次の仕事が取れる評価の高いレポートを書くコツ:信憑性の見える化


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営業ができないコンサルタントが、なぜ次々仕事を取れるのか?

知り合いにエンジニア出身の独立診断士Aさんがいます。エンジニアらしく緻密に仕事をする点は素晴らしいのですが、容易に想像できるように営業は得意ではありません。

でも、なぜか売上数億円以上の企業の仕事が次々取れています。不思議に思って理由を聞くと、金融機関や会計事務所から紹介してもらっているとの返事です。

そうなると、次の疑問はなぜ(この広義のクライアントである)金融機関や会計事務所が紹介をしてくれるかということです。

ご承知のように、これらの組織は問題解決のプロではありませんし、扱う問題も自分たちのものではないので内容に詳しいわけでもありません。問題解決の良し悪しの判定基準を持たないのに、Aさんを信頼して紹介しているのです。

不思議ですね?でも、ある時その謎が解けました。

製造業出身のAさんがアパレル産業の支援をすることになりました。その時に、自分は門外漢なので見当違いをしていないか確認してくれ、と私に頼んできたのです。

頼まれたのは、デューデリジェンスの結果のチェックです。細かいところにコメントすることはありましたが、全体に特に文句をつけることはありませんでした。

それにも増して納得したのは、レポートが綺麗なことです。必要なことが一通りカバーされていることが、ざっと見ただけで理解できるのです。

ご承知の方も多いかもしれませんが、独立診断士にはきちんとした分かりやすいレポートを書かない人が大勢います。その人たちとAさんとの差はひと目でわかります。

ここで注意していただきたいのは、私が見たのはデューデリジェンスの結果であって、問題解決のはるか以前の資料です。それでもコンサルタントの力量が窺い知れるのです。

では、クライアントは何を見てこの力量の差を感じるとるのでしょうか?

クライアントが評価するのはレポートの「信憑性」

コンサルティングとは、どのような商売でしょうか?こう聞かれると、普通は「クライアントの問題を解決する商売」と言う答えが返ってきます。

でも先ほどのAさんの例では、クライアントの問題を解決する以前にAさんの力量が判断されています。どうやら、コンサルティングの商売としての見方を変える必要性がありそうです。

実は、このことはコンサルティングに限らず、広く弁護士や投資アドバイザーなどのクライアント相手のプロフェッショナル商売に共通することなのです。

自分がクライアントになってみれば、プロとして成功するために何が必要かはすぐにわかります。一番身近なのは、医者と患者の関係でしょう。

私が通っている六本木のクリニックの例で考えましょう。非常に流行っているので、院長以外にパートタイムで雇われている医師が何人もいます。

院長は非常に穏やかで、患者の話をよく聞き、状況を丁寧に悦明してくれます。でも雇われ医者は、どちらかというと一方的に処方を述べる人が多いです。

皆さんはどちらの医者にかかりたいと思われますか?我々には、どちらが医師として優秀なのかはわかりませんが、私は院長の方が好みです。

これが意味するのは、プロフェッショナルというのは目の前のタスク(病気の診断、企業の問題解決など)を片づけるだけのビジネスではなく、何よりもその前に人間関係ビジネスなのだということです。

クライアントにとっては目の前の仕事が片付くのは当たり前であり、その結果に至る仕事振りでプロを選り好みするのです。ですから、プロは人間関係への配慮の仕方ででも自分の価値を伝えなければならないのです。

プロフェッショナル・アドバイザーという本がこのことを解説しています。この本によると、クライアント相手のプロフェッショナルの商売の成功の秘訣は、クライアントの信頼を勝ち取ることだと言うのです。

クライアントに信頼されなければ、問題解決に成功してもリピートは取れません。クライアントに信頼されていれば、もし必要であれば、クライアントにその問題の解決を断念するように迫ることもできます。目の前の問題を解決することだけが仕事の目的とはならないのです。

この本によれば、信頼は次の4つの要素から構成されます。

  • 信憑性(Credibility):言っていることが正しい/妥当だと信じられる
  • 信頼性(Reliability):行動が一貫していて頼りにできる
  • 親密さ(Intimacy):感情面での距離が近く安心できる/落ち着ける
  • 自己指向性(の低さ)(Self-orientation):自分中心的・利己的(でない)

この中で書き物であるレポートが関係するのは信憑性です。

レポートというのは、クライアントが提示したと問いに対し、これが答えだと主張するものです。この主張が正しいと思える程度が信憑性です。

クライアントが問題解決を依頼したとき、レポートに解決策が書いてあるのは当たり前です。それだけでなく、その解決策が妥当なものだとクライアントが納得できるようになっているかどうかで、コンサルタントの質が評価されるのです。

Aさんのデューデリジェンスのレポートは信憑性が高かったから評価されたのです。

では、レポートの信憑性を高めるためには何をすれば良いのでしょうか?

