顧客の購買プロセスに合わせたソリューション営業改革


最新更新日

なぜソリューション営業が求められるのか?

前回の記事で、営業改革の大きな流れは1対1の営業から多対多の営業への変革であると書きました。そしてその中心には、案件の性質の変革、すなわち商品・サービスを売ることから問題解決への支援への変革があると書きました。

では、なぜその変革が求められているのでしょうか?

この背景には次の2軸の変化があると言われています。

  • 商品・サービス側のコモディティ化が進み、単体では差別化が難しくなってきた
  • 顧客の業務が複雑化・高度化し、顧客が問題解決に苦労している

このために、従来の単体のプロダクト営業からの脱皮が求められています。顧客の問題を解決し、同時に自社の商品・サービスを組み合わせた高付加価値を提供すれば、Win-Winになれるというのです。

この考えはすでに広く受け入れられており、その是非を議論することはこの場の目的ではありません。ここでの検討事項は、以上のことを理解しただけでコンサルタントとしてソリューション営業を理解したことになるか、ということです。

コンサルタントは、クライアントの問題解決を支援する商売です。ここで支援すべきは、どうやってプロダクト営業からソリューション営業に移行するかです。この移行が簡単であれば、コンサルタントの出番はありません。

すなわち、コンサルタントの役割は、うまく移行できないクライアントが出会う戸惑い、躓きの原因を予見して、移行を成功させることです。それらを予見できるようになって初めて、その分野を理解したことになるのです。

プロダクト営業からソリューション営業への移行で、本質的に「何が変わり、その変化の何が難しいか」を理解する必要があるのです。

大きな変化は、次の2つです。

  • 案件が複雑化すると、一人の営業では対応できなくなる。したがって、複数の担当者がチームで行動できるようにするための情報の共有化の工夫が必要となる。
  • 従来は、顧客は自分の問題を理解しており、その解決策のパーツである商品・サービスを購入していたので、パーツの優位性を説明すればよかった。しかし、ソリューション営業では顧客の問題の定式化から始めなくてはならなくなる。

以下、これらの変化で何が難しいか、もう少し詳しく見ていきましょう。

顧客の購買プロセスに合わせる

マーケティングの大家のレヴィット教授が「消費は問題解決である」と言っています。つまり、顧客が何か商品・サービスを購入するのは、自分の問題解決をするためなのです。

したがって、プロダクト営業の場合でも、顧客は何らかの問題解決のプロセスに従って行動しています。このプロセスは、ソリューションの購買に当たっても大きく変わることはありません。

さらに、企業として問題の解決策を外部から購入するわけですから、購買意思決定を承認するための正式な承認プロセスを確立しているはずです。

しかし、プロダクト営業で販売している場合は、このプロセスは担当営業の頭の中にだけ存在することが普通です。ソリューション営業に変化し、複雑な案件にチームで対応する場合には、この暗黙知を形式知化し、そのプロセスに合わせて行動できるようにする必要があるのです。(図①)

さらに、チームとしての共同作業を可能にするためには、単に顧客の購買プロセスを理解するだけでなく、それに対応した自社の提案プロセスを標準化する必要があります。誰がどの段階でどういう役割を果たすのか、次の段階へはどういう基準を満たしたときに移行するかを合意し、進捗管理ができるようにする必要があります。

すなわち、ソリューション営業に関する共通言語の確立が必要なのです。(図②)

御用聞き営業とソリューション営業の違い

上述のように、ソリューション営業では顧客の問題の定式化から始める必要があります。この意味することを本当に理解するために、一つの例を検討してみましょう。

以下に示す手順は、コンサルティング会社で学んだ「相手に響く」提案書の書き方 からとったものなので、顧客の問題に沿った常識的な提案書作成方法とみなしてよいと思われます。Step1で問題の定式化をし、Step2で解決策を検討しているという訳です。

  • Step1:「お客様のご要望」を書き出す
  • Step2:「要望を解決するための施策」を書き出す
  • Step3:「弊社の提供する解決策・商品・サービス」を書き出す
  • Step4:「スケジュール・体制・予算」を書き出す
  • Step5:「留意事項」を書き出す
  • Step6:  目次を書いて、清書する

問題は、これで本当にソリューション提案ができるかということです。

実は、この手順が上手く働くために暗黙に想定されていることがあります。次の2つです。

  • 「お客様のご要望」を聞くことで問題が定式化できる
  • 「お客様のご要望」に合わせた「弊社の提供する解決策・商品・サービス」が見つけられる

この想定は本当に成立するでしょうか?そこには、次の2つの問題があることが理解できるでしょう。

  1. 顧客が自分の問題を語れる程度の複雑さなら、競合会社も対応でき、差別化には繋がらない
  2. 顧客の要望を受け身で聞くのでは、自社の強みに繋がらない案件も入り込み、営業効率が下がる

ソリューション営業で本当に考えなくてはならないのは、なぜ顧客が自分で問題を解決できないのかということです。そして、その理由としては、次のアインシュタインの言が参考になります。

  • 我々の直面する重要な問題は、その問題をつくったときと同じ思考のレベルでは解決できない」(アルベルト・アインシュタイン)

つまり、顧客が自分で問題解決できないときには、当人の思考レベルでは、そもそも問題を的確に表現できないと考えるべきなのです。それに対して違う視点を提供し、その視点に立てば問題が把握でき、さらに解決の方向性も見えてくることを指摘すべきなのです。(図③)

そうやって初めて差別化ができ、高付加価値が実現できると考えるべきなのです。

このことは、顧客へのソリューション提案は自社の得意領域だけに絞るべきことを意味します。まず何でも良いから「お客様の要望を聞く」という立ち位置では、顧客が気づけずにいる視点で問題解決の方向を指し示すことはできません。

御用聞き営業は避けるべきなのです。得意分野に絞れば、自然に1や2の問題は避けられるのです。

以上に述べた内容が全て分かって初めて、コンサルタントとしてのソリューション営業の理解ができたことになるのです。

ソリューション営業プロセス