コンサルタント自身の「視座」を担当者レベルから上げ、経営者レベルで問題を解決する方法


最新更新日

コンサルタント(志望者)自身の問題記述法が変なのは?

最近、自分自身でコンサルティングをすることからコンサルタントやそれに準ずる人の指導に軸足を移しています。そうすると、その人たちの問題記述に関して、色々と不思議に思うことに出会います。

たとえば、ある人(Aさん)が独立したいというので相談に乗っていた時のことです。

Aさんはまだ企業に勤めているシステムズ・エンジニアですが、士業向けのドキュメント処理のITソリューションを売る商売をしたいとのことでした。

そこで、Aさんに「誰のどんな悩みを解決して対価をもらうつもりなの?」と聞いてみました。するとAさんは延々と説明を始めましたが、その内容はITシステムのシステムフロー図の説明でした。

システムが何をするかの説明は聞けましたが、それが何の問題を解決するかは聞けませんでした。でも、そのことを指摘してもAさんはピンとこない様子でした。

また、市場分析の専門家でそのうち独立を志望しているBさんから相談を持ちかけられました。

Bさんの所属する製造業の2大市場P、 QのうちP市場の大幅な落ち込みが必至となったため、Q市場で利益を確保したい、そのために卸の中抜きをしたいけれど良い方法がないかというものでした。そしてBさんはバリューチェーンの図を書き始めました。

でも、バリューチェーンは自分がコントロールできる範囲(主として社内や提携先)の構成要素を付加価値の生成順に並べ、さらなる付加価値創造の機会があるかを調べる手段です。ただでさえ御し難い社外の卸への対策を論じるのには向いていません。

AさんもBさんも、自分が抱えている問題を記述するのには向いていない表現手段(フレームワーク)を用いて議論しているのですが、そのことに問題を感じていないようでした。

さらに、Aさんはドキュメント整理をする担当者のことしか眼に入っておらず、お金を出す士業の経営者への価値訴求を考えていません。これでは独立して商売をやっていけそうにないですね。

またBさんは、業界の下位メーカーに属しているにもかかわらず卸の中抜きという解決できそうもない筋の悪い問題に取り組んでいます。その理由は「上司に言われたから」ですが、どうにも損な役回りを引き受けていますね。これで独立してやっていけるのか心配です。

なぜこうなるのでしょうか?そして、そこから脱却して問題解決業として成功するには、何をどうすれば良いでしょうか?

まず必要なのは自分自身の「担当者レベル」の視座に気づくこと

実は、AさんとBさんの問題の原因は、彼らが固定した視座からしか物事を見られなかったことにあります。

ここで、視座とは物事を見る姿勢や立場のことです。

一つの問題でもそれを見る立場にはいろいろなものがあります。

企業の問題であれば、顧客、担当業務(設計、営業、受注管理、生産管理、製造、購買、物流、等)、外部関係者(仕入れ業者、金融機関、等)のように様々な立場があります。また組織レベルであれば、平社員、中間管理職、役員などの異なる立場があり、それぞれに見えている問題が異なります。

人は、この自分の視座を意識することが得意ではありません。それぞれに自分の立場があり、日々の仕事をその立場から判断しているので、そこから脱却して別の立場から問題を見ることが難しくなっています。

それがために問題を解決できないということが、多々生じているのです。

Aさんはシステムズ・エンジニアとして、永年クライアント企業の業務担当者の作業効率を向上させるITシステムの設計開発に携わってきました。その習慣から、問題と言われると反射的に業務担当者の視座で物事をみてしまい、システムフロー図を描いてしまうのです。

しかし、独立して生計を立てる方法を考えている段階では、お金を払ってくれるクライアントの経営者(この場合は士業事務所のトップ)の視座で物事を考えなければならないのです。

Bさんの例で言えば、所属会社にとっては業界の市場が伸びない中で売り上げや利益を伸ばすことが関心事です。

その時に、「卸の中抜き」が正解であれば何も問題ではありません。しかし、ちょっとビジネス知識があれば、これは業界下位のメーカーにとって非常に実現が難しい施策だということがわかります。

したがって、担当者の視座で内部構造を分析するのではなく。経営者の視座で業界内の競争戦略を分析すべきです。

ところが、Aさんは市場分析者という役割に慣れているので、上司に「卸の中抜きについて調べてくれ」と言われると、その案の筋が良いかどうかを考えずに、これまた反射的に案そのものの検討に走ってしまったのです。

ところが、外部の問題解決者はそのような制約に囚われずにすみます。その結果、クライアント担当者の視座から脱却して、別の視座に立って問題設定をして問題を解決することができます。

AさんもBさんも、この外部の問題解決者の利点を生かして商売をしていこうとしているのですから、一刻も早く視座転換のスキルを身につける必要があります。

そのためには、現業での自分自身の「担当者」の視座を意識化し、それを別の視座に転換させる訓練をするところから始める必要があるのです。

問題解決業で成功するためには、視座を「経営者」レベルに上げる

このような視座の転換で成功する秘訣は、視座を上げることです。クライアントの担当者より高い地位で物事を見るのです。そうすれば、次に示すように価値が高く解ける問題を見つけやすくなるのです。(図の①)

  • 高い地位で見れば、その地位の権限・責任範囲が大きいので、より価値の高い問題にアクセスできる。その結果、対価に見合った問題解決の提案がしやすくなる
  • より広い範囲で見れば、解きやすい問題の数が増える。とくに、組織間にまたがるため簡単なのに誰も手がつけられずにいるような問題が見つかる。担当者レベルの問題解決に行き詰まっている時に、これは大きな助けとなる。