信憑性の高いレポートの構成法

信憑性を高めるための着眼点

ここでも、まずクライアントの視点で考えることが重要です。

ということで、クライアントが問題解決の信憑性を判断するときに求めることを考えてみましょう。

クライアントが納得したいのは、今までクライアントが(苦闘しても?)解けなかった問題がなぜ今回解決したかその理由と、問題をどうやって解決したのかの筋道、の2点でしょう。

このためにコンサルタントが気をつけるべきことは、次の2つです

  1. 今まで解けなかった問題を解決するためには、その前提を疑う
  2. 問題を解決した筋道を理解させるためには、良い論証の条件に従う

まず前提を疑うということについてです。このことに関しては、アインシュタインの次の有名な言があります。

“今日我々の直面する重要な問題は、その問題を作った時と同じ考えのレベルで解決することはできない”

つまり、問題が存在するのはその問題が難しいからではなく、そもそも問題が発生したからです。問題を発生させた人の考え方に根源があるのであって、その考え方を変えない限り解けないのです。

コンサルタントとして有名な大前研一氏もその著書「質問する力」の中で、繰り返し「前提を疑え」と言っています。

コンサルタントは、クライアントが問題を解けずに困っている時に支援を要請されます。その時最初に、クライアントが前提として動かさない(そのために問題が解けないままになっている)考えを疑うことから始めるべきだと言っているのです。

次に気をつけるべきは、良い論証の条件に従うことです。この条件は、論文の教室に従えば次の3つです。

  • 主張に対して、その根拠が示されている
  • 根拠自体が十分な裏付けを持っている
  • 根拠から主張を導く流れが妥当な論理形式に従っている

この3つの条件は一見当たり前のことを言っているように見えますが、その通り実践することはかなり難しく、それなりの修練を要します。

事例を通して理解する、前提を疑い、よい論証をすることの効果

これらの2つのことに着眼するとどうなるかを、実例で見てみましょう。

部品製造会社のある事業部が抱えていた問題です。

その事業部では、主要顧客からの次次年度のビジネスがほぼゼロとなり、メンバーが「茫然自失状態」と自嘲する事態に陥っていました。その原因は、競合メーカーとの開発スピード競争に負けていたことにあります。

スピード競争に勝つためには設計人員増強などの投資が必要ですが、事業が落ち込んでいる部門への本社からの投資は見込めず、どうにもならなくなっていました。

その問題解決に招かれた外部コンサルタントが前提を疑いました。コンサルタントが言ったのは、次のことです。

  • 「開発スピードを上げるためには投資が必要だ」という考えは必ずしも正しくしくはない
  • 開発人員がプロジェクトの掛け持ちをしていて負荷が過大になっている時には、プロジェクト数を減らせば開発スピードが上がる。そして、そもそも開発競争に負けることがわかっているプロジェクトを間引いたところで、ビジネス的に損はない
  • 文献を調べると、世界中の開発機関の95%以上がプロジェクトの詰め込みすぎをして開発人員に過大な負荷をかけていることが分かっている。この事業部も例外ではないはずだ

この新しい考えを仮説として現状調査をしてみると、次のようなことがわかりました。

  • 重要顧客からのサプライヤー評価で当事業部の評価が3番手、4番手と下がってきているので、営業は顧客の引き合いに丁重に対応しないと次のビジネスがないと考え、引き合いを次々と受け入れ断ることをしない
  • 設計は、毎日10時まで残業していて体力的に限界の状態で、人員を増強してもらえないので、これ以上のスピード向上は無理。また、掛け持ちをしているが、どのプロジェクトを優先すべきかわからないので、納期が迫ったものから片付ける

この状況をまとめると次の図の悪循環を引き起こしていることがわかります。

この図を抽象化すると、次のシステム図が得られます。ここで、→と±の意味は、「試作する引き合い件数」を増やすと「スペッックミート時間」も+(順方向)で増える、というように読みます。(―は逆方向の作用をします。)

