クライアントに関する「悩みと解決策の2軸」が教えてくれるコンサルタント・キャリア形成法


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独立した若手コンサルタントの悩み: 追求すべきコンサルティングのタイプがわからない

コンサルティングはクライアントの問題を解決する商売です。こう言われると当たり前だと思いますよね?

でも、この言葉が意味することを噛み締めて理解しているでしょうか?すなわち、常にクライアントの視点で物事を見ているでしょうか?

周りの先輩がキャリア形成をガイドしてくれる機会が少ない独立コンサルタントにとっては、経験が少ないうちにこそ、この見方が自分の助けになるというお話をします。

独立してマーケティング・コンサルタントとして売り出そうとしているAさんが、先輩に相談しました。

  • Aさん: 「経営者の悩みを掘り下げる質問力を身に付けたいのですが、何かいい方法はありませんか?」
  • 先輩 : 「なぜ、そう思うの?」
  • Aさん: 「クライアント企業のために新しいブランド・コンセプトを作ったのですが、社長が本気でないんです。」

さて、今のAさんに必要なのは質問力なのでしょうか?それを身に付ける前に、自分のコンサルティング・プロセスを振り返って、どこから社長が本気でないのかを突き止めなくて良いのでしょうか?

別の製造業の独立コンサルタントBさんが、こう言いました。

  • 「自分は、製造現場の経験が無いので、下積みで5S指導の修行をしてきました。それなりの実績が上がってきたので、次の段階に進み、経営問題の解決支援もしていきたいと考えています。親しいクライアントとじっくり話せば、そのうちに解決策を見つけることはできます。でも、付き合いの浅いクライアントにどう話しかけて良いか分かりません。なかなか案件が増えず困っています。」

Bさんの悩みの根本原因は、何でしょうか?

実は、AさんとBさんの悩みの原因は、クライアントとの関係をどのように確立すべきかがわかっていないことにあります。ですから、クライアント・ビジネスの基本型を理解すれば、2人の悩みはかなり解決できるのです。

悩みと解決策の2軸で決まるクライアント・ビジネスの基本型:

コンサルティングに限らず、クライアントの悩み(イシューと呼びます)を解決するプロフェッショナル・サービスは多々あります。弁護士、会計士、医者などです。

これらのビジネスの特徴をクライアント視点から分類する方法があります。「悩み(イシュー)」と「解決策(ソリューション)」という2つのキーワードに着目するのです。

クライアント自身が自分の悩みを「分かっている」こともあれば「分かっていない」こともありますよね。

また、悩みの解決策が世の中で「知られている」場合と「知られていない」場合では、対処方法が大きく変わることも理解できると思います。

この2軸で考えると、次のようにクライアントの行動が変わることが見て取れます。

  1. クライアントが自分の「悩みを分かっていて」、世の中にその「解決策が知られている」のであれば、クライアントは解決策を勉強して自分で解決する可能性が高いです。また、人に解決を頼むにしても、効率をあげるためにアウトソースするような感覚ですので、それほど高い対価は払いません。たとえば、確定申告を税理士に代行してもらうのが、このケースに相当します。
  2. 「悩みが分かっている」けれど「解決策が知られていない」場合は、それを解決してくれそうな専門家を探します。相続や離婚で問題を抱えている人が弁護士に相談するような場合です。
  3. 自分では漠然とした不安を感じているが、「悩みがなんであるかは分からない」場合は、不安領域全般に知見があり「解決策を知っていそうな」専門家の診断を仰ぎます。体の具合が悪い時に医者にかかるケースです。ここで、弁護士と医者の違いは、弁護士がクライアントの悩みを質問し相談しながら解決策を見つけるのに対し、医者は症状を聞くことはあっても後は勝手に診断してしまうことです。
  4. 不安だけれど「悩みが分からない」、そして「解決策も世の中に知られていそうもない」時は、自分が信頼している人(アドバイザー)に相談します。不安領域がもう少しはっきりしていれば、法律関係であれば顧問弁護士に、体の具合であればかかりつけ医に相談します。

以上のケースをまとめると図①の左側のようになります。

これをコンサルティングの世界にマッピングすると、次のようになります。(図①の右側)

  1. 「悩みが分かって」いて、「解決策も知られている」世界を「パッケージ型」と呼びます。90年代前半にIBMがコンサルティングに乗り出した時、腕に覚えのある古参のSE(システムズ・エンジニア)がコンサルタントとして息を吹き返しました。ところが、数年するとその人たちがどんどん辞めていくという現象が起こりました。その人たちが得意だったのは、クライアントが合意形成できない状態をうまくまとめ上げるファシリテーションの技術だったのですが、そのうちにクライアントがそれを理解し、一般的なファシリテーションには価値を認めなくなったからです。現在では、クライアントは簡単なファシリテーションなら自分たちでやるか、あるいはファシリテーション業者の品揃え(パッケージ)の中から自分たちに合ったものを選んで発注するというわけです。
  2. 「悩みが分かっている」けれど「解決策が知られていない」場合は、クライアントはその問題を「解いてくれそうな」コンサルタントを選びます。ただし、クライアントは対価を払うわけですから、「解いてくれそうだ」と信頼する根拠が必要です。解決策が知られていないのにそこに到達できるのは、なんらかの到達方法を持っているからです。ということで、この領域を「方法論型」コンサルタントと呼びます。
  3. クライアントが「自分の悩みが分かっていない」のに、「解決策を知っている」と称する人に問題解決を依頼するのは、どういう時でしょうか?それは、相手が一定分野でかなりの成功実績を持っていて、その「先進事例」に学べば問題が解決できそうだと思う時です。工場の改善をトヨタ式改善コンサルタントに頼むケースが、これに該当します。
  4. 上記のいずれにも該当しない場合は、悩み(イシュー)自体の理解から始める高度なコンサルティングが必要です。これを「イシュー解決型」コンサルティングと呼びますが、高度なスキルを必要とする領域なので、後日別のところでお話することにします。

コンサルティング・ビジネス類型ごとの評価基準を理解したキャリア選択

さて、このコンサルティング・ビジネスの類型を理解したとして、AさんとBさんは、ここから自分の立ち位置をどう決めていけば良いでしょうか?

