初心者のための一から始めるコンサルティング方法論開発手順


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方法論開発が難しいのは、コンサルタントなのに自分視点で考えるから

コンサルタントのキャリア形成法で、若手コンサルタントはまず方法論型を目指すべきだと書きました。

でも、そう言われただけでは、方法論型コンサルタントとはどのようなものを指すのか、そこに至るために何をすれば良いのかが分かりませんよね?

方法論って何だろう?その中に自分の強みをどう埋め込めば良いのだろう?、などと考え始めると終わりが見えなくなり、悩んでいるだけで時間が過ぎていきます。

散々時間をかけて構築したのに、友人に見せると、「それって、プロダクトアウトだよね。誰が対象クライアント?」などと一笑に付されたりもします。

どうにも方法論開発の時間効率が悪いようなのに、そこから抜け出す道が見えません。

この現象を、どこかで見たことはありませんか?そうですね、自分がコンサルティングをしている時の、クライアントが商品開発をしている姿そのものです。

そのことに気づけば、解決の道は見えてきます。コンサルタントが持つべき次の2つの基本的な心構えに戻り、今度はクライアントではなく「自分自身」の行動を見つめることです。

  • あくまでクライアント視点で物事を見る(自己都合でない)
  • どうやるか(How)ではなく、何をするか(What)から考える

すなわち、自分の強みが発揮できる方法論がどのようなものであるか (How) から考えるのではなく、クライアントにどういう価値 (What) を提供するのかということから考えればよいのです。

コンサルティング方法論の3つのパターン(経験者用と初心者用)

クライアントがコンサルティング方法論に価値を認めるのは、自分の問題が解けそうだ、すなわち今の世界(現状)から新しい世界(あるべき姿)へ行けそうだと思える時です。

このような価値を伝えるには、大きく次の3通りのやり方があります。

  1. クライアントが納得できる現状からあるべき姿に至る論理的手続きを示す
  2. あるべき姿のサンプルを示し、それとのFit/Gapを行えば良いと感じさせる
  3. あるべき姿へ到達するのに必要な分りやすいステップを示す

ここで、2と3はコンサルタントに経験があることを直接的に見せるものです。

2の例として、専門店での接客方法改革コンサルティング方法論の概念図を図2に、3の例として筆者がやっているパートナー型コンサルタントになるための方法論概略を図3に示します。(この記事の末尾に掲載)

これらはクライアントには価値が非常に分かりやすいので、自分の経験からこのようなものが作れるのであれば、これらの方法に則って開発すべきです。

しかし、コンサルタント初心者にはかなりハードルが高いものです。その場合には、1のパターンで、面倒でも基本に則って一から順番に開発していくしか方法がないことになります。

以下、この初心者用の方法論開発について、その手順を説明していきます。

手続き型方法論が満たすべき条件と、その開発手順

クライアントにとって手続き型方法論の価値があるとすれば、それは次の3つの理由によります。

  1. その手続きに従えば自分の問題が解けそうだと信頼できる
  2. 手続きがいくつかの大きなステップに分けられていて、各ステップで何をするかが理解できる。したがって、自分の考え方・意見が反映されていることを確認できる、あるいは反映されていなければ異論を唱えることができる。その結果、最終結果に到達した時に、その内容に合意できる
  3. 手続きの中にコンサルタントのノウハウが埋め込まれていて、その方法論を使わない場合よりも迅速にかつ品質の高いアウトプットが得られそうだと感じられる

大手のコンサルティング・ファームで修行していると、これらの条件を満たした方法論を先輩から教え込まれます。その結果、これらの条件を特に意識していなくても、問題を起こさずに仕事ができてしまいます。

しかし、自分で何もかも作り上げなければならない独立コンサルタントは、自分の方法論についてのこれらの点への配慮が行き届かないと、意図せぬところでクライアントの抵抗に出会うので、要注意なのです。

問題が解けそうだと思ってもらうには(方法論の基本形)

