部品メーカーのSCMに必要なのは、納期確約ができ同時に不良在庫を防止できる俊敏生


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事業内容によるサプライ・チェーン・マネジメント要件の違い

前回(サプライチェーン改革の目標:全体スループット増大=「私たちはお客様をお待たせしません」)で、サプラーチェーン全体での機会損失と不良在庫の削減の必要性を論じ、その対策としてサプライ・チェーン参画企業の俊敏さ(計画サイクルの短縮と小ロット同期生産の実現)が必要であることを述べました。

しかし、一言でサプライ・チェーン改革と言っても、実際にはそれぞれの企業が携わっている事業の特性と業界環境で、実施すべき施策は大きく変わってきます。

例えば、デジタル家電などの商品ライフサイクルの短い業界と鉄鋼などのライフサイクルの長い業界では、計画の立て方などが大きく違います。また、消費者向け製品と産業用製品では、顧客対応の方法が大きく異なる、などです。

さらに、部品メーカーと最終製品メーカーでも、要件が変わります。

この違いを、ライフサイクルの短いデジタル家電業界の部品メーカーと最終製品メーカーを例にとり検討してみることにします。

部品メーカーと製品メーカーの在庫裁量の違い

ライフサイクルの短い製品業界での部品メーカーと最終製品メーカーのサプライ・チェーン・マネジメントの最大の違いは、在庫を自分の意思でコントロールできるか否かです。

製品メーカーは、新商品発売時にシェアを獲得しようと積極的に在庫を積み増します。同時に、値崩れを防ぐため旧商品の市場在庫を急速に絞ります。さらに、米国のクリスマス商戦のような需要増大事に備え、戦略的な増産を行うこともします。

また、全世界の流通業相手に販売するため、流通経路が長く複雑です。さらに、製品に組み込まれる部品も多岐にわたるため、サプライヤーとの取引関係も幅広くなります。

そのため、円滑な事業運営のためには製品・部品のある程度の在庫は必要であると見なし、その必要量の管理に注意を払います。

一方で、部品メーカーの顧客は少数の大企業に限られることが多く、部品点数も少ないので、サプライヤーとの関係もそれほど複雑ではありません。しかし、サプライ・チェーンの上流にいる部品メーカーは、下流の需要を正確に読むことはできません。

そのため、大企業である顧客の需要を逃すことなくひたすら俊敏に対応することに精力を傾けます。また、前回述べたブルウィップ効果があるため、リスク回避のために在庫をできるだけ少なくして活動しようとします。

このように、サプライ・チェーンの最大の課題である機会損失と不良在庫の意味が異なり、サプライ・チェーンの構造も大幅に違うので、両者の管理方法が変わってくるのです。

このことを念頭において、今回は部品メーカーのサプライ・チェーン・マネジメントについて検討してみます。(製品メーカーについては消費者向け製品メーカーのSCMの課題:販売と生産の対立(悪魔のループ)消費者向け製品メーカーSCMでの販売計画精度向上を参照ください。)

(汎用的な部品を作っているメーカーの場合は、部品メーカーの方が大企業であることもあります。しかし、そのようなケースでは小企業である顧客との取引は在庫調整機能を持った商社経由となることが多いので、ここではサプライ・チェーン改革の対象としては取り扱わないことにします。)

 部品メーカーにとっての機会損失と不良在庫の防止策

これまで述べたことをまとめると、部品メーカーにとってのサプライ・チェーン改革の目的は、次の2つの防止となります。

  • 機会損失: 納期確約ができなかったり約束した納期が守れなかったりして、顧客である大企業との取引を失うこと
  • 不良在庫: 顧客の急な生産停止の場合に生じる製品・部品在庫。また、顧客の需要変動に備えて多めの在庫を持ち、そのための運転資金が経営を圧迫すること(ブルウィップ効果が大きい上流にいるため顧客からの需要の変動が大きくなりがちである状況であることを理解すること)

この目的実現のために実現すべき施策を順に考えてみましょう。

納期確約

まず、納期確約からです。

納期確約とは、顧客が要求した量の部品を顧客が要求した時期に届けることを約束することです。ただし、量や納期が大きく変動すると確約は不可能となりますので、通常は顧客との間で一定のルール(発注する最大・最小量や納期の長さなどの合意)を交わし、そのルール内で確約をします。

納期確約が確実にできるためには、自社の納入リードタイム(顧客の注文を受けて生産を計画してから、生産を完了して出荷するまでの期間)が顧客指定納期と同じか短い必要があります。そうでないと、顧客の確定オーダーが来る前に見込みで生産(計画)を始めざるをえず、急なオーダー増に対応できないリスクがあるからです。

納入リードタイムは、以下の要素から構成されます。

  • 生産・調達を計画する時間
  • (部材)調達、生産、物流の時間、

このうち、調達、生産、物流に要するるは物理的な時間ですから、その削減を工夫する必要があります。

一方、計画時間は制度的なものです。計画に必要な情報をすべてまとめて行動する単位をどれだけにするかという意思を反映したものです。その企業が月次(月サイクル)で行動すると決めれば計画時間は1ヶ月ですし、週次とすれば1週間です。

この長さは、情報を集める作業の手間や生産等を一括して行う効率を考慮して決められています。

昔は、紙の情報を集めてまとめるのに時間がかかったり、生産の段取り替えが難しかったりで、月単位で行動する企業がほとんどでした。しかし、近年IT技術の進歩によりこの時間の短縮が可能になり、週単位で行動する企業が増えています。さらに日単位での活動も可能になってきています。