その手がかりは、これらの類型ごとのクライアントの評価基準を知ることにあります。その評価基準は図②であることが知られています。

上に述べたように、パッケージ・コンサルタントはあまり高い対価は得られません。それは、図②に示されるように、このタイプが評価されるのは、クライアントがよく理解している業務を高品質で効率的に実行することだけだからです。

また、イシュー解決型コンサルタントになるには、クライアントに信頼されていることが絶対条件で、それなりの経験と能力が必要です。

となると、コンサルタント初心者は2の方法論型コンサルタントか3の先進事例コンサルタントのどちらかから始めることになります。

まずAさんに図①の右側を見せ、自分がどこにいるかを聞くと、「自分も周りの人も、3をやっています」と答えました。

この答えを聞けば、上述の問題の発生原因がわかりますね?

先進事例型の評価基準は図②が示す通り、その分野の先進事例を豊富に知っており、先進事例とクライアントの現状のどこが一致していてどこが違っているか(Fit/Gap )を正確に指摘して、先進事例に追いつくために何をすれば良いかを示してくれることです。

Aさんがブランド・コンセプトの策定経験が豊富で、クライアントに合った先進事例を例示していれば、クライアントの社長も乗り気になったでしょう。でも、そこまでの経験はAさんにはありませんでした。それなのに、Aさんは医者のように一方的に処方箋を示したのです。

この場合、社長が乗り気になるのは、Aさんが持っているブランド・コンセプトの策定方法が納得できる場合です。社長がその方法に従って自分の考えをインプットしながら策定したのであれば、たとえAさんの経験が少なくても、結果に納得したでしょう。

また、なんらかの方法論を踏んでいるのなら、その各ステップで社長の合意を取ることができます。ですから、結果に乗り気でないとわかる前に、結果に辿りつく前のどこかのステップで異論を検知できていたでしょう。

経験が少ないAさんは、先進事例コンサルタントではなく、方法論コンサルタントとして行動すべきだったのです。

たとえ未熟でも、自分なりの方法論をなんとか作り上げ、それを適用して社長と合意を取りながら進めるべきだったのです。そうすれば、社長の不満をもとに自分の方法論の改善もできたでしょう。

Bさんは、工場で5Sの先生をやっており、クライアントが気づかない5S上の問題の指摘と解決をしています。クライアントは、Bさんに言われた通りに工場を改善するだけです。聞くまでもなく、Bさんは3に位置しています。

そのBさんが、次のステップに進もうとしている時に取るべき道は、5Sに次いでトヨタ式改善のような先進事例の知識を仕入れるか、方法論コンサルタントの道を取るかのいずれかです。

経営の支援をしようとするのなら、方法論コンサルタントの道を取るべきです。たとえば、事業計画の策定を支援するのであれば、“事業計画というものはこういうもので、効果的な運用ができるようにするためには、こういう手順で策定するのです”という説明ができる必要があります。

そうすれば、付き合いの浅いクライアントでも、Bさんの技量を判断することができます。ところが、Bさんは方法論の必要性が飲み込めず困っていたわけです。

これまでの議論でわかるように、経験の少ないコンサルタントが身を立てていくには、方法論コンサルタントを意識する必要があります。(先進事例型は経験を必要とするので、どこかの分野に特化する必要があり、それだけで食べていくことが難しいからです。)

たとえ小さくても良いから自分の強みが発揮でいる領域を見つけ、未熟でも良いから仮説ベースで方法論を策定するのです。そして、その適用経験(もちろん数多くの失敗を含む)を通して改善していく、という道を考えるべきでしょう。

そのようにして、一つの分野を確立して初めて、別の分野の方法論を確立する、あるいはより上位のスキルを必要とするイシュー型への転身を試みるなどのことを考えることができるようになるのです。

 まとめ

  • クライアントがコンサルティング・ビジネスに認める価値から見ると、このビジネスは4つの類型に分類できる(図①の右側)
  • 独立した経験の少ないコンサルタントのキャリア形成上の悩みは、この類型とそれぞれの評価基準を知らないために発生していることが多い
  • 若いコンサルタントは最初は方法論コンサルタントを目指すべきである。(先進事例コンサルタントは、豊富な経験がないとクライアントが信用しないので、それで身を立てるのは効率が悪い。イシュー型は高度なので、さらに経験と能力が問われる。)
  • 未熟で構わないから少しでも自分の強みを発揮できそうな領域を見極め、そこで方法論を策定する。それを実地に適用し、失敗体験を通して改善していくことにより、方法論を確立する、という成功体験を積むべきである。
  • その経験を通して、次の領域の方法論を確立する、あるいはイシュー型への転身を図る、という長期的なキャリア形成を展望すべきである。