間違った問題を解決してホゾを噛まないようにするための問題俯瞰法


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問題と捉えたことの「外」に原因があり、無駄足を踏むのは?

ある通販会社で、顧客から注文してから品物が届くまでの時間が長すぎるというクレームが頻発しました。そこで、生産ラインを増強したのですが、クレームは一向に減りません。

そこで、業務プロセス全体を調べてみると、外注している配送センターの容量が増大する受注量に対応できず、仕分け作業が滞っていることが判明しました。仕方がないので、外注先を2社にしたところクレームは解消しました。

結局、生産ラインの増強はムダとなってしまったのです。

この例のように、これが問題の原因だと思って対処しても効果が上がらない、よく調べると別のところに本当の原因があった、ということがよく起こります。皆さんも似たような経験をお持ちではないですか?

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?それは、問題の全体を俯瞰する視点が養われていないからです。

今日は、問題の全体を見て本当の原因を見つける体系的な方法について検討してみます。

問題がどこで発生しているかを見つける俯瞰的方法

このブログでも何度も述べていることの繰り返しですが、「問題とはありたい姿と現状とのギャップのこと」です。

そして、問題解決とは「ギャップ」を生じさせている「原因」を見つけ、それを潰すことにより「ギャップを解消する」行為です。

この行為の途中で「間違った原因」を見つけてしまうことを避けるには、問題とその発生経緯全体を客観視し、それを上から眺める「メタ」な視点(俯瞰的な視点)を確保する必要があります。

すなわち、問題の発生可能箇所を表現するなんらかの全体図を手に入れる必要があります。この全体図がどのようなものであるべきかについては特段の制限はありませんが、自分の目的に合っていることは必要です。

そこで、以下の議論を簡単にするために、本記事で扱う「問題」の範囲を、業務改革に限定します。すでにある業務プロセスが存在し、その改革を行うという種類の問題です。

そうすると、たとえば 新版[図解]問題解決入門 の表記を借りれば、問題とその発生経緯を図のように表現することができます。

問題構造を見る俯瞰的視点

問題が解けない原因を検出する俯瞰的質問

そして、この図を眺めれば、問題がうまく解決できない原因のチェックポイントとして、次のようなものがあることが見て取れます。

① 目標は妥当か

目標があまりにも手近なものだと、その解決方法はすでに考え尽くされていて、それ以上新たな進展が望めないことは、皆さんも経験上よくお分かりだと思います。

コンサルティングで「構想策定」が重要な理由を、山登りのアナロジーでクライアントに説明する で述べた例で言えば、「高尾山に登る」という目標を立てても、それはあまりにも簡単に実現できてしまうので、問題解決後に得られるものが少ないのです。

一方で、「顧客満足度を99.99%にする」などのあまりにも過激な目標や、「中期計画実現に貢献する」などの漠然とした目標も、実現が難しく問題解決を妨げます。

問題解決には、適度にチャレンジングでかつ実現可能な目標の設定が不可欠なのです。適切な目標設定ができていないがために問題解決ができないことがよくあるので、その時は目標そのものの妥当性を問いましょう。

② 現状認識は適切か、正確に計測されているか

冒頭の通販会社の例のように、現状の「悪さ」を把握し損ねると、間違った問題を解いてしまうことになります。

たとえば、工場内で作りすぎの無駄をしているとき、現状を「工場内に仕掛かり在庫が蔓延している」と捉えると、すべての設備で生産スピードを落とすことを考えがちです。そうすると工場全体の生産性が落ちてしまうという別の問題を招いてしまいます。

この見方に対し、制約理論では工場全体の生産のボトルネックである生産設備を見つけ、その直前に過剰な仕掛かり在庫が溜まっていることを現状と捉えます。そして、ボトルネック設備の生産性向上とその設備の上工程の生産調整を解決策とします。下工程は従来通りの生産を続けるので、工場全体の生産性は落ちることなく仕掛かり在庫が減ります。

このように、目的にあった現状把握ができているかどうかが問題解決の成否を大きく分ける、ということを知っておく必要があります。

③ 業務プロセスは目標達成に対し適切なものか

これに対しては、業務改革を成功させるために必要な2つの着眼点で詳しく説明していますので、そちらを参照ください。

④ 入力は適切か

入力が適切かどうかも、重要なチェックポイントの一つです。入力の品質が悪ければ、当然出力の品質も落ちるからです。

入力の品質が落ちることがあるのは、目標が現場の作業者に共有されていないためであることが多いです。次の有名なドラッカーの3人の石工の話を見れば、このことが理解できます。

“3人の石工がいました。 そこにある人が「君の仕事の目的は何かね?」と尋ねました。 一人目の石工は「これで飯を食っているんだ」と答えました。 二人目は「最高の技能を発揮しているんだ」と答えました。 三人目は「教会を建てているんだ」と答えました。”

三人目の石工であれば、目標を共有して品質の高い入力(教会を作るための石)を提供してくれますが、一人目や二人目は怪しいものです。

クライアントの心変わり・抵抗・他責を見下さず、その背後の合理性まで考慮してこそ、一人前の問題解決者 で触れた例では、コンサルタントのプロジェクト・リーダーが、自分のプロジェクトの見かけ上の採算性だけを考えて、メンバーの稼働率の過少申告を行っていました。その結果、現状のビジネスの忙しさのなかでの必要人員数が適正に把握できなくなっていたのです。