納入リードタイム短縮にあたっては、この制度的な計画サイクルをどう短縮するかも大きな判断材料となっているのです。

納期遵守

次に納期遵守です。これは確約した納期どおりに部品を届けることです。

納期遵守の障害には、予定通りの品質のものが作れなかったことなどもありますが、現場で一番多く起こるのは部材の欠品です。しかし、生産計画を立て、それに基づいた部材の手配をしているのに、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

その理由は、現場は日の単位で動いているのに、計画の単位がそれより大きいこと(月や週など)にあります。

例えば、ある週に5000個の生産をするとして、それに見合った部材の手配をしておいたとします。通常、生産も部材手配も均等にならして1日1000個などのように計画されます。

ところが、よく見てみると顧客は週の半ばに2000個の納入を要求していたことが分かったとしましょう。このような場合に慌てて月曜日に2000個の生産をしようとしても、部材が足らずに納期遵守ができなくなるのです。

つまり、実際の生産や部材の手配は日の単位まで整合させておかないと、納期順守はできないということです。

不良在庫防止

最後に、不良在庫防止について考えて見ましょう。

納期確約と納期遵守ができているとすれば、確定オーダーに対する作りすぎや欠品は存在しないことになります。それでも不良在庫が発生するのは、リードタイムの長い部材の手配に誤差が生じるからです。

部品メーカーは、リードタイムの長い部材を手配するために、顧客から将来どれくらいの発注をするかの予測情報(フォーキャストと呼びます)をもらいます。ただし、予測情報ですから当然誤差を含みます。

と言っても、まるっきり当てずっぽうでは計画のベースには使えません。したがって、ここでもルール(2ヶ月前の予測ならば誤差は上下20%以下など)を決め、そのルールに従った予測情報をもらい、これに基づいて部材の手配をします。

前回の記事でも述べたように、一般に予測精度を高めるための方法は、遠い過去より近い過去の情報を用いることです。そして、そのためには計画サイクルを短縮する必要があります。

例えば、サプライヤーに発注してから納入されるまでに6週間かかる部材があるとしましょう。この時、週次で計画していれば、サプライヤーには6週間前に予測情報をもらえば済みます。しかし、月次で計画している場合には2ヶ月前に予測情報をもらう必要があり、2週間ほど古い情報になってしますのです。

ですから、予測制度を高めリードタイムの長い部材の不良在庫を減らすためには、計画サイクルを短くすべきなのです。

ここまでの議論をまとめると、図①のようになります。

スライド1

リードタイム短縮の具体例

以上の施策のイメージが湧くように具体的な事例で解説しましょう。

現在週次で計画をしていて、納入リードタイムが5週である部品メーカーを想定しましょう。このメーカーが顧客から納入リードタイムを3週間に短縮するように迫られているとします。

週次で計画をしていると、生産計画を立てることだけで1週間を使いますから、残りの2週間で部材の調達、生産、顧客へ届ける物流をこなさざるをえず、これはほぼ不可能です。

そこで、日次で計画・生産サイクルを回すことを考えてみます。この時に、生産と物流にそれぞれ2日を要し、それ以上の短縮は不可能だとします。

そうすると、図②の上部に示すようなサイクルだと顧客対応ができることがわかります。すなわち、部材調達リードタイムをなるべく2週間以内に抑え、それより長いものに対してはリスクをとることにすれば、納入リードタイム3週間を実現できるのです。

調達リードタイムが2週間を超える部材に対しては、予測情報に基づいた手配をすることになりますが、その場合でもリスクを下げる何らかの工夫が可能です。

例えば、図②の下部のような調達リードタイムが5週間の部材があったとします。

この部材の生産工程が、前工程3週間、後工程2週間と分かれていたとすれば、前工程を予測情報で発注して、後工程は確定オーダーに基づいて生産してもらうなどのことをサプライヤーに交渉することが考えられます。そうすれば、より価格の高くなっている後工程分の不良在庫を発生させずに済みます。

(もちろん前工程分の不良在庫が発生すれば自社が引き取るという条件付きでの交渉ですが、それでも後工程で不良在庫を発生させるよりは安くて済みます。)

スライド2

さらに、このように計画・生産サイクルを週次から日次へ変更すると、図③に示すように、部品納入までの時間を短縮できます。それを受けて生産することによりの、顧客への納入リードタイムも短縮できるのです。

その結果、予測情報も手前に引き付けることができ、リードタイムの長い部品の手配誤差も小さくできるのです。

スライド3

まとめ

  • サプライ・チェーン改革の目的は、サプライ・チェーン全体の機会損失と不良在庫の防止であるが、具体的施策は各企業の事業環境により大きく異なる
  • 特に、部品メーカーと最終製品メーカーでは、在庫の戦略的コントロールの可能性の有無で対応が変わる
  • 下流の需要が読めずブルウィップ効果の影響が大きい部品メーカーでは、顧客の需要にひたすら俊敏に対応することがSCMの最重要課題となる
  • したがって、部品メーカーでの重要施策は、計画サイクルの短縮、生産リードタイムの短縮、日次計画の整合性確保の3つとなる
  • 部品メーカーで計画・生産サイクルを短縮した後は、その中で与えられた調達リードタイムをどう効果的に使いこなすかが最大課題となる