自己変革スキル(その3、完:定年と独立)


Last Updated on 2021年8月21日 by 時代遅れコンサルタント

前々回述べた自己変革スキルを、後付けで自分のキャリアに適用してみた説明の第2回(全2回)です。
次の自己変革は、全くの突然に考える羽目になりました。定年の前の年に起こったリーマンショックが原因です。
コンサルタントとして自立するのには散々苦労したのですが、最終的にはビジネスが何もないクライアントから年間数億円の売り上げを立てられるようになりました。私が定年になって辞めるとクライアントとの信頼関係が崩れるので、65歳までの延長制度を使って会社に残る話を進めていました。もう一つ大学の非常勤講師をやっていたので、70歳までそれをやったら引退かな、と漠然と考えている状態でした。
そこに天変地異が起こったわけです。クライアントは輸出企業だったので、不要不急のコンサルティング・ビジネスは次々とキャンセルされ、最終的にはもう一つのクライアントの年間1億円ちょっとのビジネスだけが残る状態になりました。
こうなると予算ベースのバックオフィスの専門家とは異なりお金を稼ぐフロント部門では、上層部の外人には私を留め置く理由はなくなるので、退職することになりました。
60歳で仕事を辞める気はさらさら無かったので、伝手を辿るという「意図的活動」を通して再就職しました。給料も下がらなかったので気も済みました。
ところが、気が済んだらその仕事への執着がなくなりました。仕事の内容も前職の方が面白かったし、歳をとって高給で新しい職場に入ると、人間関係がなかなか大変で、血圧も上がります。給料が下がらないという条件だけでは、当人が満足する「変革の準備」としては不十分だったということになります。
62歳が近づいたある日、家内の体調低下を契機に、人間関係で体を壊すのは割が合わないと辞める決心をしました。会社は辞めても、仕事を続ける気には変わりはありません。その時の変革の準備になったのが、ちきりんの本にある次の2つのパワーシフトです。(この本はまだ出ていませんでしたが、これらのことは私の頭の中にはありました。)
  • 大組織から個人へ by IT革命
  • ストックからフローへ by 人生の長期化
最初に考えたのは、当然のことですがその後の生計の立て方です。若干の不安はあるものの、贅沢をしなければ引退しても食べていけるとは思いました。ただ、思考が後ろ向きになりそうで、それが20年も30年も続きそうなのは嫌でした。その時に思いついたのが、期限を切って、その後の生活のためにリソースを貯めるストックの発想から、必要なものを足らない分だけ補充し続けるフローの発想への転換でした。
後付けで気がつくことですが、実はこの転換には金銭的なことは決定的な要素にはなりません。私と似たような境遇の人は、金銭的には、切り詰めればなんとかやっていけるだけの最低限の蓄えはあります。決定的に異なるのは、人間関係です。仕事を辞め過去のストックに頼ることにすれば、疎遠になったりする人もいるし、亡くなる人もいたりで、人間関係はどんどん細っていきます。交わされる会話の中身も、退職者同士では昔話ばかりで、新しい情報を補充できにくくなります。人的ネットワークのメンテナンスをするためにも、仕事をし続けるなどで社会的行動を続けるフローの発想が有意義なのです。
さて、フローで働き続けると心の準備をしたとして、次に問題になるのが、どこでどのように働くか?です。何処かに勤めるのか、独立するかです。私が知っている人の多くは、勤め人の発想から抜けきることが難しいようで、定年が近づくと自分のネットワークを総動員して新たな勤め先を探すようです。エージェントを介して再就職する人もいます。ガイドブックなどを読んで、再就職先で受ける処遇の期待値の下げ方を一生懸命勉強したりもします。
ここで不思議なのは、なぜ、大組織から個人にパワーの移行が起こっていることを理解しようとしないのか、ということです。若い世代には、当たり前にこの前提で動いている人が存在します。
コロナ騒ぎで、ようやくネットを活用したビジネスへの移行が盛んになりましたが、これらの潜在的可能性については、10年以上前から充分に認識されていたことです。インターネットの普及で、個人がビジネスを始めるための障壁は日に日に低くなってきています。ストックからフローへの移行で、追加的に稼ぐべき金額は現役時代と比べたらごくわずかで済みます。そのわずかな金額のために、条件が悪い企業に頭を下げて再就職するのは、私にはとても割に合うとは思えませんでした。
ということで、独立することにしました。この後で考えるべきは、仕事をとるチャネルを探すか、それとも自己集客をするかです。私の場合は自己集客することを決めたのですが、その理由については後述します。
この時に顧客として誰を相手にするかが問題となりますが、私の場合はそれまで全く縁のなかった中小企業としました。独立して大企業を相手にするのは大変です。大企業に認知されるには、どうしてもそれまでのネットワークが持つ信頼関係に頼らざるを得ず、勤めるのと同じような頭を下げることが必要でしょう。グローバル企業が求める能力を維持するのも、個人でやるのは大変です。
一方日本は、老いたりと言えどもGDP世界第3位、人口1億人を超える大国です。そこに、冨山和彦著「なぜローカル経済から日本は甦るのか」に書かれている、グローバル経済とは直結しない巨大なローカル経済が存在します。冨山さんが書かれているように、ローカル経済の生産性向上は日本にとって非常に重要な問題にも関わらず、そこで見られる経営能力はあまり高くないのが実情です。不慣れとは言え、この経済の中でなら、激しい競争にさらされなくても世の中に貢献できそう、というのが読みでした。
環境変化をこのように読んで変革の準備をすることも、非常に重要だと思います。
残る最大の問題は、自己集客の方法を全く知らないことです。ですから「意図的行動」としては、あちこちにお金を払って集客方法を勉強しました。大体個人事業を始めるためには、開業資金として300万円程度用意しておけという話があるそうですが、私の場合は、コンサルタントなので固定資産の用意の必要はありません。その分を勉強代に当てることにしました。勤め人の発想から抜け切れない人は、この種の投資をケチりますが、それは間違いだと思います。凡そ何でもビジネスを始めるにあたって、投資が必要にならないはずがない、と心得るべきでしょう。
「計画性」と「資源の活用」については、後の変革点のところで詳しく述べます。
以上3回にわたり、40歳以降での2度の変身の内容を、自己変革スキルのフレームワークにあてはめて説明してみました。
結論として言えるのは、世の中の大きな流れの変化と自分のやりたいことをうまくマッチさせて「変革の準備」をすることが、非常に重要だということでしょう。そこで方向づけができたら、変革に移るための機会を「意図的に見出す行動」も重要です。
次回からは、③以降の変革点の説明に移ります。