レインメーカ―システムで、プロフェッショナル・サービス(信用財)を時間をかけて売る 「変革点⑥  市場での顧客獲得: 狩猟民族 → 農耕民族」


Last Updated on 2021年9月14日 by 時代遅れコンサルタント

前回までで市場での希少資源である注目と信頼を獲得するために知っておくべき原理について説明しましたので、今日からは、その原理を実際に適用してプロフェッショナル・サービスの顧客を獲得するにはどうするかの話に移ります。

最初に肝に銘じるべきは、すごく当たり前で簡単なことです。それは、「顧客はすぐには獲得できない。時間がかかる」という冷厳な事実です。ところが、現実はこの簡単なことが理解できず焦って顧客獲得に走り回り、「せいては事を仕損じる」を地でいき、時間を浪費している人が殆どなのです。

先に述べたように、プロフェッショナル・サービスは信用財です。サービスを売る前にまず自分自信が信頼される必要があるのです。それが意味することは、そもそもセールスには時間がかかり、手間暇をかけて売るものなのだ、ということです。ですから、独立前に時間をかけて信頼獲得の準備していく、独立後も潜在顧客資産を徐々に構築する、などの農耕民族的な覚悟が必要なのです。

では、どうやって顧客を獲得していけば良いのでしょうか?プロフェッショナル・サービスの業界では、それの方法を示唆する言葉があります。それは、「レインメーカー」です。読んで字の如く雨降らし人、皆が客を獲得できないで日照りで困っている時に、雨を降らして顧客をとってくる人を指していて、元々はアメリカの法律事務所で生まれた言葉です。

このレインメーカーになる秘訣を書いた本があります。Ford Harding, “Creating Rainmakers” です。(残念ながら、邦訳はありません。)そして、この本には、当たり前のこと(だけど多くの人が腹に落としていないこと)が書いてあります。レインメーカーになるには、当たり前のこと「セールスの前にマーケティングに時間をかける」ために、3つのことを地道にやるしかないことを教えてくれています。

その3つとは、以下のことです。

  • 親和性ネットワーク (Affinity Network)
  • 楽観主義
  • システム

これらを簡単に説明しましょう。

まず親和性ネットワークですが、これは顧客になりそうな(顧客と親和性の高い)潜在顧客のネットワークを構築すべきだということです。そして、この本では親和性ネットワークを構築するためには、次の6つの原則を愚直に実行すべきだと、説いています。

  1. 投資の原則:知っている人の数が多くなればなるほど、ビジネス機会の数も増える、幾何級数が線形を超えるところまで投資しないとネットワーク効果は出ない
  2. 親和性の原則:同じビジネス上の関心事を抱いている人のネットワークの方が、フォーカスのないネットワークより大きなリターンを生む、効率的に知り合うためにはターゲティングが重要
  3. マインドシェアの原則:あなたのビジネス・コンタクトがあなたが解決できる問題に接した時に、クライアントの頭の中にあなたの顔が思い浮かばなければならない(そうすれば紹介してくれる)、だから、ポジショニング、Thought Leadership、および頻繁なコンタクトが必要
  4. ナンバー・ゲーム原則:少数の案件を獲得するためには数多くの機会を追いかけなければならない。十分に追いかければ、それだけ獲得チャンスが高くなる
  5. 時間配分の原則:セリングは、あなたがそのための時間を作らなければ決して起こらない
  6. 蓄積の原則:既存のクライアントの関係を維持し、かつ新規クライアントを追加できれば、どちらか一方に専念するよりはるかに迅速にビジネスが成長する

これらの原則は、どれも常識的なことに感じられますが、著者はこの全てを実行することが非凡な結果を生むと論じています。

次に楽観主義が重要な理由ですが、これはビジネス獲得には思わぬことや失敗がつきものなので、楽観的でないとやっていけないということを意味しています。楽観的か悲観的かは生来的な性格だと考える人が多いですが、実は楽観性は後天的に技術として身につけることができるので、マーティン・セリグマン、「オプティミストはなぜ成功するか」などを読んで、勉強しておくべきでしょう。

最後のシステムですが、これは殆どの人がマーケティングに失敗する最大の理由が、「時間がない!」という言い訳をすることにあるという事実と関係しています。マーケティング活動を日常のルーチンとしてシステム化して、その実行計画をカレンダーに組み込み、言い訳ができなくするべきなのです。

システム化には、次のような効用があります。

  • 6つの原則で示された種々のアクティビティを統合した全体を作れば、次に何をすべきかなどに迷わなくて済み、その仕事に要する時間は少なくて済む
  • 行為に一貫性が伴うので、ちょっとした時間でもうまく使うことができ、結果を蓄積できる
  • 一貫して実施していれば、だんだん上手になり品質が向上する
  • 一番弱いところを補強することにより、全体のパフォーマンスを向上させられる

そして、その副次効果として、システムを対象化して淡々と実行すれば良いので、顧客獲得が進まなければシステムを改善すれば良いだけとなり、自分が無能だと思わなくて済みます。実は、落ち込みを避けるこの副次効果が非常に大きいのです。(私も、自分のビジネスはこのシステムでやっています。システム化して、随分気が楽になり落ち込まなくなりました。)

この顧客開発システムは、図に示すように以下のステップから成ります。

  1. ターゲティング
    • 見込み客(利益の上がるクライアントになるという合理的な可能性がある)を選びコンタクトする方法を確立することで、限られたマーケティング時間を有効に使えるようにする
  2. リード・ジェエレーション
    • ターゲットとした人々と対面で会えるようにするためのメカニズムを作る
  3. セリング
    • 見込み客をクライアントに転換する(自分を雇わせる)
  4. 遂行
    • 契約を遂行する
    • 永年にわたる関係を構築する
    • 良い見込み客と悪い見込み客を区別する基準を獲得する
    • 将来の仕事を獲得するために、良い仕事で評判を得る

どうでしょうか?こう見てみれば、顧客獲得とは当たり前のことを積み重ねることであると分かりますよね?そうなると、むしろ問題は、「なぜこの当たり前のことができないのか?」にあります。この解決のためには、物事の考え方を次のよう改める(アンラーニングする)必要があるのです。に4.の遂行についてお話しします。(各ステップの詳細実現方法の議論には、ここでは立ち入りません。)

  1. マーケティングは複合技で込み入っているので、いつ何をどうすべきかが分からなくなる → システム化で解決する
  2. 結果が出るまでに時間がかかり、めげる → 結果は追わない。プロセス指向でシステムの実行に集中していればいつかは結果が出ると考える
  3. 実行が大変そう → とにかくできるところからすぐやる。残りは走りながら作る、リーン
  4. 顧客がこない → ピボット、キャズム Whole Product
  5. 顧客獲得セミナーなどをやっても受けない → 理性的に過ぎるので、感情面を考え返報性、ストーリーなどのテクニックを身につける
  6. そうは言ってもめげる → 同じ状況の仲間のコミュニティを作り、励まし合う

A)とB)は、システム化で解決できますし、F)は別種の話題です。と言うことで、次回以降は4.の遂行についてお話しした後、C)からE)について説明します。