プロフェッショナル・サービスにおける信頼構築プロセス 「変革点⑤ (続き)(信頼獲得に至る4段階:その4)」


Last Updated on 2021年9月1日 by 時代遅れコンサルタント

変革点⑤のについて、かなり長く書いてきましたが、いよいよ信頼獲得の大詰め(二部構成)です。今回の第一部で、コンサルティングなどのプロフェッショナル・サービスにおいてクライアントの信頼をどのようにして獲得していくかについて説明し、次回で注目と信頼という希少資源の双方を獲得しつつ集客する方法について説明します。

さて、前回までで市場が要求する信頼の意味をしっかり理解できたら、次にやるべきことはクライアントの信頼を獲得する方法を身につけることです。コンサルティングなどのプロフェッショナル・サービスでは、このことが特に重要です。なぜなら、問題の解決策などアドバイザーが提供するものが本当に正しいかどうか、クライアントが見極めるのは非常に困難だからです。この辺の事情を、マイケル・マッツェオ他「道端の経営学」が、明解に説明しています。

この本では、人が購入する財には次の3種類があり、そのタイプ別に顧客の購買行動が変わるとしています。

  1. 探索財: 購入前の情報収集によって、ある程度までは品質を判断できる商品やサービス(葬儀サービスなど)を指す。ただし、調査のためには手間や時間がかかる。
  2. 経験財: 購入前の情報収集では品質の判断が難しく、購入し消費して初めて品質を確認できる商品(ゲームなど)やサービスを指す。経験財の場合、消費者の選択に大きな影響を与える要素は評判である。過去にその企業から商品を買った自分自身の経験や、他の顧客や第三者の推薦に基づいた評判が、消費行動を左右する口コミの世界である。
  3. 信用財: 購入して消費したあとでもなお、品質の判断が難しいか、少なくとも長期にわたって品質が確かめられない商品やサービス(年金の積立や地下の防水工事、大学教育など)を指す。信用財のブランドは、信頼性や確実性を基盤に築かれる。

つまり、プロフェッショナル・サービスが購入対象である時は、それらは保険と同じ信用財であるため、商品・サービスではなく売り手自身を信頼するしか購入決定の手掛かりはないというのです。

つまり、コンサルタントたちの世界では、経験の蓄積に基づいた言動でクライアントに信頼されない限り、契約を取ることはできないことが知られているのです。コンサルタントたちが集客しようとするのなら。それ以前に何よりも本業のアドバイスで信頼する方法を心得ておく必要があるわけです。ですから、この世界には信頼構築のためのノウハウが大量に溜まっているはずなのです。

ところが、この面での信頼獲得ノウハウは個人やファームの内部にとどまっており、以心伝心で伝えられており、あまり公に議論されることがありません。この内容を正面から議論した本も殆ど見られません。

その数少ない本で非常に役に立つのが、前回紹介したD.マイスター他著、「プロフェッショナル・アドバイザー」です。この本の著者たちは、プロフェッショナルがクライアントに信頼される方法を、セミナーやコンサルティングを通して長年教えてきた業界のベテラン揃いで、その含蓄に富んだ知見は傾聴に値します。

この本には、信頼を発展させるためには次の5つのステージを辿るべきだと書かれています。

  1. エンゲージメント: クライアントが問題を相談する気になる
  2. 傾聴: クライアントが、アドバイザーが自分のことを理解していると確信する
  3. フレーミング: クライアントがアドバイザーが付加する価値に気づく
  4. ビジョン策定: クライアントが具体化された将来像に乗り気になる
  5. コミットメント: クライアントがビジョンを遂行する上で必要なことを理解し、実施する決意をしている

数えい

この手順を次回の内容のために最小限の説明をすると、次のようになります。

まず、1.と 2.の最初の部分で、クライアントが気になっている問題を理解していることを伝え、クライアントに気持ちに寄り添って一緒に問題を解決しようとしていること、そして問題解決を助けるだけの力量と経験があることを伝え打ち解けさせるのです。すなわち、クライアントを次の状態にさせます。

  • 確かに、ここに話す価値のある問題がある
  • この人は、その問題を相談する価値がある
  • この人は私のことを理解していると確信できる

ここで、エンゲージメントでは、受け身のヒアリングでクライアントの時間を無駄に使うのではなく、先に動いてテーマを提起することを躊躇ってはいけないと説いています。また傾聴も、理性的に聞くだけでなく、感情面にも配慮すべきです。

それができたら、3.に移るのですが、ここで注意すべきはこの本の「フレーミング」と注目トリガーで述べたフレーミングは、意味が違うということです。この本で述べられているのは、クライアントの複雑な問題(や感情)を考える上での新鮮な方法および見識を示し、客観的な方法で具体化しまとめ、感心させることです。クライアントのモヤモヤした状況に新たな見方を提示し、クライアントの頭をスッキリさせるので、むしろ「リフレーミング」と呼んだ方がしっくりくるでしょう。前回の信頼理論との関係で言えば、ここで価値観の共有をし、信頼関係を一挙に高めるのです。

次のビジョン策定は、リフレーミングによって可能性が出てきたいくつかの将来像の中から、特定のビジョンを(共同で)具体化して、選択します。(次のコミットメントは、クライアントの決意を促すものなので、セールスとはフェーズが異なるので詳細説明は省略します)

この一連のステージが優れているのは、各ステージの合格基準は、あくまでもクライアントが判断するものであって、それぞれのステージで以下の状態が達成されねばならないと書かれていることです。

  1. この人とその問題を話す価値がある
  2. 私はちゃんと聞いてもらえ、理解されている
  3. そう、まさにそれがここでの問題だ
  4. それを本当に達成できるかな?その結果は面白そうだ
  5. 同意します。やるべきことはわかりました。一緒にやりましょう

クライアントが各ステージでこのような気持ちになって初めて、プロフェッショナルに対する信頼度が向上していき、ついにはその判断に自分を任せる気持ちになるというのです。

これを前回の注目トリガーに当てはめてみると、面白いことがわかります。1.と2.でやっていることは、ずばりフレーミングです。そして、3のステップは破壊トリガーに対応しています。さらに、4.が報酬に相当します。つまり、

このような対応を意識的に活用していけば、上記のステップを踏むことにより、注目されながら信頼を獲得することが可能となるということなのです!

そして、この発見を応用したセールスのプロセスが存在します。それが、この変革点の最終として次回ご紹介する、チャレンジャー・セールス・プロセスです。