まず先の条件 α、β を満たす方法論とはどのようなものか、その基本形について考えてみましょう。

それは、当然ながら問題を解決する手順そのものが、クライアントが理解できる形で埋め込まれていることです。

ここで、当ブログでも何度も述べているように、「問題とは、こうありたいと望む姿と現状とのギャップのこと」です。ありたい姿と現状が一致していれば、皆満足していて、何の問題も存在しないはずだからです。

そして、問題解決とはこのギャップを解消する作業ですから、図①のような手順になるはずです。すぐにお分かりのように、この手順は問題の定義と自然な(当たり前とも言って良い)対応をしています。

コンサルタントのキャリア形成法で、Aさんが策定したブランド・コンセプトに社長が乗り気でないというケースに触れました。

そのAさんにこの図を見せたところ、Aさんは「あっ!」と叫びました。そして、こう続けました。

「そうか、そうだったんですね。私はこの手順を踏まず、解決策だけを示したんですね。それでは、社長が乗り気になれないのは無理もありませんよね!」

繰り返しですが、この手順は問題の定義と自然な対応をしています。したがって、この手順に従えば問題が解決できることが、誰にでも(社長にも)納得できるはずです。

また、ステップ化されているので、それぞれのステップでクライアントと合意が取れるまで議論すれば、当然最終結果は合意されたものとなります。

以上が、クライアントにとっての方法論の価値 α、β の実現方法の基本です。

方法論のノウハウ的価値の実現法

つぎは、価値 γ の方法論に埋め込まれたノウハウについてです。

先に述べたように、方法論は問題解決を迅速にかつ品質高く実行するためのものです。そのために、図①の問題解決の手順になんらかの工夫を凝らしたものであるはずです。

そのことに思い至れば、方法論のノウハウ的価値は、問題解決手順に以下の工夫を施した結果発生するものであることがわかります。

  1. ビジネス上価値があり(依頼案件が多く見込め)かつ一定の方法で効率よく効果的に解決できる問題範囲の選択(限定)
  2. 効率的に到達できる「あるべき姿」の限定
  3. 2.で限定された「あるべき姿」と「現状」の差を明確化する「現状分析方法」の確立
  4. 現状分析結果から「あるべき姿」と「現状」のギャップを検出し、その解消策を考案するための知識・経験則の蓄積
  5. 以上をまとめた、方法論の提示

業務フロー改善方法論への応用例

これらの工夫を、ある人(Cさん)が業務フロー改善コンサルタントとして、自分の方法論を構築しその価値をアピールしようとする例で考えてみましょう。

取り扱う問題範囲の選択

まず、Cさんは「業務フロー改善」という言葉でどの範囲の問題を扱うかを、クライアントにわかる言葉で説明しなければなりません。そうでなければ、クライアントは自分の問題の解決をCさんに頼んで良いのかがわからないからです。

この内容の良し悪しは今回の議論の対象ではありませんので、ここでは 事業計画書の読み方と書き方がよ〜くわかる本 を参考にして、次のように決めることにします。

  • 対象とする業務フローとは、顧客に商品やサービスを提供するために、「誰が」、「何を」、「どうやって提供するか」を時間を追って示したもの。(ここで顧客とは企業の最終顧客だけでなく、(次工程の)社内顧客も含むものとする)
  • ここで取り扱う業務フロー改善とは、企業が価値を最小コストで安定して継続的に提供し続けるようにするために、フロー内の「無駄、無理、ムラ」を取り除くこととする(ここで、無理とは負荷が能力を上回っている状況、無駄とは逆に負荷が能力を下回っている状況、ムラはムリとムダの両方が混在して時間によって現れる状況を指す)

この定義で、Cさんは業務フローの効率の改善は行うが、そのフローで提供される商品やサービスの品質そのものの改善は取り扱わないことを宣言しています。また効率の改善なので、現状分析で明らかになった不具合の解消をしたものが、結果的にですが「あるべき姿」となります。

