現状分析の落とし穴を避けるコツ:原因と結果の時間差を追跡する


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現状分析の視野が狭く見落としがあるのは?

若手コンサルタントのAさんは現状分析に苦手意識があり悩んでいます。いつも考え落ちがあり、それを先輩のBさんに指摘されているからです。

例えば、ある地方の製造小売のチェーン店の売り上げが落ち込んでいるので、消費者の好みの変化に合わせてブランドコンセプトの再構成をしようとしていました。

そのときBさんに、「売り上げが落ち込んだのはいつから?その頃から地域の人口が減っているのなら、ブランド再構成ではなく別の地域への出店を考えるべきだよね?」と言われました。

先輩の仮説が正しいかどうかは別として、そのような検討を全く思いつかなかった自分にがっかりしてしまいました。

別のケースでは、ある部品メーカーC社が新市場に進出しようとしていました。

C社は既存市場では過半数のシェアを握っていて、昔からの顧客が指名買いをしてくれています。

ですから、営業は御用聞きをしていればよかったのです。しかし、既存市場は規模が小さく、かつ売り上げが景気に左右されるという問題がありました。

そこで、新市場に進出しようと考えたのですが、新市場の顧客はC社のことを誰も知りません。御用聞き営業から提案営業に変換する必要があります。

Aさんは、ソリューション営業プロセスの導入が必要だと考えていたのですが、中小企業のC社にその実力があるかどうか、判断しきれずにいました。

するとBさんが、「中小の部品メーカーが指名買いをされるなんて、特殊なケースだね。最終製品を買う顧客がC社の部品を必要としているからだよね。その理由を聞いてみたら?」と言いました。

実際に最終顧客にヒアリングをしてみた結果、新市場でも同じようなニーズを持つ顧客が一定程度いることがわかりました。すなわち、新たなソリューション営業プロセスを導入する必要はなく、それらの最終顧客にC社の部品の特長を売り込めば良いことがわかったのです。

通常は、部品メーカーは直接の顧客である製品メーカーしか見ていないため、最終顧客が何を望んでいるかは知りません。ところが、製品メーカーも、最終顧客に指定される部品を使っているだけなので、事情は同じです。

製品メーカーとだけ付き合っているだけでは、必要な情報は入手できず、新規開拓が出来なくなるのです。

Bさんは、このことに気づいていたのです。

どうしてAさんとBさんの差が生じるのでしょうか?Aさんは何を理解すれば、この状態から抜け出せるのでしょうか?

その答えは、「時間差に注意する」です。

物事の生起を時間の流れに沿って追いかけると

コンサルタントは、問題の原因を調べるときに、問題を分解して考えます。そうでないと、膨大な情報を取り扱わなければならないからです。

問題をいわゆるMECEなどに従って漏れなく要素に分解して、どの要素に問題の原因が潜んでいるか、どれを潰せば一番効果が大きいかを調べようとします。自分で分解方法が思いつけない時は、3Cや5-Forecesなどのフレームワークの力を借ります。

そのこと自体には問題はありません。しかし、その分解のパターンが偏っていると問題が解けなくなることに気づく必要があるのです。

一般に問題の解決は、望ましくない結果を引き起こしている原因を見つけ、その原因を潰すことにより行われます。

ここで気づくべきことは、多くの場合、原因と結果には時間差があるということです。(世の中には、原因と結果にほとんど時間差がない現象もあります、しかし、その多くは工学的システムで起こり、エンジニアが担当する世界です。コンサルタントが対象とする人間系のシステムでは、時間差があるのが普通です。)

ですから、原因を探すためには結果から時間を逆に辿るという行為が必要なのです。これを忘れると、いくら問題を分解しても原因が見つからず、現状分析が不十分なままとなるのです。

ところが、この一見当たり前のことを忘れてしまうコンサルタントが数多いのです。

Bさんは、Aさんと違ってこのことを意識化できていました。ですから、次に示すように、時間軸を遡る推論をしていたのです。

  • 売り上げが下がったのは、人口減によるものかもしれない。そうだとすると、それはいつ頃から起こったのだろう?それがわかれば、問題解決の手がかりが得られるかもしれない。
  • C社に注文がくるのは、C社の部品を使って製品を組み立てているメーカーに注文が来たからだ。製品メーカーに注文がくるのは、最終顧客が注文したからだ。最終顧客が注文するとき、どういう基準で製品を選定するのだろう?

