変革点⑤ (続き)注目を集めるトリガー詳細(フレーミング、破壊、報酬)(信頼獲得に至る4段階:その2)


Last Updated on 2021年8月30日 by 時代遅れコンサルタント

前回、市場で希少資源である注目を獲得するためには、それに有効な「トリガー」を使うべきだと書きました。今日は、そのうちで特に覚えておくべき3つのトリガー、「フレーミング、破壊、報酬」の詳細を説明します。

突然ですが、皆さんはコンサルティング提案書の書き方(フォーマット)を心得ておられますか?

この記事は、人生100年時代に長年勤めた会社を定年などで辞めた後、それまでの経験をもとに顧客企業にビジネス上のアドバイスをして生計を立てる人(コンサルタントなど)を主対象として書いています。その種の人たちは、仕事の契約を勝ち取るための何らかの形態の提案書の書き方を理解しておく必要がありますよね?

細かい話を別にすれば、提案書は概ね以下のような構成で書かれます。

  1. 顧客の困りごとの確認
  2. その困りごとの解決アイデア(仮説)
  3. 解決法の詳細
  4. スケジュール・体制・費用・リスク、など
  5. 実績(自分がこの問題解決にふさわしい理由)

そして1, は、「これまでの会話でお客様の困りごとは〇〇であると理解しましたが、それに間違いないでしょうか?」という風な書き出しで始まるのが普通です。それが顧客の関心を惹くものでなければ、以後何を述べても相手は聞いてくれないからです。この書き出しに相当するのがフレーミングです。

およそ何事でも、自分が述べることに関心を持ってもらおうと思うのなら、それが相手の関心事に含まれる内容であることの確認から始める必要があるのは、火を見るより明らかです。たとえば、昨今のコロナ禍で売上が激減し生活にも困っている人に、コスト削減のアイデアを提供しようとしても、耳を貸してくれるはずはありません。

と偉そうに言っていますが、基礎研究所からコンサルティング部門に移動した当時の私は、研究者の唯我独尊の気風が抜けず、提案書を2.から書き始めていました。そのために提案が売れず、鳴かず飛ばずの3年間を過ごしました。

世の中には私ほどひどくはないにしろ、相手に受け入れやすいようにフレーミングをしてから会話を始める、というごく基本的な配慮ができない人が山ほどいます。市場で仕事を取ろうと思うのなら、そこから叩き直す必要があるので、フレーミングの大事さを心得ておいてください。

この配慮が必要な理由は、人には根強い確証バイアスがあるからです。我々は自分がすでに持っている判断基準を用いて情報を処理します。その判断基準に合わない情報は、簡単に捨てられてしまうことが多いのです。人は、何かあるたびに一から新たな判断基準を作るなどのことはしません。

逆の立場から見ると、相手の世界観(判断基準)を変えることはとてつもなく難しいということです。聞き手は、自分の判断基準を変えてまで相手に耳を貸す精神的エネルギーなど、そもそも持ってはいないのです。

この問題を回避するためのフレーミング・トリガーとは、次のような作用をするものを指します。

  • 相手の判断基準を理解し、その判断基準に合うように伝え方を変える
  • 「おなじみの感覚」を演出する
  • 送りたいメッセージを相手が受け入れやすくなるように、アイデアの見せ方を変える

フレーミング効果で相手が話の出だしを受け入れてくれたら、次にやることは相手の世界観の「破壊」です。当初の世界観のままにしておくと、相手は通常状態のままなので会話は通り過ぎていくだけです。内容を覚えておいてはもらえません。せっかくの内容が、相手の作業記憶に入ってもそのうち消えていき、長期記憶には移されないからです。

覚えてもらうためには、驚きが必要なのです。驚かせ、単純な内容を理解させ、その重要性を示すというセットで畳み掛けるのです。予想を裏切り破壊すると注目されるのです。

また、破壊するとは現状を変えることです。ビジネス上のアドバイスをするときは、現状の不具合を変えてもらうことを提言するはずなので、この点からも破壊が伴うのは必然なのです。

破壊トリガーの背後にあるのは 期待違反理論です。人間は、自分の期待に反する何かが起こると関心を向けざるを得なくなります。同時に、その違反行為にポジティブかネガティブな意味を即時にあてがわなければならなくなることが知られています。このことにより注目を強化せざるを得なくなるのです。もちろん、驚きは相手の期待に沿ったポジティブなものの方が良いので、その配慮が必要です。

また、単純なアイデアは複雑なものより注目されます。単純さは、注目の敵である認知負荷(注目を要するタスクが「作業記憶」に求める精神の作業負荷量)を下げるという意味で重要です。(たとえば、初代iPhoneはボタン一つしか持っていませんでした。)

例を挙げましょう。QCDのレベルが高いのに下請けから脱却できない部品メーカーが悩んでいる時に、「QCDを高めようとする考え方そのものが間違っていて、顧客の顧客が求める付加価値を実現すれば良い」と説くのが破壊の例です。

私のコンサルタントのゼミに来る人に「コンサルタントはどういう商売か?」と問えば、殆どの人が「クライアントの問題を解決する商売だ」と返事します。ですから、彼らの頭の中に第一に浮かぶ質問は「この問題はどうしたら解けるのだろう?」です。私は、プロのコンサルタントとしては、この世界観は間違っていると思っています。

コンサルタントに相談にくるクライアントは、自分で問題を解こうとしたのに出来なかった人が普通です。その時に問うべき質問は、「この問題はなぜ解けないままでいるのだろう?」であるべきです。こうやって、私のクライアントであるコンサルタントの世界観に挑戦します。世界観が破壊され私の見方に賛同する人たちのみを、私のクライアントにしている訳です。

破壊で注目を強化したら、それを長期化してもらう(注目を作業記憶から長期記憶に移してもらう)必要があります。その手段に使うのが報酬です。人間も含め全ての動物は、目的を達して報酬を得るために発達してきた生き物です。子孫を設けるセックスには快楽、食物を探す狩猟には栄養、難解なパズルを解けば満足感、という報酬が得られます。我々の体は、心地よいか健康と生存に有益な習慣を発達させるように訓練されているのです。

そして、我々の報酬システムは、次の2つの部分から構成されています。

  1. 何か魅力的なものを提示されると、それを「欲する」という欲望を与える部分。このときドーパミンが分泌され、快楽を求めて行動するモチベーションが生じる
  2. 行動の結果快楽や満足が得られて、それを「好きになる」部分。この時、オピオイドが分泌され気持ちが良くなる

つまり、何か報酬が得られそうだと感じると、ドーパミンが分泌され、行動しようというモチベーションが生まれるのです。ですから、市場で注目を得ようとする場合は、ドーパミンが分泌されることを目指す必要があることになります。

そのためにすべきことは、相手の欲しがっているものを可視化することです。よく問題解決方法をノウハウに絡むと隠す人が多いですが、それは逆で、その方法を使えば問題が解決しそうだと分からせるべきなのです。この可視化には、言葉よりはイメージの方が有効なので、それを知った工夫が必要です。

この3つのトリガーの組み合わせを理解したら、次はどう応用方法するかですが、実はその例はマーケティングや営業の世界で数多く存在しています。次回は、そのことを集客セミナーの例で示しましょう。