ただ、この「高い視座で見る」というのは心理的になかなか難しいのが事実で、成功事例に学び、自分でも成功体験を積んでいく必要があります。

最初のステップとしては、たとえば、先週の本当の問題を見逃さないための7つの俯瞰的質問で触れた、以下のような成功事例の分析から始めるのが良いでしょう。

成功する問題解決業

視座転換の訓練にはフレームワークが使える

ここまでわかったら、次は視座を転換できるようにする訓練が必要です。問題解決者の多くは、実際には目の前のクライアント担当者に同化してしまい、その立場でしか問題を見られなくなりがちだからです。

この訓練にフレームワークが使えます。

フレームワークとは、効率良くかつ見落としなく問題を分析する「汎用の」切り口として紹介されていることが多いようです。(たとえば、グロービスMBA用語集

確かにこれは全くの間違いではありませんが、この紹介の理解だと、「汎用」という言葉に騙されて、冒頭のBさんのバリューチェーンのようにフレームワークを無批判に使いがちです。

フレームワークという言葉は、本来「骨組み、枠組み」という意味を持ちます。問題解決の文脈では、これを転じて、「物事を認知して思考するための枠組み」を指して使います。

上に述べたように、視座とは物事を見る姿勢や立場のことでした。したがって、本来フレームワークは(ごく一部の汎用的なものを除いて)何らかの視座と対応しているはずです。ですから、自分が取るべき視座に合ったフレームワークを見つけ、その使い方を学ぶことが、視座に合った考え方を身につける助けとなるのです。(図の②)

Bさんの例で言えば、自社の内部構造を分析するバリューチェーンではなく。経営者の視座で使える5つの競争要因のフレームワークを勉強すべきだったのです。

そうすれば、「卸の中抜き」という筋の悪い戦略以外にも検討対象を見つけられた可能性があります。

たとえば、競争戦略では、強者は同質化戦略をとり、弱者は差別化戦略を取ります。

Bさんの会社は業界の下位にいますが、まだ下位の会社が何社かあります。それらの会社の差別化戦略を分析して、優勢な体力にものを言わせて同質化戦略を取るなどの方法も考えられるはずです。

Aさんの場合は、ITシステムの要件をもれなく捉えるためのシステムフロー図だけでなく、顧客の購買時の意思決定の視座に立つことが求められています。

そのために、たとえばAIDMAフレームワークを勉強してみると良いかもしれません。

念のために説明すると、AIDMAはマーケティングで用いられる古典的なフレームワークで、消費者が商品の存在を知ってから購入するまでのプロセスを5つの要素に分解して分析すべきだと主張するものです。

具体的には、まずその商品に注目し(Attention)、関心を持ち(Interest)、欲しいと思うようになり(Desire)、その商品を記憶し(Memory)、最終的に購買という行動につながる(Action)という5段階で考えるというものです。

Aさんがこのことを知っていれば、独立して商売をする上で、この各段階に対し自分が何をしていくべきかを考えることができるようになるかもしれず、自己流で取り組むよりは事態が良くなる可能性があります。

フレームワークを紹介する本は、このような視座と結びつけて説明せず順不同に感じられ、なかなかわかりにくいのが殆どです。でも、中には視座を結びつけて解説しようとしたものもあります。

本記事での視座の切り口(高い地位の視座で考える、等)とは異なるので、かえって混乱させるかもしれませんが、次の2つは参考になるかもしれません。

  • リーダーのためのメンタルモデル活用術: この本ではメンタルモデルという言葉とフレームワークをほぼ同様の意味で使っています。タイトルが示唆する通り、リーダーとなろうとするときのいくつかの視座(自己マネジメントをする等)に使えるメンタルモデルをまとめています。
  • 問題解決フレームワーク大全: 問題解決の行き詰まりから脱却する視座(真の原因を見つけ出す、斬新なアイデアを見つけ出す、等)に有効なフレームワークを分類しています。

まとめ

  • コンサルタントあるいはコンサルタントになろうとする人たちと会話をしていて、その人たちの問題記述に違和感を感じることがある。その原因は、聞かれたこととは別の問題を述べたり、そもそも解けない筋の悪い問題を解こうとしていたりすることにある
  • 聞かれたことと別の問題を述べるのは、特定の述法に慣れていて、他の考え方をとろうとしないからである。また、解けない問題に取り組むのは、それを人に与えられたからである。
  • いずれも、自分の職業的習慣から抜け出せないことが原因で、そのままでは問題解決を業として続けてはいくことは困難である。問題解決業で成功するためには、自分が持つ物事の見方(視座)を客観化して理解し、問題に応じて視座を転換するというスキルを身につける必要がある。
  • 問題に応じた視座転換で有効なのは、視座を上げ、クライアント企業の上位者と同じ目つきで問題を見ることである。上位者は権限や責任範囲が広いので、必然的に価値の高い問題を扱っている。さらに広い範囲の中では、解きやすい問題が取り残されている確率が高まるからである。
  • ただし、上位者の視座で物事を見るのは未経験者には心理的に難しい作業である。それを克服するために、積極的に成功事例に学ぶ姿勢が大事である
  • 視座を転換するには、その視座向きのフレームワークを学習することが助けになる。なぜなら、フレームワークは物事を認知して思考することを助ける手段だからである。経営者の視座を獲得するには、業界分析のフレームワークを学び、顧客の視座を得るには、顧客の購買行動を分析するフレームワークを学ぶなどの方法をとればよい