この図をよく見ると、試作件数を増やすとスペックミート時間が長くなり顧客満足度が下がるが、同時に、その逆に試作件数を減らせばスペックミート時間が短くなり顧客満足度が上がる、ということがわかります。

つまり、図の赤いところに着目し、ビジネスが減っているというプレッシャーに負けずに競争に勝てそうな試作にのみ集中すれば、逆にシェアが増えるということが言えるのです。

ここまでで得られた論証の構造は、次のようになっています。

  • 主張:引き合いに対応する試作件数を減らすことで、スペックミート時間を短縮でき、シェアを向上できる
  • 根拠:図で示される悪循環(ここに現状として書かれているものは全て事実で裏付けられている)
  • 論理形式:システム図の一部の要素を反転させれば全ての結果は反対になる

プロジェクトの報告会でこの主張をしたところ、社長から「これやー!これをやって欲しかったんやー!」と激賞されました。そして、2年後にシェアが大幅に回復したのです。さらに、この報告を見ていた隣の事業部長もこのアイデアを採用し、事業を改善させました。

このように、前提を疑うことと良い論証を行うことを徹底すれば、クライアントの上層部にも価値を認めてもらえる報告ができるのです。

レポートの評価を高める改善例

ここからは実例を添削することで、ポイントを再確認することにしましょう。

典型的なレポートの問題

最近相談を受けた在庫削減プロジェクトの中間報告の例です。その中間報告は、概略次のように書かれています。

「当社は、A、B、Cの3工程により製品を生産し、A工程を機械化し大量生産低価格化で市場優位性を確保してきました。しかし、顧客製品の多様化により小ロットでの注文が増え、在庫の増大や納期遅延の頻発という問題を抱えています。この問題を解決するために、A工程の段取り替え時間短縮を試みました。その結果、A工程の段取りを現状の(1 機種 1 名)から、(1 機種 2 名のチーム制)に変更することで、段取り時間を約 3 割短縮できる目途が立ちました。これにより、月次の生産品種を約 3 割増加(90 機種→120 機種) できるようになり、在庫金額を3 割縮小できます。」

このレポートを見て、皆さんはどう思われますか?かなりの成果を上げていて、喜ばしい限りですよね?

でも、このレポートには、問題があります。

クライアントから評価される2段階構造のレポート・ライティングで、レポートには問いと主張と論証が必要だと書きました。ここで問題解決においては、問い=問題、主張=解決策、論証=解決策が導出される筋道、という対応関係があります。

この枠組みから見ると、上記の概略には問いと主張はありますが、論証がありません。さらに、問題が解けなかった時の前提も書かれていません。

すなわち、段取り替えで問題が解決できたのに、なぜクライアントが段取り替えに取り組んでいなかったのかの理由と、それをどう解決したのかが書かれていません。

世の中には、このようなレポートが多数存在します。問題と解決策だけが書かれてあり、どうやって問題を解決したかが書かれてないのは、担当コンサルタントが論証の必要性を理解していないからです。

しかし論証がないと、手当たり次第にいろいろ試してみた結果、偶然に段取りがうまく行ったのと何の差もないことになります。これではコンサルタントの価値は明らかにならず、次の仕事が取れません。

コンサルタントのレポートは、クライアントを紹介してくれた人(金融機関や会計事務所など)も見ているはずであり、その人たちにもコンサルタントの価値がわかるようにしなければ、リピートが来る確率がさらに低くなります。

このレポートは本来どう書くべきだったのか、添削を進めてみましょう。

前提を疑い論証することによる例題レポートの改善

まず、前提を疑うことから始めます。

実はこのケースでは、もともと次の前提がありました。納期遅延の原因はB工程のキャパシティ不足にあり、A工程のこれ以上の段取り替え時間短縮は無理だ、という現場の意見と抵抗が強かったのです。

この前提(現場の意見)が間違っており、しかも段取り替え時間短縮が可能だということを示して初めて、現場の協力が得られ問題が解決したのです。

したがって、このレポートでは以下の2つを段階を分けて説明する論証が必要です。

  1. なぜ段取り替えで元の問題が解決するのか、またそれ以外の解決策がないのか
  2. なぜ段取り替え時間短縮が可能なのか

それぞれを順を追って論証してみましょう。

1について調査すると、実はBには顧客の注文を処理する能力が十分にあることがわかりました。それなのに、AとBとの間に大量の在庫が存在し納期遅延も頻発しています。

と言うことは、AがBが必要とする部品を必要なタイミングで作っていないことが諸悪の根源と言うことになります。ですから、この問題を解決するためには、Aの段取り替え時間を短縮し小ロット生産をする以外の方法はありません。

