問題の深掘りで頓挫したら、「プロブレム・トーク」を「ソリューション・トーク」に変える


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問題分析をしてせっかく解決策を考えたのに、成果が上がらないことが多いのは

会社の構造改革を実現しようとして、タスクフォースを組んで問題分析した上で解決策を導きだした。でも、その解決策が実行できない、あるいは実行できたとしても一向に効果が上がらない。

コンサルタントなら、そんな事例を見聞きしたことが少なからずありますよね?

たとえば、ある部品製造業A社の業績の変動が激しいので、自分たちが得意な商品領域で新しい市場を開拓したいというケースがあったとしましょう。

いままで慣れ親しんでいた市場では、顧客も自社の商品の特徴をよく知ってくれていますので、営業は比較的簡単です。顧客が自分たちの製品開発に必要な仕様の部品を発注してくれ、それを届けることが中心でした。

しかし、新しい市場の顧客はA社のことも商品の特徴もよく知りません。A社の部品が自社の製品にどう役に立つのかを判断できないので、特段の工夫がない限り営業の話を聞いてはくれません。A社の営業は、自社の商品が顧客の問題をどう解決できるかを積極的に訴求しなければなりません。

すなわち、いままでの(注文を取るだけの)「御用聞き営業」から「ソリューション営業」へ変革しなければならないようです。

この解決策として「ソリューション営業プロセスの確立」および「営業社員へのソリューション営業教育」が提案され、上層部の合意を得ました。でも、その後、解決策が実現され成果が上がったという話が聞こえてきません。

というような話を、よく聞きます。コンサルタントとしてこのようなケースに出会ったら、その理由をどう分析するかというのが今日のテーマです。

問題分析に血道を上げると、却って解決がむずかしくなる

まず、基本に戻りましょう。あなたの問題とは、あなたがこうあるべきだと思っている姿と現状とのギャップのことです。ギャップがなければ、現状に満足しており何も解決する必要はないはずだからです。

したがって、問題解決にあたっては「あるべき姿」と「現状」を明確にすることにより、埋めるべきギャップ(これが解くべき問題)を確定する必要があります。

上の例であれば、あるべき姿の検討で「一言でソリューション営業と言っているものが何を指すのか、どういうことができているのが望ましいのか」を具体化します。また、現状分析で「御用聞きとはどういうものか、それのどこが好ましくなく変える必要があるか」を検討します。

たとえば、ソリューショ営業に求められることを列挙すれば、以下のようになります。

  • 自社都合ではなく、お客様の購買プロセスに自社の営業プロセスを合わせて行動する
  • お客様がまだ自分の問題を明確に認識していない段階からスタートし、問題の顕在化をお手伝いし、さらに自社の提案がその問題を解決することを納得していただく作業をする

これらを受けて、ソリューション営業プロセスのあるべき姿は、たとえば図のようなものになります。

スライド1

現状の御用聞き営業のプロセスは、多くの場合この図の③の段階からスタートしていることに相当します。そうなると、①、②のステップを作ることがソリューション営業実現の解決策となります。

ですから、次の作業はこの①、②のステップの詳細化となります。しかし、この内容はかなり高度なものとなります。

営業担当者の数が多い大手ならともかく、中小では費用対効果が引き合いそうにありません。せっかく一生懸命問題の分析をして解決策を見出したのに、この後に及んで頓挫することになる場合が多いのです。

しかし、どうしてここまで引っ張った挙句に頓挫するのでしょうか?もっと手前で別の方法を考えれば良さそうなものですが、実はこの種のことが多発しているのです。

その理由は、人間は新しい不慣れな問題に遭遇した時、「もし問題が理解できるか、あるいは原因がわかりさえすれば、解決策が見えてくるだろう」と期待しがちだからです。問題解決の最終目的である「解決」を忘れて、ただただ問題の分析に熱中してしまい、手に余る解決策を見出したりしてしまうのです。

問題について語り続けることをプロブレム・トークと言いますが、過度なプロブレム・トークを続けると、実際的な解決策から遠のくことがあるのです。

既に存在し解決につながるものに目を向ける

では、別の方法はないのでしょうか?

それは、「どうやったらなるべく簡単に問題が解決できるだろうか?現状でもソコソコうまくいっていて、あと少し工夫すれば良いのではないか」という視点で考えることです。この方向での会話をソリューション・トークと呼びます。

この2つの差を、次の図で説明しましょう。

スライド2

プロブレム・トークでは、「これは、大変な問題だ。それなりの覚悟をして当たらねば!」と考え、ひたすら問題の分析に集中します。

あるべき姿については、「あれもやらなければならない、これもだ」と課題をどんどん洗い出します。現状については、直すべき箇所を次々掘り起こします。

その結果、あるべき姿と現状のギャップの幅はどんどん拡大します。そうなると、ギャップを埋める解決策はどんどん難しくなり、実行不能なものになっていきます。これが図の左側です。

一方、ソリューション・トークでは、「問題は見た目ほど難しくはない。今でもそれなりにうまくやっているはずで、それを利用すれば問題の解決は簡単になるはずだ」と考えます。

現状については、「前にもちょっと失敗した事があったな。その経験は積んでいるので、もう少し工夫をすれば現状から抜け出せる」と考え、その手がかりになる事例を探します。