しかし、経験の少ないAさんには、この例を見せられただけでは、何をどうすれば良いかはわかりませんよね?もう少し体系的に理解する方法が必要ですね。

なぜ現状分析で「時間差の追跡」が重要か?

Bさんは、経験的に時間の流れを遡る分析作業が必要だと知っていました。でも、なぜその作業が重要なのでしょうか?

それを理解するには、そもそもの企業の目的に戻る必要があります。

企業の目的は付加価値を生産することです。そして、付加価値生産に関し、次の2つの点で時間が関わるのです。

  • 付加価値を生産する活動には時間的な流れがある
  • 付加価値を認める外部環境が変化する

以下、それぞれについて検討しましょう。

付加価値を生産する活動には時間的な流れがある

企業は、一連の活動を通して付加価値を生産します。一つの活動だけで完結することはありません。

この一連の活動をまとめて、ビジネス・プロセスと呼びます。複数のビジネス・プロセスを組み合わせて、企業の外から入力(材料、部品、問題、など)を受け取り、入力より付加価値の高い出力(製品・サービス、問題解決結果、など)を作り出し、それを企業外に提供するのです。

また、企業間の連鎖を通して、さらに付加価値を積み上げていきます。

これらのビジネスの一連の流れに関して、以下のこと生じることが常識でわかります。

  • 上流の何かを変えると、下流の結果が変わる
  • 上流の活動の品質が悪いと、結果が悪くなる
  • 上流の判断を誤ると、下流で無駄が生じる
  • 上流の意図が伝わらないと、下流で効果的な対応ができない

このために、下流で問題が起こると、時間を遡って上流で起こっていることを調べる必要が生じるのです。

このことについて、もう少し詳しく見ていきましょう

①上流の何かを変えると、下流の結果が変わる

例えばケーキを作る工程で、上流の砂糖やバターの配合を変えると味が変わりますよね。

これで分かるように、下流の結果に何か望ましくないこと(問題)が起こった時には、上流で何が起こったか(何が変わったか)を時間をさかのぼって調査する必要があります。

②上流の活動の品質が悪いと、結果が悪くなる

これは上流のアウトプットが変わった場合には①と同じですが、それ以外のことも含みます。

例えば、ある会社で中小企業に機械の遠隔故障警報装置を販売していた時のことです。1年間販売したのですが、販売数(結果)が計画を大幅に下回っていました。

ここにはいくつかの問題がありました。

まず、中小企業はいつ故障するかわからない機械の警報装置にお金を払おうとはしません。そのため、装置の価値を認めてもらうための無償の2ヶ月間トライアルを設けました。

また、この企業は今まで下請けでやってきていたため、自社営業の経験はあまりありませんでした。そのため、営業に出向く訪問先を紹介してもらうこと、及び訪問先からアポイントメントを取り付けることが、一仕事でした。

まとめると、契約を獲得するまでに、次の4ステップの作業が必要となっていました。

  1. 訪問先候補獲得
  2. 訪問日時設定
  3. トライアル合意
  4. 本契約

そして、このⅣの本契約数が計画を下回り、かつ毎月大きく変動することが問題となっていたのです。

ちょっと考えればわかることですが、Ⅰで獲得した訪問先候補全てにアポが取れるわけではありません。ⅡからⅢへ行く時も同じです。このように、ⅠからⅣに順に件数が減っていくのです。

