変革点③ キャリア構築チャネル:相対(正社員という身分) → 市場(仕事)


Last Updated on 2021年8月21日 by 時代遅れコンサルタント

ここ何回か自己変革そのものの考え方について少し詳しく述べ的ましたが、ここからは人生100年時代に稼ぎ続けるために考えるべき個別の変革点について説明していきます。

最初に考えるべきことは、定年が近づきこれまでの会社生活に囚われることなく新たなキャリア形成の機会を求めるときに、どのようなアンラーニングをすべきかでしょう。

私の投稿を読んでくださっている多くの方に共通するのは、大学を出てすぐにそこそこの会社に就職し(中には何回かの転職を含めて)雇われ人として過ごしてきた職業人生でしょう。意識したかどうかは別として、生きていくための糧を得るために、労働力という財を会社に提供し、その対価としてサラリーという財を得る、という「ビジネス」を選択したことになっているはずです。

ここでアンラーニングすべきは、「ビジネスのやり方はそれだけだろうか?」ということです。提供する財は労働力だけだろうか、提供相手は会社だけだろうか、対価として得るべきはサラリーだけだろうか、と問うべきなのです。

アンラーニングを進めるために、思考を少し飛ばして、ビジネス一般での財の交換の仕組みを考えてみましょう。ビジネスとビジネスが財を交換する一般的な仕組みは、伝統的には媒体として卸売業が介在してきましたので、卸が関連するマッチング機能を考えてみることにします。

図Aに示されるように売り手のベンダー側と買い手の顧客の相対的な数の差で、いくつかのマッチング・ビジネスの形態が存在します。

① ベンダー、顧客双方の数が限られる時は、それでもビジネスになるのは高額の商品・サービスと考えられるので、手間暇かけて説明する直販の形態が適している(私が所属していたIBMでは大手顧客に対しては直販。中小顧客には代理店経由で売っている。代理店にとっては顧客は大手なので、代理店自身も直販を行う。)

② 数が限られた大手の顧客が多数の商品・サービスを購入する時は、その手間を削減するワンストップ・ショッピングを引き受けるための購買代理店(大塚商会やミスミなど)が存在する

③ 大手ベンダーが多数の顧客に効率よく販売するためにはメーカー系列の代理店網を構築する(トヨタ系列ディーラー、パナソニック販売店、など)

④ ベンダー、双方が多数の時は伝統的な中小卸あるいは市場経由で売買が行われる

これを求職・採用市場に当てはめてみると、概ね図Bのようになります。

⑴ ごく少数の採用者とこれまたごく少数のエリート求職者(実績のある経営者、大谷翔平のようなプロ・スポーツ選手など)の間の流動性が低いマッチングの場合は、採用者の個別ネットワークの探索や求職者のエージェントを通した相対の交渉が行われる(大学の教授職も、公募もあるものの個別ネットワークで決まることが多い)

⑵ 企業が一般社員を外部に転職させる時は、系列会社や取引先企業を個別に紹介する、あるいはアウトプレースメント業者を使う

⑶ 大手企業が指名ではなく幹部職員を募集する時は、採用したい人材のスペックを指定してヘッドハンターを使う

⑷ 大手企業が一般社員を募集する時は、採用したい人材のスペックを指定して広告募集する、あるいは転職エージェント経由で募集する

⑸ このケースは存在しない

⑹ 採用者・求職者双方が多数の時は市場を経由した取引が行われる

私が個人的に経験があるのは、以下に示す ⑴、⑶、⑷ のケースです。

⑴ たまたまだが私が定年になって最初に異動したのは、このパターン。個人的に関係の深い人が別の大企業の要職あったため、身の振り方を相談した訳だが、これはラッキーと理解すべきだろう。流動性の非常に低い大学教員の場合も、このパターンで、思わぬときに昔の知り合いから連絡が来るのが普通。個人的に大学の客員教授を2度引き受けたのも、この種の流れで

⑶ ヘッドハンティングには興味がなかったので大抵は断っていたが、2度だけ話を聞いたことがある。1度目は30代半ばだったので、勉強のために応じた。この時は私の興味の範囲外の業界だったのと、その業界関係者が主催する泊まり込みの勉強会で積極的に発言した直後だったので、誰が紹介したのかが分かった。2度目の時の経緯は分からなかったが、断った後知り合いを紹介するようにしつこく粘られたので、そうやって人を探すビジネスなのだと理解した。それ以外に、LinkedInでヘッドハンティング業界のジュニア・リサーチャーの友達申請がやたら多いのも、この業界の特徴。60歳を過ぎてもしきりに依頼が来るので、業界のノルマは大変だなぁと同情したことを覚えている。

⑷ 最初の転職の時は、日経コンピュータに載っていた外資の新設基礎研究所の人材募集に応募した。ただ、実際の面接の時には旧知の大学の先輩が面接官だったので、⑴の要素もあった

さて、この情報から何が得られるでしょうか?定年間際のキャリアを考えるにあたっては、図Bの左側の少数エリートの部分⑴、⑶は一般的にはあてにしないほうが良いでしょう。大企業の部長クラスに多いのは、⑵のパターンでしょう。私の年齢ですと、60歳で定年になって、子会社のそれ相当の職に転出し、65歳になったらリタイアするというパターンです。銀行勤めだと、これが50歳前後で発生します。あまり主体的な行動方法でないので、お誘いがかからなければ、そのままリタイアすることになってしまいます。

ということで、自らが能動的にキャリアを開くのであれば、⑷か⑹を考えるべきだということになります。どちらのケースにしても、数多くの競争相手の中から選ばれる必要がある、ということには変わりはありません。その覚悟がないのであれば、⑵を期待した受け身の人生を送るしか、ないでしょう。

ここで、最初のアンラーニングが必要となります。今まで長い間同一の組織に所属して構築してきたネットワークは使えなくなり、多数の人と競争して見ず知らずの相手から選ばれなくてはならない、ということです。一部のエリートではないにしても、固有名詞を認識してくれる社内の相手との図Bの左側のような相対取引から離れ、市場取引に晒されなければならないということです。

今までの不満は多いけれど心地良くもある組織を離れ、市場で知らない人に自分の価値を認識してもらわなければ何も始まらない、というアンラーニングをすべきなのです。このアンラーニングをしてしまえば、何も会社に「労働力」を提供する雇われ人として再就職契約をしなくても、独立の自営業者として「仕事」単位で契約をすることも可能になります。私は、最終的には⑹の市場で、自己発信して個別の仕事の契約を取る道を選びました。

長くなりましたので、今日はこの辺にして、次回は決心してしまえば市場で生きることはそこまで難しくも過酷でもないというお話をします。