これで、次の主張、根拠、論理形式が揃いました。

  • 主張:Aの段取り替え時間を短縮し小ロット生産をする
  • 根拠:Bには顧客の注文を処理する能力が十分にある。AとBとの間に大量の在庫が存在し納期遅延も頻発している。その理由は、Aが部品生産の順番をBが部品を必要とする順番(顧客の注文順に生産する順番)に合わせていないからである
  • 論理形式:判明した問題の原因を取り除けば、問題は解決する

残る問題は、Aの段取り替え時間の短縮が可能かどうかということです。これに対しても、段取り替え時間が作業者ごとにバラついており、ベテランの手法を初心者に教えれば時間短縮が可能だと言うことがわかり、次のように整理できました。

  • 主張:ベテランの段取り替え手法を初心者に教えれば全体の段取り時間短縮が可能
  • 根拠:段取り替え時間が作業者ごとにバラついている(初心者は段取り替えに時間がかかる)
  • 論理形式:判明した問題の原因を取り除けば、問題は解決する

これらを合わせれば、信憑性の高いレポートの内容が整うことになります。

最後の工夫:ピラミッド構造での見える化

さて、残る問題はこの論証をクライアントにわかりやすい形式で提示することです。内容的に信憑性の条件を満たしていたとしても、それがクライアントに伝わらなければ意味がないからです。

伝え方の工夫に有効なのが、バーバラ・ミントが提唱する次の考え方に立つピラミッド構造です。(詳しくは、「考える技術・書く技術」を参照ください。)

  • 人間が一度に理解できることは限られる
  • 読み手にとって最もわかりやすいのは、まず主たる大きな考え方を受け取り、その後にその大きな考え方を構成する小さな考え方を受け取るという並べ方である。そのために、上から下に降りるピラミッド構造で考え方を並べる
  • すなわち、ピラミッドの縦の関係は上部の考えは下部の考えを要約したものにする
  • 横に並んだ考えのグループは何らかの論理形式に従うものとする(時間の順序、構成の順序、度合いの順序、原因と解決策、など)
  • ピラミッドの上部で大きな考えを述べると、読み手はなぜそういう考えとなるのか書き手に対して疑問を持つ。そこで、ピラミッドを一段降りてその疑問に答えていくという順にすると、読み手とのコミュニケーションが楽に進む

この構造に従って、レポートの構成を作ると以下のような順になります。(番号は、以下の図の番号に対応)

  1. まず、ピラミッドの最上段で、一番大きな考えである問題と前提を述べる(①)
  2. 次の段で、段取り替えで元の問題が解決することを述べる(②、③、④)
  3. ただし、それだけでは段取り替え時間の短縮ができることは示せないので、さらに下の段でそれが可能なことを示す(⑤、⑥)
  4. 段取り替え時間短縮ができるので中段の解決策が完成することを示す(⑦)
  5. 以上をまとめて、最上段で全体の問題が解決できることを示す(⑧)

レポートを書く前に、この図のような問題解決の構造を明確化しておけば、わかりやすいレポートが書けることになります。当初のレポートは、論証にあたるこの図の中段や下段も省略したため、解決策の根拠が不明なレポートとなったのです。

前提を疑いよい構造の論証をすることによりレポート内容の信憑性を高める、その内容を階層的に理解しやすく提示する、という2つのことが揃って、次の仕事につながる評価の高いレポートが書けることになるのです。

まとめ

  • コンサルティング・レポートの書き方の良し悪しで次の仕事が取れるかどうかが変わる。レポートの書き方でコンサルタントの力量が判断できるからである
  • クライアントがレポートの出来を判断する基準は、レポートの信憑性にある。信憑性とは、書かれている主張が正しいと思える程度の強さのことである
  • 信憑性の高いレポートを書くコツは、問題がなぜ解決できたかの理由と、解決策に至る筋道をわかりやすく示すことである。このためには、前提を疑う能力と論証能力を磨く必要がある
  • 信憑性の条件を満たしていたとしても、それがクライアントに伝わらなければ意味がない。クライアントにわかりやすく信憑性を伝えるためには、問題解決の構造を階層的に説明すべきである。そのための手法としてピラミッド構造を利用するのが良い