自己革新の心構え


Last Updated on 2021年8月21日 by 時代遅れコンサルタント

今日は先日述べた以下の変革点②について、若干補足をしておきたいと思います。
強化する無形資産: 生産性資産(スキル・知識) → 変身資産(アンラーニング、自己変革スキル)
リンダグラットンの「ライフシフト」には、これからの長い時代を生き抜いていくためには、以下の3つの、目に見えない資産の管理が重要だと書かれています。
1. 生産性資産: スキルと知識、職業仲間、評判
2. 活力試算: 健康、バランスの取れた生活、友人関係
3. 変身資産: アイデンティティを再構成する力、準拠集団の再構成を助ける多様性のあるネットワーク、新しい経験に開かれた姿勢
専門家を名乗る職業人であれば、長い人生をかけて1.に投資してきているでしょうし、2.についてもワークラーフバランスが説かれ健康ブームの昨今、多くの人の関心事になっています。しかし、3.はどうでしょうか?転職が当たり前になってきた若い世代はともかく、一つの会社・組織で長い職業人生を送ってきた中高年の人々にとって、難しい問題ですね?
そもそも3の意味を理解することすら難しい、もう少しマシでも系統的な管理対象として考えたことはない、というのが実態でしょう。その結果、定年になっても延長制度で同じ会社あるいは子会社に雇用され続け、制度の年限がきたらリタイアする人が殆ど、というのが私の同級生を見ていての観察結果です。
ここで考えるべきは、定年間際になったら投資効率の落ちてきた1.への投資は控え目にして3.に集中することです。しかし、それは容易なことではありません。その理由は、3.では職業人には青臭く見える「生き方」などの原点の検討に戻る必要があるからです。その昔に初めて職業を選んだ時代を思い出し、「自分は何者でありたいか?」という問いに戻るべきだからです。
それまでの職業人生を一旦リセットして、自分は何のために生きるのか、会社に依存しない自分のアイデンティティをどこに求めるか、準拠集団をどう再構成するか(新たなアイデンティティをもとにどのような新しい人たちと開かれた心で交わるか)など、1.で専門家を志してきた人には、近年親しんでいたのとは全く違うタイプのゼネラリスト的なリベラル・アーツの発想に戻ることを求められるからです。新たな視点で自分を変えていく、自己革新の力が求められるのです。
そのような発想の原点復帰を行えたとしたら、その先の参考となるものがあります。リベラル・アーツの世界で50年読み継がれてきた「20世紀アメリカ最高の知性と良心」ジョン・W・ガードナーによる普及の名著とされる「自己革新」が、個人が成長しつづけるために必要なものと述べている内容を、少しだけ紹介しておきましょう。
ガードナーは、自己革新ができない原因はイギリスの詩人ウィリアム・ブレイクが言う「心を縛る枷」にあると言っています。新しい世界を切り開けない、あるいは新しい世界に適応できない理由は、外的要因ではなく、内的要因が殆どです。凝り固まった個人の心情、態度、習慣、行動や目的を達成するために手段にこだわる習性、道徳の高台に立つ(世の中はこうあるべきだなどと人を裁く)、既得権益に拘る、などのことが自己変革を妨げるのです。
ガードナーは、人の幸福は大きな目標に向かって「努力して進む」ことにあると言います。その目標を「達成する」必要はありません。自己革新する人々は、決して「これで全て終わった」と感じることはないのです。
自己のアイデンティティを見出すことに成功した人は、「自分は何者か?」という問いに対する答えだけでなく、「私は何を目指して生きるべきか?」、「私はどんな義務を果たさなければならないか」、「私は何に身を捧げるべきか?」というような様々な問いに対する答えも見つけるのです。
(私の場合で言えば、「“少子高齢化の日本で、高齢者の付加価値生産性を高め、若い世代の経済的負担を軽くする”ために貢献し続ける人間である」が、「新しい」アイデンティティのかなりの部分を占めています。)
自己革新を成し遂げ前向きな姿勢で生き続けられるのは、その可能性を信じている人だけです。そのような人々は来のことを念頭に置き、過去に囚われて古いものにしか興味を持たないようにはならずに人生を送るのです。
詳しくは、次の本を読んでください。先人の多くが言われるように、名著です。この本に書かれているような「青臭い」議論に感激する心を持ち続けている人たちが、長い人生の意義を求めて生き続けられるのだと思います。これからの長い時代、リベラル・アーツ大事です。