設計が決定します。それまで調達は行動を起こすことはできません。

このような体制では、事前にどのような部品が調達されるかを見越して調達先を開拓しておくことはできません。どうしても、今までに付き合ったことのある調達先を中心にして見積もり依頼を出すことになります。

これですんなりコスト低減ができれば良いのですが、以前から付き合いのあるもの同士では、それほどの効果は見込めません。コスト低減の余力があるのなら、とっくにそうしているでしょうし、相手も発注先の価格相場を心得ているので無理な値下げもしません。

この馴れ合い状況を打破しようとして、無理やり競合状況を作り出すために当て馬に見積もりを依頼するわけです。これは、調達担当者が自分の責務を果たしたというアリバイ作りにも使われます。

しかし、上述の通り先を見通すことができないので、当て馬にされた相手に将来の埋め合わせを約束することができません。当て馬にされた方には何のメリットもないので、お互い時間の無駄使いとなるのです。

つまり、図-Aに示すような、設計が決め調達はそれに従うという後追いの流れを変える必要があるのです。

他のコンサルティングでも、後追いのために効果的な手を打てないという事例は多々見られますので、調達改革を参考にして先行対処のやり方を学んでおくことは意味のあることだと思われます。

調達先を競合させる仕組み

 Win-Winは先行対処で実現

調達先の不満を解消し、競合の実効を上げるためには、相見積もりを出す前に何らかの手を打っておく必要があります。つまり、競合を次の先行対処的なプロセスに基づいて実施する必要があります。(図-B)

  1. 事前に競合ができる状態を作りだす
    • 競合メリットのある部品を作り込む
    • QCD能力の高い調達先セットを開拓する
  2. 設計が選んだ部品とそれに対応する調達先セットをもとに、公正で透明なプロセスで競合を実施する

以下、これらの事前準備(先行対処)について解説します。

競合メリットのある部品を作り込む

競合メリットがあるとは、調達先にとって競合に参加する動機が持て、競合参加企業数が増える条件を満たしていることを意味します。

実力がある調達先にとって競合に魅力があるのは、次の2つの場合です。

  • ボリュームの大きいビジネスが見込める
  • 先発調達先に食い込める可能性がある

この実現のためには、次のような策を取れば良いことが知られています。

  • 設計変更などをもとに製品間で部品の共通化を図り、それらをまとめて見積もり依頼を出す。このことにより、一件当たりのボリュームを大きくする
  • 基板などの搭載品についても同様の共通化を図る
  • 複数の調達先にまたがった部品に搭載される共通部品については、自社で調達先を選定し、そこから部品メーカーへ供給させる
  • 量産時の部品の変更可能性を高め、後発部品メーカーの参入可能性を高める
  • 技術革新が激しい部品に関しても、量産時の部品変更を可能として、オーバースペックでも構わないから価格が下がった新製品を使えるようにする

部品カテゴリ・チームは、部品特性を見極めて上記のような対策を講じることができるようになっていなければなりません。そのための技術力の蓄積が必須です。

能力の高い調達先セットを開拓する

ここでは、高いQCDを提供できる調達先を予め時間をかけて探索する作業を実行します。

たとえば、電源のように加工費が高い部品に対しては、加工にかかる人件費の削減を目指して、発展途上国の部品メーカーを探索しておく必要があります。

それとは反対に、モーターなどは逆に組み立ては簡単で部品費が高い傾向にあります。したがって、部品購入力が強い大手メーカーを中心とした開拓をするのです。

このためには、部品カテゴリ・チームの調達先業界環境の情報の収集が不可欠となります。調達先開拓に先行して、カテゴリ調達戦略を確立しておく必要があるのです。

公正で透明な競合プロセスを確立する

競合メリットのある部品と能力の高い調達先セットを準備しても、競合プロセス自体が公正かつ透明でなければ、効果的な競合は起こりません。

たとえば、競合に勝った場合にどれくらいのボリュームのビジネスが見込めるのかが示されていなければ、調達先は本気になれません。このためには、発注比率が明示されている必要があります。

つまり、このプロセスでは次のようなことを定めておく必要があります。

  • 調達先として競合見積もりに参加するために満たすべき条件
  • 調達先が競合に勝つために満たすべき条件
  • 競合を動機付け促進するための仕組み(たとえば、発注比率や定期的な見積もり見直し期間)

この具体例を紹介しましょう

今から15年ほど前のことですが、当時あるデジタル家電製品の世界トップメーカーであったN社は、次のような購買プロセスを調達先に明示し、それを厳格に守った調達を運営していました。

  • 部品カテゴリごとに、部品メーカーの評価基準を明確にし、全世界の部品メーカーを定期的にその基準で評価する。また、その評価結果を部品メーカーにフィードバックする
  • 新製品用の部品の調達が必要となった時は、その時のランキングの上位5社に部品仕様を公開し試作を行わせる。試作結果が仕様を満たしたスピードで評価し、その上位2社に部品を発注する
  • 発注に当たっては、調達リスクを低減するため2社発注とする。1位メーカーに主力工場生産分(約65%)を、2位メーカーに第2工場分(約35%)を発注する

このように明示されていれば、部品メーカーはN社の評価基準を満たした上で、試作スピード競争に勝てる投資をすれば良いことがわかります。基準が明確なので、世界中の部品メーカーがしのぎを削ってトプメーカーであるN社の受注を得ようとして、N社のために投資をしてくれるわけです。

発注条件が明示され、しかもN社がそれを守ることを保証していなければ、この投資は決して起こらないことに注意しておく必要があります。

コンサルタントが心得ておくべき問題解決のコツ:手詰まりを先行対処で解消する

コンサルタントが支援を依頼される案件は、基本的にはクライアントが自分では解決できないものです。つまり、手詰まりなのです。

その手詰まりを解消するためには、問題に立ち向かう立ち位置を変更するしかありません。その一つの方法が、時間を変えることです。

問題が発生してから解決策を考えるのではなく、問題の発生時点まで遡って発生原因をつぶすのです。それが、先行対処です。

コンサルタントは、この方法の有効性を実例を通して理解しておく必要があります。その意味でも、この競合の促進策を勉強しておくことは有効です。

まとめ

  • 業務改革の本質は、当事者にとってWin-Winの解決策を実現することである。そうなって初めて、継続的な成果が得られる
  • たとえば調達業務の改革において重要なのは、相手(この場合は調達先)を対等な協働パートナーと捉えWin-Winの関係を構築することである。調達先の場合、従来格下の業者とみなしがちであったので、この見方の変革から得られる効果は大きい
  • 継続的に効果を上げるWin-Winの競合方式を見出すためには、相手(調達先)の不満に耳を傾ける必要がある
  • 調達先の不満を解消し長期的に効果を上げ続ける競合方式は、次の先行対処プロセスに基づいたものである
    1.  事前に競合ができる状態を作りだす
      • 競合メリットのある部品を作り込む
      • QCD能力の高い調達先セットを開拓する
    2. 設計が選んだ部品とそれに対応する調達先セットをもとに、公正で透明なプロセスで競合を実施する
  • コンサルタントはクライアントの問題解決の手詰まりを解消する商売である。この手詰まりを解消する有効な手段が「先行対処」であることを心得ておくべきである。