あるべき姿についても、「この前今一歩のことがあった。それをどう改善すれば良いだろう?」と考えます。

このようにすると、図の右側のようにあるべき姿と現状のギャップの幅は狭まり、解決がより容易になるのです。

本当にそれでうまくいくのか?: 問題解決塗装業の例

本当にソリューション・トークでうまくいくのか、さきほどのソリューション営業の例で考えてみましょう。

御用聞き営業が成立するのは、今の商品が顧客の問題を解決してくれることを顧客自身が知っている場合です。

しかし、ビジネス環境が変化するにつれて、顧客の要求も変化していきます。したがって、顧客はどこかで既存商品ではカバーできない機能を要求するはずです。

その要求を入手することに関し、御用聞き営業自体には問題はありません。しかし、御用聞き営業が聞いてきた要求に対応できなければ会社は存続できません。

したがって、「うちの会社は御用聞き営業しかやったことがないので新しい要求に対応できない」として、御用聞き営業が悪いという結論に至る現状認識は正しくありません。「御用聞き営業しかできないので、顧客の新しい要求に対してあわてて事後対応している」というのが正しい現状認識です。

事後対応でスト、別の顧客が同様の要求を持っておいても、それを察知して先行的に対応できません。同じ要求が繰り返された時に、「なんで先にそれを提案できなかったのだろう?」と思う事例がいくつもあるはずです。

この事情に気づけば解決に至ることを示したのが、次の図の①、②、③の順で考えた問題解決塗装業のソリューション・トークの例です。

スライド3

この例を見れば、次に示すようにソリューション・トークでの解決策の方がはるかに実現容易になることがわかります。

  • プロブレム・トークでの解決策: ソリューション営業プロセスの確立
  • ソリューション・トークでの解決策: 事後対応を事前対応に変える

なお、この問題解決塗装業の例は、オークマ工塗という会社に関する別のブログ記事(「ソリューション営業における顧客動線設計の優れた事例: ”オークマ工塗”」)から作成しました。興味のある方はご参照ください。

ソリューション志向の詳細:その起源と具体的方法

プロブレム・トーク(問題志向)とソリューション・トーク(解決志向)との考え方の違いをまとめると、次のようになります。

  • 問題志向が追求すること
    • 何がまずいか
    • 何を直すべきか
    • 過去の原因は
    • 何が足りないか、弱点は何か
  • 解決志向が考えること
    • 何が求められているか
    • 何がうまくいっているか
    • 今まででどこまでうまくいっているか
    • 何が使えるリソースか、強みは何か

非常に対照的ですね?さらに気づくことは、私たちが受けてきた教育は問題志向に著しく偏っているということです。

この偏りが問題を生むということを最初に発見したのは、セラピー(心理療法)の世界です。セラピーの世界では、永年近代的セラピーと称される問題志向のアプローチが取られてきましたが、そこには次のような問題があることがわかってきました。

  • なんらかの精神的問題(アルコール依存症など)を抱えている患者に対し、精神分析を通してその原因を見つけ解決しようとするアプローチを永年とってきた
  • 治療プロセスに数年を費やし200回もの面談を繰り返すが、効果が上がらないことも多かった
  • 「人間の心の中を分析すれば精神的問題の原因がわかる」という仮説に無理があることがわかった
  • 世の中には原因がわからない問題もあるという立場に立つべきである

この反省を踏まえて、フリーセラピーという解決志向のアプローチが提案され、次のような成果が得られるようになりました。

  • 問題を深く分析する代わりに、「どうなりたいか」、「何を手に入れたいか」という未来のイメージを作る過程を先行させ、そこに少しでも近づくために目の前の具体的な行動を変化させるように導くアプローチにも利点がある
  • 例えば、6回の面談で66%の治癒率を上げるなどの成果を出した
  • このアプローチが1990年代に広まり始めたビジネス・コーチングにも取り入れられるようになって、それなりの成果を挙げている

残念ながら偏向的な教育のせいで、このような知見が通常のビジネス生かされることが少なく、我々は問題志向に陥りがちだということを認識しておく必要があるのです。

問題志向の罠を避けてソリューション志向を実行する具体的な方法を下図に示しておきます。(図中の「相手」は、「クライアント」と呼んでください。)

紙面の関係上、この方法の詳細については、ソリューション・フォーカス という本を参照してください。(Amazonでのこの本の評価が訳が読みにくいなどの理由で低くなっていますが、私はそれらの意見には賛成しません。少々読みにくくても、読むに値する本です。)

まとめ

  • クライアントが一生懸命議論して導いた解決策が成果に繋がらない、という例は世の中に数多くある。プロのコンサルタントは、その事象がなぜ発生するかを分析してクライアントをガイドできなければならない
  • 成果に繋がらない解決策が導かれるのは、問題の分析にばかり集中する(過度のプロブレム・トークをする)からであることが多い。人は問題分析に熱中し解決策を疎かにする傾向があることを認識しておく必要がある
  • 実は、世の中にある問題が手も足も出ないほど難しいことはそれほどはない。問題そのものの中に解決の手がかりが含まれていることが多いので、それを探し出すことにも注力すべきである。この見方をソリューション・トークと言う
  • プロブレム・トークである程度問題の分析が進んだら、ソリューション・トークの併用も考えると良い。この方法で導かれた解決策は、通常プロブレム・トークだけでで導かれたものよりはるかに実現容易で効果が上がる。
  • ソリューション志向のアプローチは、心理療法の世界での反省から生まれた根拠のある方法であり、我々が受けてきた問題志向に偏った教育と異なる視点を提供してくれるので、コンサルタントは問題解決に有用な方法として心得ておくべきである