営業が不得意でもソリューション営業改革をガイドできる3つのメタな方法
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不得意なドメインでクライアントをガイドする方法
ここしばらく、コンサルタントがソリューション営業について理解していくべきことをお話ししています。そして、ソリューション営業が関心を集める背景には次の時代変化があると書きました。
- 顧客のビジネスが複雑化し、同時に顧客の商品知識レベルが向上してきている。そのような状況の下では、商品・サービスを売るだけでは差別化にならず、顧客の問題解決を支援し、その問題解決に自社の商品・サービスが有効であることを示す必要が出ている
この変化は、クライアント企業にとって、次の2つの検討事項があることを示しています。
- ビジネスが複雑化する顧客との関係をどうするか
- それに対する自社の組織的体制をどう見直すか
このブログでは、これまでは2.のクライアントの自社体制について考えてきましたが、今日は1.のクライアントに顧客との関係をどう考えさせるべきかについて検討してみましょう。
特に、営業に詳しく無いコンサルタントとして、この問題にどのように取り組めば良いかを考えてみることにします。その前提をおけば、コンサルタントがクライアントをガイドする際のメタな方法を明らかにすることができるからです。
得意でない領域でコンサルティングをするためには、対象問題よりは一段上に立った(メタなレベルでの)問題への取り組み方法を心得ておく必要があります。そして、これらの方法を心得ておくことには、次の利点があります。
- 問題とは独立なので、多くの問題に利用できる
- 問題分野の知識が乏しくても、クライアントとの議論を通して知識を仕入れながら何とか前に進められる
この方法とは、次のようなものです。
- クライアントが問題を解けずにいる(今の場合は、環境変化の下での顧客関係構築方法がわからない)のは、顧客の思考レベルに限界があることを見抜く
- 思考レベルの限界にはパターンがあるので、該当パターンを検出する
- そのパターンに沿って、クライアントの問題解決を助ける方法を探し、それを使って問題解決をガイドする
そして、今日のテーマで有用な顧客の思考パターンとそれらの解決を助ける方法は次の3つです。
- 現状の改善からしか発想できない → 真逆の方向に振る
- 資源配分を変えられない → 80:20の法則を使う
- 自分都合から脱却できない → 顧客の購買プロセスを見させる
以下、それぞれの効用を見ていきましょう。
現状改善から脱却させ自社の立ち位置を決めさせるために、真逆の方向に振る
ソリューション営業が必要になる企業の現状は、「モノ売り」です。しかし、このような企業は改革を迫られても、ソリューション営業という言葉が自社にとってが何を意味するかがわかりません。その結果、立ちすくんでしまいます。
でも、なぜ立ちすくむのでしょうか?巷にはソリューション営業に関する本がいろいろと出ているので、それを勉強すれば良いはずです。
にも拘らず前に進めない企業には、共通したパターンがあります。
問題解決の基本である「あるべき姿」が設定できないのです。現状からの改善しか思いつかないので、根本的な解決策を見つけられないのです。
この状況から脱却させるために有効な方法は、極端なケースを考えさせることです。
直面している環境変化の軸を明確にし、その変化軸を現状とは逆の方向に極端に振った状態から逆算した地図を書き、クライアントが取り得る状態をその地図に全て表すのです。
そうすれば、クライアントが行うべき作業は選択になり、現状改善から自然と抜け出せるのです。
この地図を描くには、ソリューション営業が必要になってきた背景から、次の2軸を用いれば良いことに気づくでしょう。そうすれば、図Aを描くことができます。(実は、コンサルタント自身が提案時にソリューション営業をやっているので、その観点からもこの軸を思いつけるはずです。)
- 複雑になってきた顧客の問題解決を、どこまで助けるか(顧客関係軸)
- 商品・サービス単品に対する顧客や競合相手の圧力に対抗してどう貢献範囲を拡げるか(商品・サービス軸)
この図の中からあるべき姿を選択させ、それを詳細化するのです。
80:20の法則で顧客を絞らせる
次に考えるべきことは、ソリューション営業を実現するにあたっての対象顧客の優先順位の決定です。図Aの右上の方の段階での営業をするにはこれまでより格段に大きな工数がかかるため、顧客を絞って費用対効果の高い施策を講じる必要があるからです。
