コンサルタントが下請けから脱却するための「選択と集中」


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アドバイスを生かす時間がない

Cさんは独立して数年目になる若手コンサルタントです。ある大手企業勤務を経て、コンサルティング経験がないままいきなり独立しました。そのため、コンサルティング経験を積もうと、コンサルティング事務所の下請けをしてきました。

そのCさんが、そろそろ下請けから脱却して自分で仕事を取りたいと、先輩のDさんにアドバイスを求めました。DさんはCさんの真面目な人柄を買っていたので、定期的にメンタリングをすることを引き受けました。

最初の3ヶ月くらいは、目の前の案件の個別相談に乗って過ごしていたのですが、画期的な進捗はありませんでした。ところが、ある時Cさんが次のような質問をしてきました。

Cさん: 「先輩、この前お話しされたポートフォリを分析ですが、あれって私にも適用できるでしょうか?私は忙しくて、せっかくの先輩のアドバイスを生かして自分に投資をとる時間が作れないのですが、あれと同じかなと思っているのです。」

割に合わないことをやめた成功事例

実は、その前の月にDさんは、自分の過去の成功体験について語っていたのでした。その内容は、次の通りです。

電子部品製造企業E社のある事業部が潰れかかっていました。主要顧客からの次次年度の受注がほぼゼロになったためです。その理由は、顧客から引き合いのあった部品の試作品を設計してテストする時間が競合企業より長くかかってしまい、商談に負けるからです。

Dさんは製造業に詳しいので、この原因はE社固有のものでなく、どの製造業にも共通するものであることを知っていました。それは、設計者の開発キャパシティをはるかに上回る開発プロジェクトを手がけているということです。

皆さんも、掛け持ちをすると一つ一つのプロジェクトを終了するまでの期間が長くなることを経験的に知っていますよね?E社は競合他社より小さいので、ちょっとプロジェクトが増えただけで、試作終了までの時間が他社より延びてしまうのです。

Dさんは、市場の伸びが見込めない商品や競争力が弱い商品を手がけるのをやめて、開発の余裕を持たせることを進言しました。どうせ商談に負けるのなら試作に時間を使うのは全くの無駄なので、それくらいなら勝てる可能性のある商品に絞ったほうが投資効率が高まる、というのが進言の根拠です。

営業の反発などいろいろな問題が予想されたのですが、結局商品を絞ることにより受注率が大幅に向上し、社長に激賞されました。

Cさんは、同じことが自分のも当てはまるのではないかと思ったのです。

Dさんは、Cさんの発言を非常に喜びました。Cさんが自分の頭で進捗のない状況を突破する方法を考え始めたからですし、状況も非常に似ているからです。

 全体を描くと問題が見えてくる

DさんはCさんにポートフォリオ分析のやり方を教え、自分の現在の仕事をマッピングさせました。その結果が次の図です。◯の一つ一つが、Cさんが今手がけている仕事を表しています。

ポートフォリオ分析前

ここで、市場の魅力度が高く自分の競合優位性が高い仕事は、当然続けるという選択をします。その逆に、市場として魅力的ではなく自分が競合に勝てそうもない仕事は、やめて時間を浮かすのです。こうすれば、自分に投資する時間が生まれます。

市場の魅力度や自分の競合優位性の定義を厳密にする必要はありません。それらの軸の評価基準をCさんが直感的に決めてしまっても、何を捨てるべきなのかを明確に判断できれば、それで良いのです。

この表をしばらく眺めてから、Cさんが話し始めました。

Cさん: 「確かにこう並べてみると、仕事が多すぎるますね。これでは、すべてに手が回らず、仕事の品質が上がらないことがわかります。今までは個々のことしか見てこなかったのですが、各論の前に全体を見て、こなせるかどうかを判断すべきですね。」

Dさんが、その原因を問いかけます。

 人付き合い重視だから忙しくなる

Dさん: 「なぜ、この図を書くまで仕事が多すぎると気づかなかったの?」

Cさん: 「そもそも、仕事が多すぎるという発想がありませんでした。せっかく人からいただいた仕事なので、それを断るなんてできません。一生懸命こなして仕事をくれた人に評価されることが重要だ、としか考えていませんでした。」

Dさん: 「それこそ、あなたが抜け出したいと思っている下請けの発想そのものだよね? “何の”仕事をするのかではなく“誰の”仕事をするのかに目が向いているのだからね。」

