変革点③ キャリア構築チャネル:相対(正社員という身分) → 市場(仕事)(続き)


Last Updated on 2021年8月21日 by 時代遅れコンサルタント

前回は、定年を控えて新たな仕事探しをするのなら、かなりラッキーな場合を除いては、これまでの相対の世界を離れて市場を通して考えるべきだとお伝えしました。今日は、市場を相手に何をどう考えるべきかについてお話しします。

まず、相対と市場の決定的な違いは、当事者間に事前に何らかの関係が存在するか否か、ということです。
シニアの多くは、長年企業社会の中で人間関係を構築し、その関係を前提としてビジネス活動をしてきています。ところが、高齢者として労働生産性が落ちてきたとみなされ会社から排出対象となると、これまでの関係は(よほどラッキーか頭を下げない限り)利用しにくくなります。関係を利用した仕事探ししか思いつかない人は、不本意ながらリタイアすることが多い訳です。それが嫌なら、自分で働き甲斐がありそうな市場を見つけて、そこで予め関係のない人に働きかけ、自分の価値を認めてもらい仕事をもらう必要があります。

問題は、この単純な仕事探しに、我々の多くが不慣れなことです。せいぜい求人サイトやハローワークで求人票を調べ、自分に向いた仕事が見つからないとぼやく程度です。ここでアンラーニングすべきなのは、自分の受け身の態度です。本来多くの可能性を提供してくれるはずの市場ですが、自分から働きかけない限り市場は応じてくれない、パラダイムが違う、と気づくべきなのです。

相対の分業の世界なら、長年の付き合いであなたが何に強いかを「察して」くれ、あなたに向いた仕事を探してくれる「役割」の人が存在します。あなたはその人との関係構築にだけ気を配っていればよかったのです。そういう役回りの人が消えた時の心構えを準備すべきなのです。

私にも、現役時代に似たような経験があります。所属していたコンサルティング部門が全世界で大合併した時のことです。それまで、人がとってきた難しい仕事をこなすことで、それなりに暮らしてきた私に、突然仕事が回って来なくなりました。当初はなぜかわからなかったのですが、よく考えてみれば理由は簡単でした。合併の結果、私の所属長が70人の部隊の長から、600人の部門の長になったのです。それまで難しい仕事の内容をジャッジして私に回してくれていたのは、この所属長でしたが、忙しくてそれができなくなったのです。

最初は、それでも難しい仕事ができるのは自分しかいないと高を括っていたのですが、全く仕事が回ってきません。実際に仕事をとってくる年若い営業にとっては、それなりの仕事ができさえすれば十分で、腕はたつが年配の口うるさいコンサルタントにわざわざ仕事を回す動機は何もなかったのです。

この事態を理解した後は、観念して、それまで逃げ回っていた自分で仕事をとるクライアント・パートナーの役割につきました。そうするより仕方がなかったので最初は苦労しましたが、それが幸いして、定年後自分で仕事を取ることに苦でなくなり、結果オーライとなっている訳です。

このように私に定年前に起こったことを、皆さんが経験する必要があるのです。

さて、市場に能動的に発信すると言っても、何をすれば良いのでしょうか?最初にすべきことは特化する決心です。市場には多数のプレーヤーがいるので、企業内で価値があった「何でもできる」では目立ちません。顧客の目に止まらなければ仕事のオファーは来ない訳なので、ゼネラリストは無価値だと肝に銘じる必要があるのです。ピーター・モントヤ「パーソナルブランディング」という本の第6章のタイトル「特化か衰退か」の通りなのです。特化して自分の強みを訴求すべきなのです。

でも、このように言うと、「自分には強みなど何もない」あるいは「強みが見つからない」という人が多数発生します。その理由は、自分視点でスキルの棚卸しをするだけで終わるからです。これは方向が全く逆です。市場では、自分のことを考える以前に顧客のことを考える必要があるのです。上述のモントヤの本にも、「認知が能力よりも重要」と書いてあります。

この考えを徹底すれば、道は自ずと開けてきます。専門家として特化して認知されようとした場合に、全ての顧客を相手にしようとするのは無謀です。とすれば、絞るしかありません。ところが「絞れ」と言うと、ものすごく抵抗する人が数多くいます。その人たちが上げる理由が、「絞ると顧客の数が減る」です。この場に及んでも、ゼネラリストの考えから抜け切れないのです。

しかし、日本には中規模以上の会社だけでも60万社近くあります。この数は個人にとっては膨大すぎます。この全ての会社が自分のやりたいことをさせてくれるわけでもないし、あなたに興味を持ってくれるわけでもないことも自明です。面白そうな会社に目星をつけて当たるしかありません。この目星がターゲティングです。

ターゲット市場を決めたら、その中で自分が目立つ方法を考えます。これがポジショニングです。ここで勘違いをしてはいけないのは、ポジショニングで自分が優れていることをアピールしようとしないことです。ポジショニングで行うべきは、「自分が競争相手と何が違うか、どういう違いがある仕事ができるのか」を明らかにすることです。なるべく競争相手が少なく認知してもらい易いブルーオーシャンを探すのです。レッドーシャンで自分の能力をアピールしても、苦しい戦いを迫られるのは必定です。

顧客が興味を持つのは、その人にどう言う職種を与えるかではなく、その人がどういう仕事ができるかです。したがって、ポジショニングも仕事で考えないと、違いが訴求しにくくなります。(私のポジション(違い)は、企業ではなくコンサルタントに対するコンサルティングで、支援するのは、コンサルティングを売る方法ではなくそれを契約した後の実行です。)その違いに興味のある顧客に目を向けてもらう(認知される)ことに集中するのです。認知された中で優れているかどうかのアピールはその次です。

ここまで常識的なのになかなかできないアンラーニング(変革点)をまとめると、次のようになります。これらは書かれてみると非常に簡単なことなのですが、これができる人はびっくりするほど少ないです。大抵の人は落ちこぼれ引退の道を選択するので、ここまで生き残っただけでチャンスが生まれると思うべきなのです。

求職行動: 受け身 → 能動
職種: ゼネラリスト → スペシャリスト
顧客範囲: 全般 → ターゲット
訴求点: 能力 → ポジション

以上のアンラーニング(変革)ができた上で、初めて認知してくれた顧客に提供する価値を考えることになるのですが、これについては次回以降で触れることにします。