しかし、ここでもクライアントが立ち止まることが多いのです。その理由は、次の2つの理由で優先順位が決められないからです。
- 優先順位をつけろと言われると、そもそも何が大事から考え始める
- できることから考えるので、優先順位の軸が決められない
ここでコンサルタントが心得ておくべきことは、コンサルティングを頼んでくるようなクライアント企業には、無駄が非常に多いということです。ですから、80:20の法則を使って、80%の無駄を捨て20%の効果が高いものに集中すれば良いことをクライアントに説くのです。
このためには、ごく常識的な図Bを用いれば良いでしょう。
仮に、既存顧客が全て、高売上・高利益なら理想的な状態にいるので、ソリューション営業に転換する必要はないはずです。ですから、必ず図のような分布になっているはずです。
この作業の障害は、図を描くことそのものに対する抵抗です。顧客ごとの売上はともかく、利益は算出できないというものです。
この時にも、最初の目的は明らかな無駄を捨てることであることを説くべきです。無駄を捨てるためには、営業やサービスがそれぞれの顧客に関わっている時間を大雑把に見積もることで充分なはずです。
このような計算をもとに、どのあたりの顧客ん集中すべきかの検討がついた上で、必要なら本気になって利益の計算をすれば良いのです。
顧客側の購買戦略に目を向けさせる
最後は、具体的にどのようなソリューションを提供していくべきかの戦略を練ることです。
ここでもコンサルタントが心得ておくべきことがあります。
マーケティングや営業に関するプロジェクトの鉄則は、自分ではなく相手の顧客視点で物事を見ることです。こう言われると当たり前のように思われるかもしれませんが、驚くほどこれができていないのです。
これができているようなクライアント企業なら、コンサルティングを頼んでこないと心得るべきです。
ですから、相手の顧客がクライアント(自分)をどう判断するかの視点を導入する必要があります。そのために考えるべきことは「対称」です。
クライアントは、顧客にどう価値を認めてもらって生き残ろうかと考えています。それと対称に、顧客はどうやって価値のあるサプライヤーだけに絞って付き合おうかと考えているはずです。
このことに思い当たれば、知り合いの購買改革専門のコンサルタントの相談を持ちかけることができます。そうすれば、その専門家は顧客側の購買戦略として、図Cのようなものがあることを教えてくれるでしょう。
実は、専門家が教えてくれる図は、矢印がCの通りではなく下側に向かっています。すなわち、顧客は調達リスクを下げようと、サプライヤーであるクライアントを重要サプライヤーやニッチサプライヤーのいちから下側の競合化対象や雑に下げようとして来るのです。
その事実が認識できれば、クライアント企業は顧客の調達価値を上げる(顧客の仕事に重要な価値が何かを考えそれを提供する)あるいは調達リスクを上げる(顧客がクライアントに依存せざるを得ない状況を作り出す)こと(図Cの矢印の向き)に目を向けざるを得なくなります。
その結果、本気になってそのような条件を満たすソリューションを探すことに集中させられるのです。
何を学んだか?
- 対象領域(ここでは営業)に不案内でも、クライアントの議論をガイドするメタな方法がある
- それは、クライアントが問題を解けずにいる理由にはパターンがあることを知っておき、そのパターンにあった問題解決フレームワークを探すことである
- ソリューション営業での顧客関係構築に有効なパターンは、次の3つである
- クライアントは、現場からの改善を考えがちでソリューション営業のあるべき姿をなかなか描けない。これを解決するために、現状とは真逆に振った極端な姿から逆算した地図を描き、その中からあるべき姿を選択させると良い。地図を描くための軸は、顧客との関係の深さと関わるビジネス範囲の広さの2つである
- ソリューション営業は工数がかかるので、対象顧客を絞る必要があるが、これができるクライアントが少ない。その理由は、大事なものを選ぼうとするからである。それとは逆方向に80:20の法則を使い無駄を捨てさせれば、顧客の選択が進む
- 自分都合で考えると、顧客に提供すべきソリューションの設計ができない。これから脱却させるために顧客視点で考えさせ、自社の営業の対称にあるのは顧客の購買であることを認識させる。顧客の購買戦略から考えれば、購買リスクを上げさせることがソリューションの根幹であることがわかる