Cさん: 「なるほど!自分自身の下請け的発想に気づかなければ、下請けから抜けだせないということですね!」

さらにDさんが続けます。

 自前と下請けでは重要度が違う

Dさん: 「今やっていることは、Cさんから見てほとんど重要なんだね?本当に重要なことばかりやっていてそれで手一杯なら、それが理想形で何も変える必要はないんじゃない?なぜ、僕に相談してくるの?」

Cさん: 「でも、今の状態を続けていくのでは将来が不安です。」

Dさん: 「ということは、将来の自分のあるべき姿から見れば、重要でない仕事があるということだね。それはどれかな?」

Cさん: 「たとえば、①の公共機関での零細企業向けセミナーです。誰でもできるので、自分に競争優位性があるわけでもないですから。」

Dさん: 「なぜ、それが今の図では重要だとなっているの?」

Cさん: 「その仕事は、Fさんの紹介で来たもので、断るとFさんとの関係が損なわれかねないからです。」

Dさん: 「それは本当?その仕事はコンサルタントの初心者が手始めに手がける内容だから、代わりにやる人が一杯いるでしょう?そんな仕事を断ってもFさんだって何とも思わないだろうから、重要度は下がるのでは?それに、市場の魅力度とFさんとの関係は別次元で検討すべきものだよね。」

Cさん: 「確かにそうかもしれません。」

さらに会話は続きます。

Dさん: 「それに、あなたは中堅企業相手に仕事をしていくつもりなんだよね?零細企業は自己資金が不足しているから、補助金を取ってコンサルタント費用に充てるんだよね?あなたの戦略は補助金狙いなの?」

Cさん: 「いえ、違います。」

Dさん: 「だとすると、重要度は下がるよね。そうしたら①は右下に来るわけだから、それを捨てないのはおかしいことになるね。他にも、同様の理由で重要度が下がりそうなものがありそうだね。」

Cさん: 「そうですね。自分の頭が切り替わっていないことがよくわかりした。」

ここで明らかになったのは、Cさんは今まで「誰かから」仕事をもらってきたので、仕事の内容そのものより仕事を回してくれる人との関係の方を重要視してきたことです。その結果、その仕事が将来につながるかどうかを判断していませんでした。

下請けから脱却する際には、「誰からの仕事か」という視点から「どんな仕事か」へ意識して視点を変える必要があるのです。

Dさんの質問は、まだまだ続きます。

 アクセスできなければ優位性はない

Dさん: 「①をやめるのは決まったとして、②はなんでやっているの?」

Cさん: 「②のセミナーには、大手企業の社員が来られることが多いのです。大手の仕事が取れる可能性があるので、私にとっては重要なのです。」

Dさん: 「なぜ大手の仕事を取ろうとするの?」

Cさん: 「(言いにくそうに)コンサルをやる以上、大手の立派な仕事がしたいです。。。」

Dさん: 「それって現実的?大手企業が独立したての実績が少ないコンサルタントに仕事をくれるの?」

Cさん: 「。。。。」

Dさん: 「仮にくれたとしても、大手の仕事は一人ではこなせずチームが必要なことが多いよね。誰と組むか算段はあるの?大手企業の仕事をしたいのなら、独立するのではなく大手のコンサル・ファームに入ったほうが、よっぽど良い経験ができるのでは?」

Cさん: 「そう言われるとそうですね。。。」

Dさん: 「”競合優位性“には、そもそも自分がアクセスできるという要素を入れるべきだよね。」

Cさん: 「わかりました。考え直します」

「自分で」仕事を取りに行く際には、そもそも対象顧客にアクセスできなければ話になりません。Cさんは、「誰か」に仕事をもらうことに慣れていたので、それが盲点になっていたのです。

この一連の対話の後、しばらく考えてCさんは①と②の両方とも「捨てる」決心をしました。最終的なCさんのポートフォリオは、以下のようになりました。これだと捨てる仕事が結構あるので、その代わりに将来に向けた投資作業を入れることができそうですね。

ポートフォリオ分析後

 まとめ

  • 当たり前のことだが、独立コンサルタントとして成功しようとするなら、仕事をもらうのではなく、自分で仕事を取りにいくという発想の転換が必要である。そのためには、次のような落とし穴を避ける工夫そすべきである。
  • 自分の時間は有限なので、それを効率的に使うことを考える。全体を見て割に合わない仕事を捨て、自前の仕事をとるための投資の時間を作る
  • それまでの下請け意識に気づく。市場の魅力度は、”誰からの”仕事ではなく”何の”仕事かを見て決める
  • 仕事はもらうものではなく、自分で取るものであることを再認識する。顧客にアクセスできるか否かも、競合優位性の判断基準に入れる