クライアントから評価される2段階構造のレポート・ライティング: 読みたいことがスラスラ読める構造+信頼できる構造


最新更新日

コンサルティング報告書を書かなければ単価は上がらない、リピートも取れない

コンサルタントなら、プロジェクトの最終結果を報告書(レポート)としてまとめてクライアントに提出すべきですよね?

そうしないと、クライアントは支払った金額に見合った成果を得られたかをチェックすることができないからです。成果を確認できなければ、リピートが来るはずもありません。

ところが、この報告書提出に様々な問題が発生しています。

一番レベルが低いのは、報告書を書かずに口頭で報告をすませるというものです。毎回の議論で使った資料はあるものの、それらの全体として何が達成されたかを記述した文書は存在しないというケースです。

このようなやり方は、中小企業診断士の間で広く見られるようです。最初に何をするかの契約書なしに、月1回クライアントを訪問して相談しながら問題を解決していく、請求金額は月単位で診断士の相場で決まる、というスタイルです。特に、公的資金が導入される場合にはこの方式が普通のようです。

この場合、契約書が存在しないのですから、当然約束した成果を達成したことを確認する報告書は必要がないというわけです。

これで何が困るでしょうか?「特に困ることはない」というのが私の周りの診断士の人たちの見解のようです。

でも、単価を上げようとすると問題が生じます。

同じ仕事で単価を上げるためには、より規模の大きい企業と付き合う必要があります。ところが、社内体制の整った中堅以上の企業は、費用対効果を社内の別部門でも確認できるようにするために、契約書と報告書を要求するからです。

これらの企業からリピートを取ろうとするのなら、予算執行権限を持つ意思決定者が短時間でその質の高さを判断できるようなレポートが書けることが必須です。

とうことで、ここからは一定規模以上の企業と付き合い単価の高い仕事をしたいコンサルタント向けのお話です。

レポートが書けないのは、読み手の読み方に応える構造があることを知らないから

次に来る問題は、報告書(以下、レポートと呼ぶ)をどう書いて良いかわからない、というものでしょう。でも、この状態では何も前に進みません。

コンサルタントなら、自分の何が悪いかわかるはずです。そうですね、自分の問題が定義されていないのです。

「どう書いて良いかわからない」というのは現状です。これだけでは、どこへ行けば良いかが示されていません。「あるべき姿」が定義されていないので、どちらの方向に進めば良いのかの見当がつかず、動くことができないのです。

ここでの「あるべき姿」は何でしょうか?それは、「クライアントに評価されるレポートが書けている」ということでしょう。

だとすれば、クライアントがレポートを評価するのはどういう時かを考えれば良いことになります。こうなれば簡単です。誰が考えても、次の条件が満たされれば良いことがわかります。

  1. 自分(クライアント)の困りごとが間違いなく認識されている
  2. その困りごとに対する解決策が示されている(あるいは、解決した)
  3. なぜその解決策で困りごとが解消するのかの筋道が示されていて納得できる

実は、この3条件はレポート・ライティングの基本を身につけていれば、容易に達成できるものなのです。

たとえば、旧版が12万部を突破してこの分野では異例のロングセラーとなり新版が出た 戸田山和久、「論文の教室 レポートから卒論まで」を見ると、第2章のタイトルが “論文には「問いと主張と論証」が必要だ” となっています。つまり、上記のクライアントの満足条件は、次の論文の3条件にそれぞれ該当しているのです。

  1. 論文には問いがある
    • 論文とは、「なぜ〜なのか」、「我々は〜すべきか」、「〜と〜の違いは何か」などといった明確な問いを立て、それを解決することを目指す文章
  2. 論文には主張がある
    • 問いがあるということは、問いに対する答えがあるということ。論文を書くために大切なのは、これが答えであるという自分の主張を自分の責任で言い切ること
  3. 論文には論証がある
    • 論文には、自分の答えを読み手に納得させる論証が必要。論証とは、自分の答えを論理的に支持する証拠を効果的に配列したもののこと

ここで、レポートとは論文の簡易形で、あらかじめ「問い」が与えられているものを指すことを知った上で、問い=問題、主張=解決策、論証=筋道、という当てはめをすれば良いのです。

この論文・レポートの3条件が理解できていれば、クライアントに信頼されるレポートはスラスラ書けるはずです。つまり、レポートが書けないのは、この3条件の意味を理解できていないからなのです。

ただし、もう一つ大事なことがあります。

論文を書く際には、上記の1から3のステップを順に踏んで考えるべきだということです。この順を意識していないと、次のような質の低い論文が出来上がるので、要注意です。

  • 問いから始めていないので、何を論じているのかわからない
  • 書き始めた時点で主張を決めていないので、いつまでもダラダラして終わらない
  • 問いと主張の関係が明確でないので、その2つの間の論証に関係のないことを書き、読み手を混乱させる

クライアントの信頼を獲得できるレポートの構造

このレポートの一般構造と順序を、コンサルティング報告書の目的、すなわちクライアントの信頼を獲得することに当てはめて、もう少し詳しく見ていきましょう。

(このとき注意しておくべきは、コンサルティングの実行もこの手順を踏むことが得策だということです。もちろん解決策は事前に完全にはわからないのですが、ある程度の仮説を立てそれを論証のなかで検証し、仮説が間違っていればそれを修正する、と言うサイクルを踏むのが望ましく、経験豊富なコンサルタントは実際にそのようにしています。)