以上で、工夫の1、2が完了したことになります。

自分の方法論が取り扱う問題の範囲を明確にしておかないと、クライアントに過剰な期待を抱かせトラブルのもとになるので、要注意です。

 方法論の中身の構築

方法論が取り扱う問題の範囲を明確にしたら、次の仕事はその範囲の問題を解決する方法を示し、クライアントに信頼感を与えることです。

クライアントに問題解決ができると信頼してもらうためには、クライアントが受け入れている図①の形式を援用することにします。ただし、Cさんは改善の範囲を「無理、無駄、ムラ」の除去に限定していますから、「あるべき姿」を論じる部分は省くことができます。

その結果、Cさんの方法論は図②のような形式で良いことが分かります

残るは、各ステップの詳細の構築です。たとえば、以下のような定義をします。

  1. 目的の確認:対象の業務フローが何を達成しようといているのか、すなわち提供価値は何か、そしてこのプロジェクトで何を改善するか、それをどう測るかを明確化する。
  2. 現状の把握:現状業務フロー(誰が、何をしているかの順)をあらかじめ決めた形式(たとえば 上流モデリングによる業務改善手法入門 参照)で書き表し、問題点が把握できるようにする。さらに、無理、無駄、ムラを検出できるように、各業務の前にどれくらいの業務量が到着・滞在しているかを記録する(図②で「業務フロー及び業務量分析手順」を詳細記述する。工夫の3)
  3. ギャップの認識と解決策の考案:各業務で、無理、無駄、ムラが生じているかどうかを判定し、生じていればその解決策を考案する(後述の工夫の4に関する記述を参照)
  4. 以降は図①に同じ

以上で、工夫の5までが完了となります。

 方法論の適用事例と効果

すごく簡略した事例でこの方法論の使い方と効果を論じてみましょう。

Cさんが、ある企業から、顧客への納品プロセスを改善したいという要望を受けました。

方法論に従えば、最初のステップは業務フロー改善目的の確認です。そして、クライアントの要望は納品プロセスの費用対効果を高めたいというものでした。

この要望に従って、現状分析をしたところ図③Aのような業務フローが得られました。(ここで、箱の中に示されている数字は各業務の月当たりの製品処理能力で、箱の直前に示されているのは、その業務への月当たりの製品到着数です。)

この場合、あなたはどのような解決策を考えつきますか?

すぐに気がつくのは、仕分け業務への製品到着数が60個/月であるのに対し、仕分け業務の処理能力が90個/月あることです。明らかにこれは無駄が生じています。

そこで、あなたは解決策として仕分け業務に雇っているパート社員の人数削減を提案します。あるいは、他社の仕分け業務をアウトソースで請け負っても良いかもしれません。簡単なケースなら、これでコンサルティングは終わりです。

しかし、Cさんは納得しませんでした。

よく見ると現状にはもう一つ変なところがあるからです。他の業務への製品到着数がいずれも60個/月であるのに対し、発送業務のところだけ85個/月と増えていることです。

Cさんが不審に思ってクライアントに問いただすと、実は顧客への発送の宛先間違いが25件/月発生していて、実態は図③Bのようであることがわかりました。そして、この宛先違いという無駄な作業が顧客への納期遅れが発生させていたのです。(納期遅れは1週間程度なので、顧客への月当たりの到着数には大きく影響しないために、顧客への到着数では異常が検出できませんでした。)

こうなると、プロジェクトの目的は第一に納期遵守となるべきです。

Cさんは、仕分け作業によって発生している誤配という無駄の除去を最初の取組課題とすべきで、それが解決した後で、仕分けや発送業務の余剰能力の扱いに取り組むべきだとアドバイスしたのです。

現状業務フロー分析

Cさんは、この分野での経験豊富でノウハウがあったために、この異常を検出できたのです。方法論コンサルタントとして行動するためにはこのようなノウハウの蓄積も必要です。

