方法論型コンサルタントのための「買ってもらえる商品」の作り方


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方法論を作ったのに売れないのは「自分都合」だから

最近独立したコンサルタントのBさんが悩んでいました。

Bさんは立派な職業経験の持ち主です。その経験をコンサルティング方法論として体系化したのですが、思ったように売れないと言うのです。

若手コンサルタントのAさんは、別の悩みを抱えていました。

下請けから脱却しようとしていて、集客セミナーをやることを決心したのですが、今ひとつ自信が持てずに踏み切れないと言うのです。

ベテランコンサルタントのCさんが、この二人を見ていて、根っこの問題は共通だと言いました。さて、それは何なのでしょうか?

それは、「自分都合」で方法論を作っているということです。

そもそも、方法論とは何のためにあるのでしょうか?自分のコンサルティングの方法論を作るのは、どのコンサルタントにとっても大変な作業です。それでも労力をかけて作るのは、目的があるからのはずです。

その目的は何でしょうか?目的の候補となるのは、次の2つでしょう。

  1. 方法をもとに、引き受けたコンサルティングを自信を持って進められる
  2. 方法があることを示すことで、クライアントの信頼を獲得しやすくなり、成約率が上がる(「買ってもらえる」)

コンサルタントにとってどちらがより重要でしょうか?

どちらも重要ですよね?でも、独立コンサルタントはまずβを考えるべきだというのが、Cさんの意見です。

その理由は簡単です。クライアントと成約できなければ、どんなに立派なコンサルティングの進め方があっても役に立たないからです。

もう一つの理由は、βができれば、売るためのハッタリでない限りαも保証されるはずだからです。

つまり同じ方法論を作るのならαの視点ではなくβの視点で作れ、とCさんは言っているのです。

Cさんによれば、Bさんはαの視点で方法論を作ったために売れないのです。

Aさんの場合は、自信がないのは確固たる方法論がないからです。そして、その原因は、何を基準に方法論を作れば良いかが分からない(方法論の作り方の思想が分からない)からなのです。

実は、自分がクライアントにどういう価値を提供できるかから考えれば、Aさんは方法論を導出できるのです。以下、その道筋を考えてみましょう。

「買ってもらえる」方法論をつくる道筋

コンサルタントがクライアントに「買ってもらえる」ようになるためには、最初にいくつかのことを理解しておく必要があります。

まず最初は、コンサルティングは買ったあとかなりの時間が経たないと本当に価値があったかどうかが分からない信用財だということです。信用財の購入では、買い手は売り手であるコンサルタント自身の人物が信用できるかどうかで決定せざるを得ません。そして、その信用の手がかりがインサイトなのです。(信用財であるコンサルティングの営業は、「インサイトの提供」による尊敬獲得から始める

コンサルタントを信用したら、ようやく方法論を理解しようとする段階に入ります。クライアントが本当には方法論の内容を理解することはないのですが、自分の困り事が解決できそうだと何となくイメージできる必要があります。

そのためには、方法論はクライアント視点で設計される必要があります。つまり、製品ではなく商品である必要があるのです。

最後に、別にコンサルティングに限らず、人間はモノやサービスを買う決断は感情的に行います。ですから「欲しい!」と思わせる工夫が必要です。

そのために必要なことは、商品の見える化です。(コンサルティング営業で成功するためには、理詰めの方法ではなく感情トリガーの使い方を知っておく

つまり、買って得る方法論を作るためには、次のことをする必要があります。

  • クライアントに尊敬される方法論の思想(インサイト)を明確にする
  • 方法論をクライアント視点の商品として作る
  • 商品を「欲しい!」と思わせるために見える化する

以下、それぞれについて説明していきます。

なお、この内容は、独立コンサルタントはまず認知度向上:言い訳を断つ6段階コンテンツ・マーケティング で説明した次の段階の6.5、3にそれぞれ対応しています。

  1. 高単価を目指し自己発信することを決める
  2. 特化する
  3. 方法論を見える化する
  4. ターゲット・クライアント(だけ)に向けたメッセージを発信する
  5. ターゲット・クライアントの問題から「商品」を設計する
  6. インサイトを提示し尊敬される