ですから、毎月Ⅳで一定数の契約を獲得しようと思ったら、上流の段階でそこから逆算して増やした件数を抱えていなくてはならないはずです。

この企業は、このような逆算した件数管理を全くしておらず、最終的な契約件数の獲得に血道をあげていたのです。

すなわち、契約を獲得するためには一連のプロセスが必要で、その各段階で品質を維持する(件数を維持する)ことが必要だということが認識できていなかったのです。

ここでも、良い結果を得ようとするなら上流の品質を維持することが必要なことを理解し、それが達成されているかどうかを時間軸をさかのぼって調査する必要があるのです。

③上流の判断を誤ると、下流で無駄が生じる

この現象を理解するのに良い例が 問題が解けないままで残っている時は、前提となっている制約を外す で挙げた主要顧客からの受注率激減に遭遇した事業部のケースです。

その事業部では、顧客からの試作引き合いに対する開発スピードで競合会社に負けるため、受注が減っていたのです。そのために開発スピードの向上が至上命題と考えられていました。

しかし、開発の上流段階を調べてみると、営業が開発の能力を超えた試作案件を引き受けていることがわかりました。そのため開発要員は複数プロジェクトを掛け持ちしており、1件あたりの開発スピードが長くなっていたのです。

スピード競争で負けた試作に費やされた工数は全くの無駄ですから、上流段階で引き合いに応じる件数を絞るべきだったのです。

ここでも、下流の問題(受注件数減)を防ぐために上流で起こっていることを調べる必要が生じているのです。

④上流の意図が伝わらないと、下流で効果的な対応ができない

冒頭で挙げた部品メーカーの新規市場開拓が、この例に当てはまります。新規市場開拓の方法がわからないという問題がある場合には、上流の顧客の顧客までさかのぼって発注の意図を理解する必要があるのです。

もう一つの例が、 「解けない問題」を「解ける問題」に変えるためには、組織の壁を壊す で述べた歯車の購買の例です。

その例では、設計部門が指定した歯車の公差が厳しすぎたため、サプライヤーで大量の不良品が出ていました。長い間そのために購入価格を下げられずにいました。公差が厳しいのは、歯車の振動を抑えるためでしたが、購買部門はそのことを知りませんでした。

しかし、ある時サプライヤーと話していて、競合他社の同じ目的に使うはずの歯車の公差がそれほど厳しくないことがわかりました。他社は、歯車の組み合わせで振動を抑えていたからです。

そのことを設計に伝えると、そのやり方で良いとの返事が返ってきました。それでわかったのは、設計は大量の不良品が出ていることを知らず、公差が厳しいままで良いと思っていたことでした。

購買部門が、設計が歯車の公差を厳しくする意図(振動を抑える)まで理解していれば、もっと早くコスト削減できていたのです。

以上の①〜④でわかるように、一般に下流で起こった問題の原因は上流にあり、下流部門だけでは解決できません。コンサルタントはそのことを知っていて、ビジネス・プロセスや企業間連鎖の上流に時間を遡って現状調査すべきなのです。

付加価値を認める外部環境が変化する

時代環境が変わると企業のアウトプットである付加価値が外部にどう認められるかが変わります。また付加価値の源泉も変化します。

したがって、その変化を時間軸を追いかけて把握することが必要となります。

このことを幾つかの例で見てみましょう。

人口動態の変化と商品・出店戦略

皆さんご承知のように、日本は戦後のベビーブームを背景に高度成長した後、現在は少子高齢化の道を辿っています。そして、この変化が個々の企業の利益に大きな影響を与えています。

冒頭の地方の製造小売チェーンでは、ブランドの再構築以前に地方の過疎化の方が大きな問題になっているかもしれません。最近、テレビで健康食品のCMが増えているのも、高齢化の反映でしょう。

ある時代に成功した企業が、この人口動態の変化に対応しきれずに、売り上げを落としていく可能性には無視できないものがあります。

そのため、企業の売り上げと時代環境の経年変化を追いかけ、商品・出店戦略や、さらにはビジネス・モデル自体の変更の必要性の有無をチェックしていくことが必要になるのです。

