段階化と案件管理で組織的ソリューション営業を実現する


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営業が協働できるための要件はプロセスの段階化

前回、複雑化する顧客ニーズに組織的に対応するため、ソリューション営業でプロセス化が必要であると書きました。今日は、このプロセス化の要件を詳しく見ていきましょう。

ソリューション営業でのプロセス化の要件は次の2つです。

  1. 顧客の問題解決(購買)行動に合わせて行動できる
  2. 組織的に協働チームを編成できる

この2つの要件が意味することは、営業の「段階化」が必要だということです。

顧客の購買は、問題の認識から始まって最終的な購買の決断まで「連続的」に徐々に進化していきます。しかし、これに組織的に対応するためには、この顧客プロセスを幾つかの「有限の数の」段階に分けて管理する必要があります。そうでなければ、いつどのような専門家を参画させればよいかが決められないからです。

そして、段階化に関しては次の取り決めが必要となります。

  • 全体をいくつの段階に分けるかの定義(図A)
  • 各段階でのチーム編成を可能にする以下の定義
    • 開始条件、終了条件
    • 必要な参加者の定義とその役割分担
    • 各役割が遂行すべき業務内容(何を入力として受け取って、何を成果物として生成するか)

このようにして、個々の顧客の問題解決段階に対応して、いつ、誰が、何をすれば良いのかがわかるようになります。すなわち、状況に対応した専門家チームを編成して、顧客対応に当たれるようになるのです。

さらに、もうひとつ条件があります。いつ専門チームを編成すればよいかが分かることです。

このためには、顧客の問題解決の状況を追いかけ、どの段階にいるか、いつ頃次の段階に移行しようとしているか、を検出できなければなりません。

この顧客問題解決状況を案件と呼ぶことにしましょう。そうすると、案件を見える化する「案件管理」ができなければならないのです。(図B)

案件管理の効能:個だけではなく全体を見る

このように、顧客の問題解決状況を段階化して管理できるようになることのメリットは、単に個別のソリューション提案の体制が構築できるようになることだけではありません。

顧客へのソリューション提案体制そのものを、より効果的、効率的にすることも可能になるのです。

その理由は、個々の案件だけではなく、案件全体の挙動を把握できるからです。個ではなく全体を見ることにより可能になることは、次の3つです。

  1. 予測ができる
  2. 資源配分ができる
  3. 改善ができる

以下、それぞれについて検討しましょう・

 統計的挙動から予測ができる

各段階を流れていく案件の統計データをとることにより、売上の予測などが可能になります。

例えば、図Bで段階iの平均通過時間をTi、次の段階への到達確率をPiとすれば、段階2にある③と⑤から、T2+T3+T4時間後に、2xP2xP3xP4個の契約が取れるだろうと予測することができます。(もちろん、これは概念を説明するためのすごく大雑把な計算なので、実際には③と⑤が第2段階に到達してからどれくらいの時間が経っているかなどを考慮する必要はあります。)

この予測により、売り上げのバラツキなどの問題を認識することが可能になるのです。

案件状況を比較することにより効果的な資源配分ができる

例えば、今第2段階で顧客に「購買の体制が不備でせっかくのコスト削減機会を見逃している」という問題が存在すること認識してもらおうとしていたとします。

この問題を顧客に確実に認識してもらうには、購買改革の専門家による問題提起が必要でしょう。しかし、この人員が不足していたとしたら、そのままでは提案の機会を逃すことになります。

この時、案件の全体を見ていたとすれば、以下のような限られた人員を有効配分して売り上げが大きする対策を考えることができます。

  • ⑤の方が③より予想売り上げが大きいので、⑤を優先して専門家をアサインする
  • どちらの案件も重要なので、段階4に関わっている購買専門家を段階2に回して、段階4には別の人員をアサインする

また、今月はうまくいけば⑥と⑩の契約ができそうですが、段階3の案件が②の一つしかないので、このままだと次の月の売上が落ち込みそうだということも予測できます。落ち込みを避けるためには、段階1や2に資源を投入して後ろの段階に進める対策をとるべきだということもわかります。

全体を見ることにより、限られた資源を有効配分し、売り上げなどのパフォーマンスを向上させることが可能になるのです。

 全体傾向を把握して改善策を講じることができる

全体傾向を見れば売り上げ向上のボトルネックが把握でき、改善策を講じることが可能になります。

例えば、段階3に案件が②しかないのは、段階2を無事に通り過ぎる確率が低いからかもしれません。そのような場合は、段階2の成功確率を高める施策(購買改革説明要員の能力向上、等)を講じれば良いことがわかります。

また、ボトルネックには「ある段階で時間がかかる」というのもあります。これに対しては、人員の増強やツールの整備などの対策が考えられます。

以上は、特定の「段階」がボトルネックだというものでしたが、別のタイプで「人員」に関するボトルネックも存在します。あるメンバーが参画したチームの生産性が低いというものです。これがは把握できれば、人員ごとの教育プログラムなどを考えることも可能になります。

以上のように、「個」を管理すると結果として「全体」を把握でき、そもそものビジネス目的(ここでは売上向上)のための様々な施策を検討することが可能となるのです。

案件管理プロセス

何を学んだか?

  • ソリューション営業を組織的に行うためには、営業を段階化して管理することが必要である。段階化により、複数の人が協働するために必要な条件(いつ、誰が、何をすべきか)を明確化することができる
  • 段階ごとの資源配分を行うためには、資源配分の対象である案件の管理が必要である
  • 個々の案件を管理すると、結果的に案件全体の傾向を把握できる。このことにより、売上予測、より有効な資源配分、ボトルネックの検出と改善、などの組織の効率化が可能となる
  • 以上を一般化すると、次の結論が得られる
    • 協働のためには作業(今の場合は営業)の「段階化」が必要である
    • 協働チームの編成のためには、チーム編成の対象である事象(今の場合は案件)が管理される必要がある
    • 個々の事象が管理されると、事象全体の管理を通して、ビジネス目的(今の場合は売上)達成・向上のための施策(予測、効果的資源配分、改善)の策定が可能となる
    • この結論は、サービスや購買など、定型的な協働作業のプロセス化に広く応用可能である