方法論の思想(尊敬されるインサイト)を明確化する

信用財であるコンサルティングの営業は、「インサイトの提供」による尊敬獲得から始める で、インサイトについて次のように書きました。

  • コンサルタントがクライアントから心底尊敬されるのは、クライアントの考え違いに気づかせ、問題を解決に導く新しい見方を示した時である。これをインサイトと呼ぶ
  • インサイトの事例には、次のようなものがある。いずれも古い世界観を壊し新しい世界観に立つべきであることを示している
    • 製品中心の開発プロジェクトの中での部品購買 → 部品カテゴリ別の専門チームによる戦略的部品購買
    • 良い商品を扱っていることは店に入れば分かってもらえる → 専門品にこだわりのある顧客は店に入る前に買うかどうかを決めている

実は、インサイトの事例の2番目は、Cさんと相談して到達したAさんのものです。

Aさんは、流通業の経験者で、こだわりのある専門店チェーンを作るコンサルタントとして身を立てようとしています。

そこでCさんが、クライアントとなる普通の専門店チェーンの経営者と、Aさんが理想とするこだわりのある専門店チェーンの経営者との違いを表現するように求めました。

そう言われて初めて、Aさんは日頃から感じている違和感を意識化しました。それは、Aさんがこれまで契約したクライアントのものの考え方(世界観)と、以前お店のこだわりを売っていた時の自分自身の世界観の相違でした。

その相違を言語化したAさんの答えが、次のようなものだった訳です。

  • 普通の専門店チェーンの経営者の世界観:品揃えには自信がある。お客様にお店に入ってもらいさえすれば、そのことがわかってもらえ、商品が売れる。
  • こだわりのある専門店の経営者の世界観:お客様は当社のお店の良さをわかっていて、入店する前から当社で買うことを決めている

インサイトは、コンサルタントが経験上良く知っている「あるべき姿」と自分が目にしたクライアントの「現状」の対比から導かれ、コンサルタントの経験の豊富さを的確に示すものなのです。決して付け焼き刃では作れないので、自分の経験を棚卸して深く分析する作業が必要なのです。

Cさんは、これは非常に優れたインサイトだと評価しました。普通の専門店の経営者の思い違いをうまく捉えているからです。そして、この世界観の差がお店の運営方法の差にどのようにつながっているのかを明らかにする作業を求めました。

 方法論をクライアント視点の「商品」として作る

クライアントの尊敬を勝ち取るインサイトを提示できたら、次に検討すべきことは、インサイトに共感した経営者にどういう商品を提供するのかを明確にすることです。コンサルタントは問題を解決する商売ですから、どういう問題を解決し、その結果何が得られるのかを明示するのです。

このステップを飛ばして、いきなり詳細な方法論(解決方法)の説明に入るコンサルタントが多いようですが、問題に合意していない場合は、後になって経営者から「こんなつもりではなかった」という反論を受ける可能性がありますので要注意です。

ここで注意すべきことは、問題の範囲を自分都合で決めないことです。問題の定義は想定クライアントが気になっている範囲を網羅して行う必要があります。

 問題の明確化(=商品設計)の具体例

Aさんの場合の問題は、「普通の専門店(現状)」と「こだわり専門店(あるべき姿)」の違いです。これをクライアントが気になっている店舗運営の主要事項すべてについて記述すれば、商品となるのです。

Aさんに、店舗運営でのクライアントの関心事項は何かと聞くと、「店のコンセプト、店頭外観、売り場構成、品揃え、接客、など」だと答えが返ってきます。

Cさんの指示に従って、Aさんがそれらの各要素について「A. 普通の専門店」と「B. こだわり専門店」の違いを整理する作業を始めました。

この結果最初に得られたのが、図1の①です。

皆さんの印象はどうですか?少し驚かれたのではないでしょうか?これでは、「こだわり専門店」が何であるかの情報がほとんどなく、クライアントに方法論の価値を伝えられませんよね?