商品ライフサイクルと差別化戦略・投資戦略

個々の商品にも人間と同じように、導入期、成長期、成熟期、衰退期というライフサイクルがあります。

例えば、パソコンは、80年代が導入期で、90年代はノート・パソコンの成長期でした。その頃は、新製品が出ると、皆が競って買い替えをしていました。

しかし、成熟期に入った現在では、新製品が出ても買い換えることなく、何世代にもわたって同一機を使い続ける人が多くなっています。

つい最近の話では、AppleがiPhoneを3割減産で部品メーカーが大打撃を受ける、というニュースが飛び込んできました。iPhoneも成長期を過ぎたのでしょう。

この商品ライフサイクルのどのステージにいるかで、とるべき戦略が変わります。

商品の差別化という観点からは、導入期・成長期は機能の差別化をします。成熟期は利便性(使いやすさ、保守性など)の差別化が図られます。成熟期の後半からは低価格が差別化要因となり、それを嫌って市場から退出する企業も出てきます。

関連業界もこの動向を読み誤ると痛い目にあいます。iPhoneのステージを読み誤って過度な投資をした部品メーカーは潰れるかもしれません。

このようなことに的確に対処するために、経年変化を追いかけてライフサイクルのどこにいるかを判断する必要があるのです。

付加価値の源泉の変化とプロセス改革

製造業では技術の蓄積に伴い付加価値の源泉が変化していくことも起こります。

例えば、ノート・パソコンは、当初は小さなスペースに部品を詰め込むことが非常に難しく、実装技術の高い企業しか作れませんでした。その頃は、設計部門が付加価値を生産していたのです。

ところが、技術が成熟してくると、様々な部品モジュールを作るメーカーが台頭してきました。その結果、それほど技術レベルが高くないメーカーでも、モジュールの組み合わせで製品を作ることができるようになってきました。

そうなると、製品原価の大半を外部からの購入部品が占めるようになります。

そうなると、それまで製品開発プロジェクト主導の購買体制から、部品主導の購買体制に変革しないと、付加価値の生産(コストダウン)が望めなくなります。

このように、製造技術の業界変化が企業内のビジネス・プロセスにインパクトを与えるのです。ここでも環境変化を時間を追って把握し続けることが重要となるのです。

コンサルタントは、環境変化が企業の経営に大きな影響を与えることを理解し、顧客の付加価値評価や付加価値生産源泉の時間的な変化を見逃さない目つきを身につけることが必要なのです。

時間軸視点で現状分析すべき事項

 まとめ

  • 現状分析を苦手とする若手コンサルタントが多いが、その理由の一つは、現状を時間軸に沿って眺める必要性を理解していないことにある
  • 時間軸に沿った現状分析が必要なのは、原因と結果に時間差があるからである。問題(望ましくない結果)が与えられた時に、時間軸を遡らないとその原因はわからない
  • ビジネス・コンサルティングの現状分析で時間軸への注意が必要なのは、企業の付加価値の生産とその外部評価に時間が絡むからである
  • 企業で付加価値を生産するのは一連の活動の流れである。それゆえ、以下のことに注意して時間を遡れば、問題の原因を探り当てられる
    • 上流の何かを変えると、結果が変わる
    • 上流の活動の品質が悪いと、結果が悪くなる
    • 上流の判断を誤ると、下流で無駄が生じる
    • 上流の意図が伝わらないと、下流で効果的な対応ができない
  • 企業が生産する付加価値の外部からの評価は時代環境とともに変化する。例えば、次のような環境変化があることを知っておくと、環境変化への対応のまずさから生じた問題が検知できる
    • 人口動態への対応を誤ると、間違った商品や出店戦略をとることがある
    • 商品ライフサイクルのどこにいるかの把握を間違えると、差別化戦略や投資戦略を誤る
    • 技術の成熟化などで付加価値を生産する源泉が変わると、それに応じたプロセス改革が必要になる。それを怠ると競争上不利になる