問いを立てる: クライアントの問題を間違いなく理解していることを伝える

最初のステップは、問いを立てることです。そして、レポートの場合は、この問いはあらかじめ与えられています。

すなわち、コンサルティングのレポートでは、クライアントが抱えている問題そのものが問いとなります。

これが意味するのは、コンサルティングのレポートはクライアントの問題の確認から始めるべきだということです。

ここで確認すべきは、次のことです。

  • クライアントの問題、およびその問題を引き起こしている背景情報、またその問題解決が難しい理由が、クライアントが理解し同意する言葉で記述されている
  • クライアントがその問題をコンサルタントを雇うなどの手間暇かけても解決しなければならない理由(問題の重要性)が記述されている

このように分解して書かれると当たり前のように思えるかもしれませんが、この通りに実行することはそれほど容易ではありません。

この手順を丁寧に踏まずに、問いを立てずに(あるいは当初の問いとはかけ離れた)主張をする、すなわちクライアントの困りごとと関係がないことを解決策として提案する、などということが頻発しています。

この問題は、実はレポートを書くはるか前に発生しています。クライアントの困り事から外れた問題解決をする理由については、「手段から入るな!」という教訓を生かすには」などで議論したので、そちらを参照ください。

主張をする: 問題が解決し対価に見合っていることを確認する

次に、クライアントの問題の解決策を記述します。

この内容自身は次のステップの論証のサマリーのようなものですが、もう一つリピートが取れるかどうかを分ける、大事なことがあります。

  • So What? (だから?それで?) という質問に、きちんと答える。つまり、当初のクライアントの問題が本当に解けていることを確認する
  • 問題解決で得られた効果を確認する。すなわち、費用をかけてコンサルタントを雇うに値する価値が得られたことを示す
  • 与えられた問題の全てが一挙に解決することは稀なので、必ず解けずに残っている一部の問題が存在するはずであり、そのことに配慮する。すなわち、今回一部の問題に手を付けていないことが費用対効果上合理的な判断であることを合意し、残る問題をどうして解決していけば良いかの指針を示すことで、クライアントの信頼を獲得する

このようなことをして初めて、クライアントに信頼されリピートが来る可能性が高まるのです。

論証する: なぜ今まで問題が解けなかったのか、なぜ今回解けるのかを、筋道立てて説明する

問いと主張が決まったら、その間をつなぐ論証をすることになります。そのために必要な作業は、次のようなものです。

  • 大きな問題を一度に解くことは難しいので、必要があればそれを部分問題に分解する
  • 現状分析の結果、(それぞれの部分)問題で実際に起こっていることが判明した事象を記述する。ここで、クライアントの現状認識(その問題解決が難しい理由、など)が間違っていることが判明し解決の手がかりが得られるなどのことが起こるので、現状分析は丁寧に行っておく必要がある
  • 現状分析をもとに、問題(クライアントが困っている事象)とそれを引き起こしている事象の因果関係を分析し、根本原因を明確にする
  • 根本原因の解決策を見つけ、それが主張と繋がるものであることを確認する
  • さらに、その解決策を実行する実力がクライアントにあることを確認する。実行できないものは課題であり解決策の名には値しないのだが、このチェックを怠って課題指摘だけで役目を果たしたと勘違いするコンサルタントが多いので、要注意

以上の注意点を守ったとしても、次のような理由で質の高いレポートが得られないことが起こります。これらの現象からの脱却策については、次回以降に詳説します。

  • 論証ではなく意見を言う。その結果、解決策が事実や理論に裏付けされておらず有効でない
  • 論証を構造化しない(筋道がはっきりしない)ので、クライアントがなぜそれが問題の解決策になっているかの根拠を理解できない。その結果、解決策が実行されない

以上の論点をまとめると、コンサルティング・レポートは図のような構造であるべきことがわかります。

まとめ

  • 独立コンサルタントの中には、公的資金を使った診断士業務など業界慣習に慣れ、クライアント向け報告書を書かない人が一定数存在する。しかし、レベルの高い中堅企業をクライアントにして単価を上げようとするなら、それは自殺行為である。たとえ小さなクライアントに対してでも、レポートをきちんと書く習慣をつけ、大きなクライアントからの受注に備えておくべきである
  • 良いレポートが書けないのは、レポートには構造があることを知らないからである。レポートは論文の一種(あらかじめ問いが与えられたもの)であることを知っていれば、レポートを書くためには次の構造に従えば良いことがわかる
    • 問いを立てる
    • 主張をする
    • 論証する
  • コンサルティング・レポートにおける「問い」はクライアントの問題である。すなわち、コンサルティング・レポートはクライアントの問題の確認から始めるべきである
  • 主張すべきことは、解決策の提案である。ここで、問題が本当に解決していることおよびライアントがその問題を実行できることを確認する、残る問題の指針を示す、などのことを丁寧に行ない、クライアントの信頼を確保することでリピートにつなげる
  • 論証では、部分問題への分解、現状の丁寧な把握、因果関係分析を通した解決策の導出をわかりやすく行ない、その解決策が導出された過程をクライアントに理解できるようにする
  • 各ステップにはレポートの質を下げる次のような罠が潜んでいるので、それを避ける術を心得ておく(それらの罠の回避策は、次回以降で詳説する)
    • 問いを立てずに(あるいは当初の問いとはかけ離れた)主張をする、すなわちクライアントの困りごとと関係がないことを解決策として提案する
    • 論証ではなく意見を言う 。その結果、解決策が事実や理論に裏付けされておらず有効でない
    • 論証を構造化しない(筋道がはっきりしない)ので、クライアントがなぜそれが問題の解決策になっているかの根拠を理解できない。その結果、解決策が実行されない