でも、経験豊富なCさんは特に驚いた様子もなく、「誰にやってもらっても、最初はこんなもの」と言っています。

この例が示しているのは、人は二つのことの違いを語るのに深く考えないとうことです。実は、このレベルに留まったままでHowの説明に移るため価値をうまく伝えられない方法論は数多いのです。

この対比の情報が少ない原因は、現状分析に否定形をつ書くと問題解決に行き詰まる で述べた現状記述に否定形を許すことにあります。否定形を許すと、あるべき姿と現状を「〜がある」、「〜がない」という空虚な対で書いてしまい、情報がゼロとなるのです。

さらに、否定形を許す原因は、事実を述べる代わりに自分の価値観で物事を判断した結果を書いてしまうことにあります。

ですから、CさんはAさんに「否定形は使うな。自分の価値観から判断をするのではなく、事実を記述せよ」と指示しました。

その結果得られたのが図1の②です。だいぶマシになりましたよね。普通の専門店とこだわり専門店の違いも見えてきました。

でも、まだ問題があります。これでは行動できないということです。

「コンセプトのディスプレイをせよ」と言われても、具体的に何をどうすればよいかがわかりませんよね?(でも、この具体性のない課題指摘のレベルに留まっている「方法論」と称されるものも、実は数多いのです。)

具体性がない原因は、「普通の専門店」と「こだわり専門店」を抽象レベルで考えているからです。ここから脱却する方法は、ペルソナを考えることです。

Aさんにそう指示すると、Aさんは「こだわり専門店」にも次のように何種類かあることに気づきました。

  1. 日常的に買う最寄り品で、特に購買の計画は立てていないが、お店が面白いのでその店に入ってしまう
  2. 季節的に買う商品の大枠は決めているが、商品そのものは決めておらず、接客が気に入っている店に行く
  3. ごくたまにしか買わないが、その店に置いてあるこだわりのあるブランドが気に入っているので、その店に様子を見に行く

そのうちの i. について違いを列挙すると、図1の③のようになりました。ここまでくると、「普通の専門店」と「こだわり専門店」の違いはかなり明確になります。

クライアントも、「普通の専門店」が自社の現状と合っているかどうか、「こだわり専門店」が自分の望むものかどうかの判断がつくようになります。

こうなって初めて、コンサルティングを「買う」という決断への一歩が踏み出されるのです。

変革点

方法論を「欲しい!」と思わせるために見える化する

自分が望むものが得られそうだと思ったクライアントが次に求めるのは、それが本当に得られることの実証です。

ここで初めて方法を提示する必要が生じます。ただし、クライアントがコンサルティングを「買う」ことを決断する感情に火をつけられれば良いので、必要以上に深掘りした情報を提供する必要はありません。

この時に必要なことは、初心者のための一から始めるコンサルティング方法論開発手順 で述べた次の3つの条件を満たすことでしょう。

  1. その方法に従えば自分の問題が解けそうだと確信できる
  2. 方法論の各ステップで、自分の考え方・意見が反映されていることを確認できる。あるいは反映されていなければ異論を唱える場が与えられる。従って、最終結果に到達した時にその内容に合意できる
  3. 方法論の中にコンサルタントのノウハウが埋め込まれていて、その方法論を使わない場合よりも迅速にかつ品質の高いアウトプットが得られそうだと感じられる

ここで、条件3について、Cさんが図1の③に関する一連の質問を始めました。

以下、その時のAさんとCさんの会話の流れを再掲します。

  • Cさん:「例えば、図1の③にある“店頭外観での季節のイベントに合わせてコントロールしたディスプレイ”は、どうすれば作れるの?」
  • Aさん:「まず、テーマごとの強化商品を決めます」
  • Cさん:「テーマって何?」
  • Aさん:「1年間の計画書があり、その中からその時期に取り組むテーマを選ぶのです」
  • Cさん:「その計画書って何?中身は何が書いてあるの?」
  • Aさん:「季節イベント表というもので、どの時期にどのようなイベント(催事など)があり、それに対しどう対応するかの方針が書いてあります」
  • Cさん:「誰が作るの?」
  • Aさん:「本社です」
  • Cさん:「ということは、本社に“季節イベント表を作る”と言うプロセスがあるんだね?それは後で調べよう。最初に戻って、テーマごとの強化商品を決めたら、次に何をするの?」
  • Aさん:「ディスプレイの構成を決めます」