この場合の解決策は、稼働率の申告プロセスそのものの改革ではなく、リーダーに正確な稼働率報告の重要性を理解させ、プロセスに正しく入力させることだったのです。

業務プロセス自体の改革ではなく、作業者への目的・目標の教育が解決策となることもあるという訳です。

⑤ 制約条件が設定され、それが守られているか

業務プロセスを設計するにあたっては、当然プロセスの運営コストも考慮対象となります。

したがって、対象のプロセスがあらゆる入力をどんな量でも受け付けるようには設計するのは合理的ではありません。そのプロセスが特定の入力や入力パターンに対してのみ効率的に働くように、入力になんらかの制約を課すのが普通です。

そのことを理解して、業務プロセスが効率的かつ効果的に働いていないと思われるときは、制約条件が守られているかをチェックすることも重要です。

たとえば、部品在庫管理プロセスの実行に多大な工数をかけているにも拘わらず、在庫が一向に減らないというときに制約条件をチェックしてみると、在庫の特性を区別していない、ということが分かるかもしれません。

そのようなときは、高額で大量に買う少数の部品と低額少量に買う多数の部品の管理プロセスを分けるという解決策が導かれるでしょう。

業務プロセスの制約条件を明らかにし、その順守を徹底する、あるいはビジネス状況にあった制約を課し、それに合わせて業務プロセスを改変する、などのことも考えるべきなのです。

⑥ 前提条件は崩れていないか

⑤と同様に、業務プロセスは特定のビジネス環境を想定して、その中で効率的に働くことを想定して設計されます。

たとえば急激な業務拡大で受注管理の精度が下がったとしましょう。この場合、業務量拡大に伴って新人の受注係を投入したことが原因かもしれません。

業務プロセス自体はなんの問題もなく、その前提条件である作業者の教育レベルが問題ということもあるのです。

⑦ ギャップはいつ発生したか

最後に、今まで業務プロセスにはなんの問題もなかったのに、あるとき突然出力の質が低下してギャップが生じた、ということもあり得ます。

このような場合は、そのタイミングで上記①から⑥の何が変化したかを調べる必要があります。

俯瞰的質問の実際の問題への適用事例

以上のような俯瞰的な視点があれば、他のやり方では見過ごしやすい問題の原因をつかむことが可能になる場合があります。

以下に、このブログで以前に触れた実際の問題解決事例について、どの視点で原因が発見されたかについて解説しておきます。

販社と生産の言い合いはどちらが正しいのか(② 現状認識は適切か、正確に計測されているか ) 

意見の違いを克服するためには「事実」を提示する で述べた「販社・生産双方の問題を指摘する流動曲線」という図が、このケースの事例になっています。

この例では、販社と生産部門が在庫過多の原因を作っているのは相手方だとお互いに非難しあっていました。

もし販社の言い分が正しく販社は販売台数を正確に予測しているとすれば、需要予測台数と販売台数の累積曲線の差は、予測と実績の時間差だけとなり、2つの曲線は並行になるはずですが、そうはなっていません。

生産部門が販社の要求通りに無駄なく作っていれば、同様の理屈で生産台数は需要予測台数と並行になるはずですが、そうはなっていません。

この図のように現状を的確に表現すれば、お互いの言い分が間違っていて、両者が協力してことに当たらねば正しい解決策が導けないことが、一目瞭然となるのです。

流動曲線

生販在計画管理プロセスをどう改革するか(④ 入力は適切か)

上の例で、改革の対象となっていたのは需要予測台数をもとに生産量と在庫量を決める生販在(生産・販売・在庫)管理プロセスです。しかし、そもそもの需要予測台数の精度が悪いのでは、いくら生販在管理プロセスを改革しても在庫は減りません。

プロセスの改革以前に、入力である需要予測台数の精度を改善する必要があります。

実は、他の多くの企業と同じようにこの企業で入力精度が悪い理由は、生産から販社への製品納入の精度の悪さにありました。販社が要求した台数を生産が作れない、あるいは作っても納入が遅れるなどのことが多発していたのです。

その結果、販社は品切れを嫌う小売業者から攻め立てられます。それだと困る販社が、自分の身を守るために予測を上積みして生産に要求していたのです。

したがって、この例では生販在管理プロセスの改革の前に、生産からの納入精度の改善が取組み課題となりました。この改善により販社が生産を信頼するようになって初めて、本来の生販在管理プロセスの入力精度の改善に取り組めたのです。

「入力は適切か?適切でない原因は何か?」という問いを立てることにより、初めてこのよう改革が可能になるのです。

なぜスピード競争で負けるのか(⑤ 制約条件は守られているか)

問題が解けないままで残っている時は、前提となっている制約を外す の「なぜ設計スピードが遅くなるか」の図(下図)がこのケースに該当します。

このケースでは、最重要顧客から「この仕様の部品が作れるか?」と聞かれてから試作作業を始め、その仕様通りの試作品を提出するまでの時間の速さが受注の勝敗を分けます。そして、スピード競争に負けたため受注が激減していました。

