インサイト・マーケティング:注目と信頼を獲得する集客方法 「変革点⑤ (続き)(信頼獲得に至る4段階:その4)」


Last Updated on 2021年9月6日 by 時代遅れコンサルタント

変革点⑤の信頼獲得について、かなり長く書いてきました。今回がその大詰め(二部構成)の後半です。市場での希少資源である注目と信頼の双方を獲得しつつ集客する方法について説明します。

前回D.マイスター他著、「プロフェッショナル・アドバイザー」に書かれている、プロフェッショナル・アドバイザーが5つのステージを踏んでクライアントの信頼を獲得する方法について説明しました。さらにそのステップが、その前に述べた注目を獲得する方法に対応していることを示しました。このことから、注目と信頼を同時に獲得しながら集客やセールスを行う方法がありそうだという見当がつきます。

それが「チャレンジャー・セールス・モデル」という本に書かれていることですが、その前に、この本が書かれた背景を共有しておきましょう。

B2B営業の世界では、顧客の複雑化する要求を満たすためには、自社の商品・サービスの利点を強調するだけのプロダクト営業では不十分だということが認識されてきています。そうではなく、顧客の問題そのものを理解し、その解決策を講じた上で、その中に自社の商品・サービスを位置付けるソリューション営業をすべきだという考えが、台頭して久しくなっています。

ところが、昨今では、このソリューション営業そのものの効果にも疑問がもたれるようになってきています。意思決定に大勢のコンセンサスを得る必要がある、カスタマイズをしなければならない、など顧客側と営業双方の負担が無視できなくなってきたのです。

そこに加えて、2009年のリーマン・ショックによる不況で、物が売れなくなってしまい、全世界の営業が苦境に喘いでいました。ところが、その中で不思議なことが起こっていました。不況にもかかわらず好成績を上げ続けている一群の営業がいたのです。

この本の著者たちは、その理由を探るための大規模な調査を行いました。営業を次の5つのタイプに分け、そのどれが最も成功しているかの調査をしたのです。

  1. ハードワーカー(勤勉タイプ、21%): 常にもうひと頑張りする、簡単には諦めない、自発的、フィードバックと能力開発に関心が高い
  2. チャレンジャー(論客タイプ、27%): 常に違った見方をする、顧客のビジネスを理解している、議論付き、顧客に強引に働きかける
  3. リレーションシップ・ビルダー(関係構築タイプ、21%): 顧客の組織に強力な賛同者を作る、他人を助けるのを厭わない、誰とでもうまくやれる
  4. ローンウルフ(一匹狼タイプ、18%): 自分の直感に従う、自信家、管理しにくい、
  5. リアクティブ・プロブレムソルバー(受動的な問題解決タイプ、14%): 内外のステークホルダーへの対応が信頼できる、全ての問題を解決する、細部に気を配る

結論として得られたのは、予想外のことでした。最も高い営業成績を挙げていたのは、当初予想のリレーションシップ・ビルダーではなく、チャレンジャーだったのです。そして、調査した44の属性のうちの6つで、チャレンジャーが特徴付けられることが統計的にわかりました。

  • 顧客に独自の視点を提供する
  • 双方向コミュニケーションのスキルに優れている
  • 顧客のバリュ・ドライバー(価値向上要因)を心得ている
  • 顧客のビジネスの経済ドライバー(業績促進要因)を特定できる
  • お金の話をいとわない
  • 顧客にプレッシャーをかけることができる

どうでしょうか?営業とはいうものの、プロフェッショナル・アドバイザーと同じ特質を備えていることが分かりますよね?

この調査結果を受けて、営業としてはチャレンジャータイプを養成すべきであるとして、その営業プロセスを分析しました。それを整理したものが次のプロセスです。

  1. 地ならし: 顧客の関心を読み、共感を示すことで信頼を築く。相手の世界をわかっていることを示す
  2. リフレーム:認識されてない問題、ニーズ、仮説を、想定外の視点から示す
  3. 理詰めで焦らせる: 問題の大きさに気づかせ、顧客の当事者意識を徐々に高める
  4. 感情に火を点ける: 問題を自分の個人的な仕事の流れの中で認識させ、感情的な切実感を抱かせる
  5. 新しい価値の提示: 自分の提供価値にそれとなく結びついた問題解決の新しい枠組みを示す
  6. ソリューションの提案: 主な指導ポイントに関わる提供サービス一覧を示し、実行への手順を強調する

これを見ると、マイスターたちの信頼獲得ステージと非常によく似ていることが分かります。②で顧客が気づいていない新たな世界観を提示し(これをこの本ではインサイトと読んでいます)、③、④を通してそれを共有して信頼獲得を狙っているのです。

以前の説明で、信用財を売る時には売り手が信頼されることが非常に重要であると述べました。その信用財の一つとして生命保険があります。その生命保険の場合でインサイトの具体例を示しましょう。

近年生命保険も、営業が困難になってきています。保険代理店は、売る前に信頼を獲得する手段として既存顧客からの紹介を使ってきたのですが、これが次の理由により難しくなってきたからです。

  • 人間関係が希薄になり、紹介してもらった潜在顧客を訪問しても居留守を使われる
  • リテラシーの高い積極的な顧客は「ほけんの代理店」などの大手に、自分で出向く
  • 利率低下、世の中の安定などで、保険商品そのものの魅力が低下している

ところが、よく調べてみるとこの中でもずば抜けて成約率が高い代理店が見られます。これらの代理店は、ターゲット顧客を定め、それに向けた次のようなインサイトを用意しているからです。

  • 消防署員などのリスクの高く保険料が高いと思い込んでいる人向けに、工夫すればそれほど保険料が高くない保険が作れることを示す
  • ベンシャー・ビジネス経営者で福利厚生が用意できず採用に苦しんでいる人向けに、福利厚生サービス付きの法人用保険が存在することを示す

実は私のゼミでもやっていることですが、コンサルティングなどのプロフェッショナル・サービスでも、同様の発想でターゲット顧客を絞れば、顧客が解決法がないと思い込んでいる問題に実は解決方法があると、インサイトを示すことができます。以前に述べた「鉄骨部品メーカーの下請け脱出法」や「食品メーカーの食のセレクトショップへの営業方法」が、その例です。

このインサイト・セールスを、集客セミナーと比較して見ると、①がフレーミング、②、③、④が破壊、⑤、⑥が報酬に対応していることが分かります。フレーミング、破壊、報酬の3段階構造の集客セミナーの詳細化版ともなっていることがよくわかると思います。

すなわち、プロフェッショナル・サービスの提供を志す人は、インサイト・セールスのプロセスに則って集客セミナーのコンテンツを準備しておけば、セミナーで市場の希少資源である注目と信頼を同時に獲得できる可能性が大きくなることが分かります。まさにこれこそが、皆さんが心得ておくべき集客用コンテンツ作成の雛形なのです。

これで長かった注目と信頼の獲得方法の部分が終わり、次はいかに集客・サービス提供行動を実践していくか、その工夫について説明することにします。