このような会話をしていくうちに、図2のようなプロセスが得られました。この図は、長年こだわり専門店で仕事をしてきたAさんでないと語れない、Aさんのノウハウそのものです。

この中にAさんが知らなかったことは何もありません。ただ、Aさんはこの内容を顕在化すべきだということに気付けなかっただけなのです。

気がついてしまえば、あるいはCさんのような人の助けがあれば、このようにしてノウハウを顕在化させることができるのです。

ここで注意すべきことは、この顕在化作業は「“店頭外観で季節のイベントに合わせてコントロールしたディスプレイ”は、どうすれば作れるの?」という質問に答えるというゴールから出発しているということです。その答えに必要がないことはノウハウには一切書かれていないのです。

また、インサイトから出発しているので、方法論を「季節のイベント」などのクライアントの知りたいことに合った言葉遣いで説明することができます。

結果的に、クライアントが知りたいことだけが書かれているので、理解しやすいのです。

冒頭のαで述べたコンサルタントのための方法論には、コンサルタントの作業に必要な情報も書き込まれており、クライアントに分かりやすいものとはなりません。

「買ってもらえる」方法論の作成にあたっては、このようなクライアント視点でのノウハウの整理が必要なことに注意べきなのです。

あるべき姿ひな型

方法論が満たすべき条件の1、2については、次の図3のような常識的な問題解決手順を示せば理解が得られるでしょう。

すなわち、図3の手順と図2のノウハウを組み合わせて方法論として提示すれば良いのです。

方法論概略

クライアントに買ってもらうために考えるべきこと

さて、以上の検討から何が分かったでしょうか?また、ここから何を考えるべきでしょうか?

分かったことは、クライアント視点で考えれば「買ってもらえそうな」方法論が作れるということです。

ただし、条件があります。買ってくれるのは、インサイトに反応したクライアントだけだということです。しかし、そもそもインサイトに反応しない人は方法論に価値を認めないはずです。

インサイトを最初に提示し、それに反応した人にだけ方法論を説明した方が、時間が節約できてお互いのために良いと考えるべきでしょう。

次に検討すべきことは、上記の作業で抽出したノウハウを、契約前にどこまでクライアントに提示するのかということです。

結論から言うと、ノウハウの出し惜しみは避けるべきでしょう。出し惜しみしたために成約できないのでは、本末転倒です。

ノウハウを過剰に露出するとクライアントや同業者に盗られると心配する人が多いようですが、提示しただけで盗られてしまうようなものはノウハウと呼ぶに値しないと考えるべきでしょう。

例えば図2のプロセスは、確かにAさんの経験がないと抽出できないものかもしれません。しかし、これを説明してもらわなければ、Aさんに頼めば「季節ごとのディスプレイ」が実現できると確信できません。

このプロセスを説明した上で、赤字で示した季節イベント表の作り方や店舗プロセスを実行できる店長教育にこそAさんの真のノウハウがあると主張すべきでしょう。

このような真のノウハウは、経験者でないと実行できないものなので、真似される心配はないのが普通です。だからこそ、ノウハウはどんどん発信して契約につなげていくべきなのです。

まとめ

  • 方法論を作ったのに売れない、あるいは方法論が作れない、と悩んでいるコンサルタントが多いが、その原因は方法論をクライアント視点で作ろうとしていないことにあることが多い
  • ある程度経験を積んだコンサルタントが「買ってもらえる」方法論を作るためには、次の手順を踏むと良い
    1. クライアントに尊敬される方法論の思想(インサイト)を明確にする
    2. 方法論をクライアント視点の商品として作る
    3. 商品を「欲しい!」と思わせるために見える化する
  • インサイトは、自力ではあるべき姿に到達できないクライアントの世界観に対し感じる違和感から抽出する
  • コンサルタントにとっての商品設計は、インサイトに反応したクライアントが抱えている問題を定義することそのものである。すなわち、インサイトが示唆するクライアントの現状とあるべき姿の対をクライアントの関心事に沿って明確化すれば良い。この時、問題を自分都合で切り取るのではなく、クライアントの関心事を網羅するように心がける必要がある
  • 方法論に込めるべきコンサルタントのノウハウは、あるべき姿を詳細化することにより提示できる。この作業において、ノウハウの出し惜しみは避けるべきである