クライアントは、売り上げ減のため開発人員を増やすことができない状況下で、試作スピード向上策が見つからず、途方に暮れていました。

しかし現状をよく調べてみると(この部分は「現状認識は適切か」に該当)、営業が本来の引き合い審議(試作をするに値するかどうかを判断する)を飛ばし、設計に直接試作の可否を問い合わせていることがわかりました。

営業の方が年長なので、若い設計は断りきれずに掛け持ちで試作をしており、その結果ひとつの試作あたりの経過時間が長くなっていたのです。つまり、試作プロセスにかける負荷の制約が守れていなかったのです。

これを受けて、そもそも取り扱う部品の種類を減らした上で、引き合い審議を厳格に行うことに改めたところ、試作プロセスには何の変化も加えることなく、顧客からの受注率が飛躍的に向上しました。

設計への過大な負荷

購買改革がなぜ必要になるのか(⑥ 前提条件は崩れていないか)

このブログで何回か購買改革の例を取り上げていますが、その購買改革がなぜ必要になるかが、このケースに該当します。

従来の製造業の開発プロセスでは、購買担当者は製品開発プロジェクトに所属し、設計が計算した原価をもとに、サプライヤーと価格交渉をします。購買担当者は、その製品に使われる部品をひとりで何種類も担当するという体制です。

このやり方は、全世界のほとんどの製造業で共通でした。その理由は、製品の付加価値のほとんどの部分が設計作業で創造されていたからで、購買の付加価値への貢献度は低かったからです。

ところが、昨今部品のモジュール化が進み、製品のかなりの部分はモジュールの組み合わせで実現できるようになりました。その結果、製品価格の70-80%が、外部から購入した部品の価格で占められるようになりました。

こうなると、従来よりもはるかに積極的に部品のコストダウンをする必要が出てきます。

そこで、先進的な企業では、購買担当者を開発プロジェクトとは独立の部品カテゴリーごとに組織化し、その部品業界のノウハウを蓄積した専門家として活動させるようにし始めました。

部品カテゴリー・チームは、自分のカテゴリー内の部品に関し、どのサプライヤーが優れていていくらで買えるかを常時調査しています。そして、設計は必要になると部品カテゴリー・チームが用意した部品を使用する、という従来とは逆順のやり方をするようになりました

設計が付加価値の大部分を創造するという前提が崩れ、購買が付加価値を創造する必要が出てきたため、購買プロセスの抜本的な改革が求められるようになったのです。

業務プロセスが作られた当時のビジネス環境の前提が現在でも成立するのか、という検討視点も重要なのです。

工場の汚染水の発生原因は何か(⑦ ギャップはいつ発生したか)

これはブログの他の箇所では触れてはいない、筆者が30年以上前に知人から聞いた話です。

いくつかの会社の技術者を集めた泊まり込みの研修で、よくあるように深夜まで飲み会を兼ねた話し合いが行われていました。

その中にいた半導体工場の品質責任者が、「そういえば、この前こんなことがあったんですよ」と話し始めました。

半導体工場では、化学反応の熱で温度が上昇した設備を冷却するために大量の水が使われます。この水(温排水)はそのうち冷却して工場外に排水されるので、その際に化学物質が漏れ出さないように、厳重に品質管理が行われます。

ところが、ある時から定期的に少量の不純物が検出されるようになりました。不純物そのものは毒性もなく少量なので、それが外部に漏れ出すしても環境に影響を与えることはありません。しかし、漏れそのものは重大な事態の前触れかもしれないので、その原因を突き止める必要があります。

ところが、何日もかけて工場中を調査し尽くしたのですが、何の手がかりも得られません。品質責任者は困り果ててしまいました。

その時に、担当者がある作業者が夜勤の時にだけ不純物が発生することに気がつきました。そこで作業者にヒアリングをして分かったことは、温排水の通る菅のバルブを開けて、夜食用のゆで卵を作っていたということでした。

この例で、ギャップがいつ起こったかを見る視点を忘れてはならないことがお分かり頂けると思います。

 まとめ

  • コンサルタントが支援して解決策を講じたが、もとの問題が解決しないということがよくある。その理由の一つに、「原因」と捉えたことが間違っていて本来求められたのとは別の問題を解いた、ということがある。
  • 「原因」を取り違えるのは、問題とその発生の構図の捉え方が「狭い」からである。この「狭さ」を克服するには、問題の構造とその発生経緯を俯瞰的に眺めるための自分なりの全体図を構成する必要がある。
  • その全体図から眺めれば、たとえば以下のような原因究明の視点が得られる
    • 目標は妥当か
    • 現状認識は適切か、正確に計測されているか
    • 業務プロセスは目標達成に対し適切なものか
    • 入力は適切か
    • 制約条件は守られているか
    • 前提条件は崩れていないか
    • ギャップはいつ発生したか
  • それらの視点を使って通常では見逃しがちな原因を把握し、大きな成果を上げることができる