アントレプレナーシップ・マネジメント(顧客開発とピボット) 


Last Updated on 2021年10月25日 by 時代遅れコンサルタント

前々回は、プロフェッショナル・アドバイスいう信用財を購入するクライアントを、時間をかけて獲得するレインメーカー・システムについて解説しました。今日は。そのレインメーカー・システムそのものを構築し、維持・保守していくためのマネジメント手法について説明します。すなわち、次のような疑問の答えについて考えてみます。

  • そもそも、独立して新規に事業を始めようとする時点では、レインメーカー・システムは何も存在しないスクラッチの状態である。その状態で何からどの順で取りかかれば良いのか?
  • 実際に集客セミナーをやってみたが、なかなか人が集まらない。あるいは、クライアントと契約が獲得できたが、うまくアドバイスできない。時間を変えてもアドバイスが上達しないし、自分の得意分野でないような気がするが、どうすれば良いのか?
  • それなりにクライアントは獲得できるが、さほど増えるわけでもない。このまま集客を続けていても、先細りになりそうで不安だが、どうすれば良いのか?(キャズム)

これらの疑問を解決するためには、有名な「リーン・スタートアップ」を書いたエリック・リースが、ベンチャーを立ち上げこの本を書く契機になった時の師匠であるスティーブン・ブランクの考え方が参考になります。彼は「スタートアップ・マニュアル」という本の中で、次のように述べています。

  • スタートアップというものは、最初はアントレプレナーの思い込みに賭して始める取り組みである
  • アントレプレナーは、仮説や思い込みをできるだけ早く事実に転換しなければならない。仮説が正しいか顧客に尋ね、間違っていれば迅速に変えることが必要なのである
  • 製品・サービスが顧客に受け入れられるかどうかはわからない
  • スタートアップは仮説を一つずつ検証するという「探索」モードを「計画的に実行」することにこだわるべきである
  • 間違いから学べるかどうかが成功するスタートアップの分かれ目である
  • ピボット(後述)は失敗ではない

そして、この考え方に基づいて、スタートアップのビジネス開発は、次の4ステップで行うべきだとしています。(各ステップは仮説検証なので、仮説が検証できなければ仮説を立て直して同じステップを繰り返す、あるいは前のステップに戻ります。とくに、顧客実証から顧客発見に戻る作業をピボットと呼んで、重視しています。)

  1. 探索
    1. 顧客発見: 創業者のビジョンに基づきビジネスモデル仮説を構築する。次に顧客の反応から仮説を検証しながら、最初は思い込みに過ぎなかった仮説を事実の裏付けのあるものに磨き上げていく
    2. 顧客実証: 顧客発見で検証されたビジネスモデルが、再現性がありスケーラブルなものか確認する。確認できなければ顧客発見ステップに戻る(ピボット)
  2. 実行
    1. 顧客開拓: ビジネスモデルの実行を開始する。需要を開拓し、顧客を販売チャネルへと誘導して事業を拡大させる
    2. 組織構築: ビジネスモデルの実行を本格化させるためにスタートアップを組織へ移行する

ここで、プロフェッショナル・アドバイザーの場合は、前々回述べたレイメーカー・システムがビジネスモデルそのものとなります。そして、レインメーカー・システムは次のような仮説を体現したものとなっているはずです。

  1. ターゲティング: 顧客セグメントAは、困り事Bを持っている。そして、その解決に自分の強みCが役立つ。
  2. ポジショニング: 顧客セグメントAは、立ち位置Dのアドバイザーを求めている
  3. リード・ジェネレーション(インサイト・マーケティング): 顧客Aセグメントが問題を解決できていないのは、間違った世界観Eに囚われているからだ。それを新しい世界観Fに変えれば、問題は解決できる。そしてその解決策はGだ。さらに、顧客セグメントAの相当部分の人が、解決策Gをお金を払って買う。
  4. 契約実行: 詳細はクライアントの実情に合わせてGをカスタマイズすることが必須なので、契約が取れてから考える

ですから、プロフェッショナルアドバイザーとして独立しようとするのなら、顧客発見ステップで上記の仮説を各人が選択したドメインに合わせ具体化し、顧客発見フェーズと顧客実証フェーズで、次のように仮説検証をしていけば良いことになります。

  1. 顧客発見ステップ
    1. Aに対し、Dの立場で、強みCについて発信し、興味を持ってもらえるかどうか確認する。ブログやFacebookの投稿などで、「いいね」をもらえるか確かめる。あるいは、個別にインタビューする。反応が良ければ、次に進む。
    2. 上記で確認した顧客セグメントに対し、インサイト(EをFに変えれば問題は解ける)を発信し、反応を確かめる
    3. 反応が確認できたら、セミナー集客のチラシを巻き、集客できることを確かめる
  2. 顧客実証ステップ
    1. セミナーへの応募があったら、解決策Gについての集客セミナーを実施し、希望者に個別コンサルティングを行い、相当部分の人がお金を払ってGを買うことを確認する。
    2. 個別コンサルティングで獲得できたクライアントの状況に合わせて、サービスGをカスタマイズしながら本当の解決策を作って実行し、顧客を満足させる
    3. 以上を続けても、あまり顧客が集まらなければピボットして、対象顧客セグメントから考え直す

個人事業レベルであれば、上記の繰り返しだけでビジネスは構築でき、顧客開拓ステップ以降の必要性はあまり高くないでしょう。

以上で、独立して市場で集客するときの注意点について、だいたい解説したので、次回は全体のまとめをいたします。