たとえば、無理・無駄・ムラを取り除くためには、次のようなノウハウを身につけておくと良いでしょう。(その結果を図②に「ムリ、ムダ、ムラ検出法」として追加しておくべきです。工夫の4)

このノウハウの獲得は一見大変な作業に見えますが、実は取り扱う問題の範囲を限定してしまえば、類似事例を勉強すること(トヨタ生産方式 を読む、等)で比較的簡単に蓄積が可能です。

  • 無理は、後方業務の処理能力をよく理解していない営業や上位者の指示から発生することが多い。後方業務への無理な詰め込みは、処理の遅れとなり、最終的には顧客への商品・サービスの提供遅れ、あるいは失注(無駄な作業)となる。したがって、最終結果から遡って、不合理な作業をしていることを示すことが解決のカギとなる。
  • 無駄は、処理能力が余っているケースと、作業結果が後方業務で利用されていないケースの少なくとも二通りが存在する。前者は、該当業務への処理依頼の量と処理能力を比較すれば比較的容易に検出できる。しかし、後者はフローを追いかけて後続業務での処理状況を調べなければならないので、要注意である。ただし、通常の業務で不要な作業をしていることはあまりないので、過去に必要であったものが現在不要となるような歴史的変化を調べることがコツである。
  • ムラは時間的な環境変化で発生することが多い。たとえば、天候不順による需要変動やクリスマス商戦で大量の商品が必要となるようなケースである。前者は、ある程度のバッファの設置、後者は作りだめのような平準化が解決策となる。

方法論を使いこなすために心得ておくべきこと

この例は非常に簡単なものですが、方法論の使用について次の教訓を与えています

  • 方法論の適用開始時にプロジェクトの目的を確認することが重要だということをコンサルタントが認識している必要がある。このステップをいい加減にやり過ごすと、③Bのようなケースを気付かずに過ぎてしまう危険がある。
  • このステップは当たり前のように思え軽視されがちだが、実はコンサルタントが経験豊富で方法論の意味を本当に理解しているかどうかを判別する機会を与えてくれる重要なステップである。
  • 現状分析の方法は、取り組む問題に合わせて設計しておくことが重要である。たとえば、無理・無駄・ムラの検出が目的の場合に、各業務の負荷(例では製品の到着件数)が調査されていなければ、問題の兆候を検出できない。実は、問題の兆候を検出できる現状分析方法は、それ自体がノウハウなのである。(工夫の3の重要性)
  • コンサルタントは、自分が扱う問題群に対して現状分析結果から課題とその解決策を導き出す一定程度のノウハウを身につけておく必要がある。たとえば上の例でノウハウがないと、単なる業務フロー記述の担当者に成り下がる。(工夫の4)

まとめ

  • 方法論型コンサルタントになろうとするのなら、クライアントにとっての方法論の価値の理解から始めることが必要である
  • クライアントに方法論の価値を認めさせるのには3っ通りのやり方があるが、初心者は一から順に問題解決手続きを示す方法を取るべきである
  • クライアントにとっての手続き型方法論の価値は、その方法論に従えば問題が解けそうだと思えること、途中で自分の意見を差し挟めるので最終結果に合意できること、コンサルタントのノウハウが反映されておりその方法論を利用しない場合より迅速で品質の高い結果が得られそうだと感じられること、の3つである
  • コンサルタントが自分の方法論を構築しようとする場合は、上記の3つの価値を実現することが必須であり、最初の条件として、問題解決の基本的手順に沿っていることが必須である
  • コンサルタントのノウハウ反映箇所は、取り扱う問題範囲の上手な設定、到達すべあるべき姿の限定、現状分析方法、ギャップ検出および解決策考案知識、および以上をまとめた全体問題解決手順の5つである
  • 方法論を使いこなすためには、上記に示される方法論の価値の源を熟知している必要がある